中学生になりました。
まさかとは思いますが、これて実話じゃ・・・
なんて思った人!そのまさか・・・・。
それからと言うもの、僕と誠也君はさらに親しくなっていったと思います。
それからの僕は、誠也君に心を開いていました。
だから、思ったのかもしれません。
こいつだったら、僕の事を分かってくれるかもしれない。僕が、女の子の腰のお肉に興味があるって事を、誠也君だったら分かってくれるだろうと思ったのです。
だから、僕は、誠也君にその事を告白しようと思いました。
あれは、一年生の秋だったと思います。学校の授業が終わって、僕は誠也君と教室を出ました。いつもみたいに、ゲームの話やラオもしかった漫画の話で盛り上がりながら、そのうちに体育館の前にさしかかったので、僕はそこのコンクリートの階段に座り込みました。誠也君もつられて隣に座ります。
僕ら二人以外は、辺りに誰もいませんでした。二人の横顔を、オレンジ色の夕日が照らします。
「誠也、俺、誠也に言いたい事があるんだ」
「おぅ。どうしたの?そんなかしこまっちゃって。何?」
「今まで隠していた事なんだけど。誠也になら言ってもいいかなって思ってさ。お前とは隠し事したくなくてね。お前も俺に隠し事ないだろう」
「お、おぅ。そうだ、俺もお前に聞いて置きたい事があるんだ」
「え?何、何?何聞きたいの?」
「まずはお前だろう。俺に何隠してたの?言ってみなよ」
僕は唾を飲みました。何せ半年以上隠してきたち自負がありますから、いざ言うとなって、緊張してきたのです。しかし、僕は勇気を持って口を開きました。
「笑わないでくれよ」
僕は少し勿体つけましたが、一呼吸すると口を開きました。
「今まで皆にも言わなくて、隠してきたんだけどさ。俺、実は・・・」
もうひと息付いて、そして、思い切り口を開きました。
「俺!女の子のお腹の肉が好きなんだ!腰に付いてるお肉が好きなんだ!」
かなり力んでそう言う僕を、誠也君は、この馬鹿はいったい何を言っているんだ?と、まじまじと見ていました。その顔はけして笑ってはいませんでしたが、困惑しているのは確かだった様です。今思えば・・・。
ただ、その時の僕といえば、やっと本音が言えた反動か、次々と言葉が出てきてしまい、誠也君の事などそっちのけでした。
「昔から女の子の腰のお肉が好きなんだ。いや、もちろん触ったりはしてないよ。いや、正確には小学六年になるまでは触ってた。でも、中学になってからは触った事なんて無いんだ。本当だよ。でも、やっぱり触りたい。お前も触りたいだろ?」
「お、う、うん」
誠也君は、ぎこちなく頷く様な素振りを見せました。
「そうだろう。触りたいよなぁ。でも、それはいけないんだ。嫌われちゃうから。俺にも分かってる。本当に、中学生はいい腰肉持ってるよ。小学生とは、ぜっんぜん違うんだよ。先輩達の腰は、あれだよな、なんか同級生とは違うもんな」
「一ノ瀬先輩とか?だろ?」
「一ノ瀬先輩?お、おぅ、そうだな。まあ、うん、そう言う事だよ。うん、なんていうか」
「そうだよな。お前は、一ノ瀬先輩が好きなんだもんな。俺、お前が北村の事好きかと思ってたよ。お前が、そういうのが好きなら、北村は好みじゃないもんな。そうだよな?」
「お、北村愛子?違う違う!何言ってるんだよ。そんなはずないじゃん」
「そうだよな。じゃあ、俺からも言うぞ。あのな、俺・・・」
何時になく誠也君が真剣な顔をしました。僕は一つ息を飲んで、彼の次の言葉を待ちました。
「俺は北村の事が好きなんだ」
僕は誠也君の目を見ました。その目はもうそれは真剣です。と言うか、血走っていました。僕は何も言えずに頷きました。
「彼女の事、初めて見た時から気になってたんだ。だけど、なんか北村ってお前とよく話してるし、その、お前も楽しそうに話してるからさ。好きなのかもって思って。でも、違うんだよな」
いつもは口数の少ない誠也君が、やけに饒舌でした。
「違うよ。あいつとはよくクラスが同じになるだけで、そんなんじゃないんだって。ぜんぜん違う。だけど、誠也。お前が、北村を?!お前、結構格好いいんだし、サッカーだってうまいんだから、もう少し、何て言うかな、可愛い子の方がいいんじゃない?ウチの中学にだって、もっと可愛い子いるだろう?」
そんな僕の言葉に、誠也君は力強く首を振ります。
「いや、北村より可愛い子なんていないよ。自分でもびっくり何だけど、こんな気持ち初めてなんだよ。彼女いつも明るいし、その、スタイルいいし、何より性格が俺にあってると思うんだ。それに、あの子猫みたいな目、俺、凄く好きなんだよ」
「おぉ、そうか、そうだな」
と、相槌をしつつも、それまで恋をした事無かった僕は、誠也君の気持ちが分かるはずもありません。まあ、僕が彼のその気持ち分かるまで、もう少し時間がかかります。
でも、初恋に舞い上がっている誠也君は、すがるように僕に応援してくれるように頼んできましたので、僕も出来る限り協力すると約束しました。どうやらそれで、誠也君の心も少しすっきりしたようですし、僕も気持ちが楽になった事は確かでした。何しろ、お互い、初めて自分の隠し事を共有できる友達が出来たのですから。少なくとも僕には、こんなに希望が広がっていた時期は、無かったかも知れません。
でも、その関係も長くは続きませんでした。
誠也君は、僕の前からいなくなってしまったからです。
冬休みが過ぎたあたりに、両親の都合とやらで、遠くに引っ越してしまったからです。何か、僕にはあまりに突然で、手紙とか書く知恵もなくて、いなくなるのが寂しすぎたのでしょう。と言うか、なぜか裏切られたような気持ちになってしまって、誠也君とは特別なお別れをする事が出来ませんでした。
それ以来、彼とは連絡を取っていません。
二年生になるとクラス替えになって、新しいクラスメイト達が出来たので、友達関係もまた変わってしまい、誠也君が好きな北村愛子も隣のクラスになって少し離れました。誠也君が北村に、告白したとかしないとか、少し噂に聞きましたが、北村も僕に何かを言って来る事も無く、僕も聞かなかったので、真相はどうなのか僕にも分からないままでした。
そんな僕も二年生になると後輩も出来て、勉強も部活も忙しくなってくるので、日々を追うごとに誠也君の面影も薄くなっていきました。でも、誠也君ほど心を許した友達も現れることはありませんでした。確かに、陽介とか、長く付き合っている友達もいましたが、いかんせん口が軽いので秘密なんかとても言える仲ではありませんでした。
だから、僕がお腹のお肉が好きでたまらないと言う事は、また自分の中にしまわれる事となりました。
ただ、二年生になって色々学校にも慣れてくると、友達がエロ雑誌やら、ビデオやらを色々持ってきたり、見にいったりして女の情報が飛躍的に増えるようになり、世の中には自分が思ってるより色々な種類の腰肉が存在する事を知りました。
視覚的になのですが、僕の中にも、女性の腰肉にも色々な形がある事を知る事によって、どんな腰肉が自分にとっていいものなのかと言う事が、大まかながら出来てきて来る様になりました。ただ、少し不満だったのですが、友達が持ってくる写真の中の美女達の腰は、細く無駄のないものが多く、友達もそれがいいと言う事を言っていました。
ほぼ、圧倒的と言っていいでしょう。
僕も頑なまでに自分を出す事をしなかったので、友達の前では皆の好きそうな人をいいと言い、一方で、自分の家では比較的いい腰肉を持っている女の人が載っている雑誌を持っていたりしました。ただ、当時は、自分好みのジャンルの雑誌が無かった事にかなりの不満があった事を思い出します。
世間と僕のグラマラスの基準の溝はまだかなりの隔たりがあったのです。
まあ、田舎ですので少ない情報量しかありませんですし、インターネットも普及していない時代で、何しろ僕も中学生だった事もありますから、それは仕方ない事ではありました。
今とは少し、事情が違うのです。
そんな感じで、中学生の僕は徐々に女性に関して知識を深めていき、むっつりなりにませませも深めていき、男の情けない部分も覚えていく事になりました。そして、そうなってくるとそろそろ実践に移したくなるのが年頃の男の子と申しまして、それは僕も例外ではありませんでした。
まあ、それまでには準備段階が少しあるのですが・・・。
中学生も半ばになると、そろそろ同級生でも恋の花を咲かせる奴らが廻りに出来て来て、
あの陽ちゃんや、禄ちゃんも一年生と付き合ったりしてしまい、なにやら恋のムードが僕の周りを包み込み、思春期臭の取り巻く僕の中学校を席巻していました。
しかし、僕はどうしてかなかなかそのムードに乗る事が出来なくて、いつまでたってもそんなカップル達を横目で見ていることしか出来ませんでした。
勿論、僕だって他の女の子達もよく見ていました。
まあ、中学生ともなると、女の子も大人になっていくので、見所は一杯です。それに加えて、友達から性の情報が入ってくるので、僕の頭はもう想像で一杯になっていきました。
勿論、僕は女の人には触る事はありませんし、女の子ともあまり話す事はありませんでした。何しろ、それで酷い目に遭っていますから。
しかし、そんな僕にも恋の嵐が吹き荒れたのです。
それは今でも忘れた事はありませんが、初めて女の子と付き合う事になったのです。
僕に初めての恋人が出来たのは、三年生の学園祭の時でした。
夏休みも終わって、三年生は受験が近づいてきてソワソワし始める頃で、僕もサッカー部の総体をまあまあの成績で終えて、受験に備えている頃でした。しかし、不安を抱える三年生とは裏腹に、学校のムードは騒がしく、一、二年生を中心には学園祭に向けて大忙しでした。
僕も去年とは心持が違うものの、お祭り好きの血が騒いでしまって実行委員なんかを引き受けてしまったもんだから、忙しい日々を送っていました。
何故か北村愛子と実行委員をする事になってしまって(三年生の時にまた一緒のクラスになっていました)、昔みたいに悪口言われるかと構えていたのですが、彼女は一足先に大人になっていた様で、もう僕に色々言って来る事は無くなっていました。
僕もどうせ女の子と組むなら北村の方が話せるので、まあ、僕らは実行委員として仲良く頑張ったのです。何しろ最後と言う事もあり、北村はかなり気合を入れて学園祭に取り組んでいました。僕もそれに引きずられるような形で仕事に取り組む事になって、まあ、今までに無く色々な人と関わるようになっていました。普段あまり喋った事無い女の子とも一緒に作業したりとか、後輩の面倒見たりとかして、自分でもよく分からない祭り熱に浮かされて、その時の僕はかなりの意気込みを持って取り組んでいたのです。
あろう事か、この僕が音頭を取ったりしながら、皆で学園祭に向けて声を上げて頑張っていたんですから。
そんな事もあってか、北村ともそれまで喋った事無いような話もするようになり、なんか不思議な一体感がありました。
学園祭が始まるまでに、どうしてもすぐ仕上げなければならないモニュメントがあったりして、夜に差し掛かるまで教室で作業していた時とかに、ペンキとか塗りながら喋ったりしたのを思い出します。あの時は、放課後も結構日が沈みかけていた位に、先生や他の学園際の準備に終われる生徒達に混じりながら、家庭科準備室の前の廊下で作業していたと思います。僕が北村と一緒になって、もくもくと作業を進めていると、彼女はいつもどおり不意に話し出したのです。
「武って、高校どこ受けるの?」
脚立に上りながら、僕の上の所をペンキで塗っていた北村が、その細い腕に似つかない大きな刷毛を操りながら、トライアングルみたいな声を掛けてきました。その時僕は、体育祭に使う登場口の柱の真ん中辺をせっせとペンキで埋めていたのですが、手を止めてそれに答えました。
「うーん。東高かなぁ。近いし」
北村は手を止めて、僕の方を見てきました。
「へー。結構進学校じゃん。大丈夫なの?」
「まあ、先生は何とかなるって言ってたけど。今から、しっかり勉強するよ」
「ふ―ん。まあ、武って、頭おかしいけど、成績は悪くないもんね」
「それは褒めてるのか、貶してるのか、どっちなんだ?まあいいけど。お前はどこに行くの?北村、何気に頭いいもんなぁ。私立とか行くの?」
「うーん。まあ、大体は決めてるよ。でも、今はそれより、最後の学園祭をしっかりしないとね。最後なんだから。格好良くしないと」
「何だよ、高校の話すんじゃなかったのか?まあ、いいけどさ。それにしたって、お前、最後、最後って、最後言いすぎだよ」
「だって、本当に、最後じゃん。中学生活だって、後残り少しなんだから」
北村はそう言うなり脚立から降りて、下にある赤色のペンキを足そうとしていました。何気なく北村の顔を見てみると、ほっぺに赤い筋が付いていて、僕はそれが何かとても気になったので、何も言わないで拭いて上げました。
「な!何するのよ!」
「いや、汚れていたから、拭いてあげようと思って。あんま落ちないな。伸びちゃった。悪い、悪い」
「馬鹿!そんな汚いので拭いて、落ちる訳無いじゃん」
北村は怒ったように僕から顔を背けると、いそいそと脚立に上って、ペンキを塗り始めました。
「まだ顔が赤いぞ。洗って来いよ」
「い、いいのよ。後で洗うから。それより、早く仕上げないと終わんないよ。急ぎなさいよ」
そう言うと、北村は急に無言になって、ペンキを塗りたくり始めました。なので、何だよと思いながら、僕も少しふて腐りながら言われるままに登場口用の四角い柱を赤くしていきました。
すると、しばらくして、また、北村が口を開きました。
「武って、今、彼女いないよね?」
「え?何?」
突然の質問に不意を突かれて、僕は思わず北村を見上げてしまいました。すると、北村はやっぱりこっちは見ないのですが、言葉荒げに同じ質問をしてきました。
「だから、彼女いないよね?」
「俺?いないよ?お前は?」
「私もいないよ」
「ふーん。そうか」
「そう」
「そうだ!そう言えば、誠也覚えてるだろ?二年になる前に引っ越しちゃった。一年の時クラス一緒だったじゃん?おっ、話聞いてる?」
「え?聞いてる、聞いてる。誠也君でしょ、覚えてるよ」
「そう言えば、お前誠也から告白されたとか噂されてたな?あれ、本当なの?」
僕がそう聞くと、北村はすぐには答えませんでした。すぐに、僕が答えを促すように北村の顔をうかがうと、仕方ないかの様に口を開きました。
「うん。本当よ」
僕はびっくりして、北村の顔を見上げました。
「マジ?じゃあ、お前ら付き合ってるの?」
「ううん。岡田君とは付き合えないって断ったの」
「マジで?あんな格好良くて、真面目で、サッカーうまいやつ、なかなかいないぜ!どうしてだよ?」
「だって、岡田君、引っ越しちゃうって言ってたし。それに・・・」
北村がそう言いかけると、向こうから僕を呼ぶ声がしました。
女の子の声です。
「小田切センパーイ。もう、終わりましたぁ?」
大きな声で僕に呼びかけたのは、二年生で吹奏楽部の夏目優子ちゃんでした。僕らと同じく学園祭の実行委員で、一緒に残って作業しているメンバーの一人でした。彼女は僕が実行委員になってから親しくなった女の子で、何かと僕に話しかけてきてくれて、なんて言うか妹分みたいになっていました。