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ラブハンド  作者: hisasi
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そんなこともあるんだ世の中

 そんなこともあるんです。信じましょう!


 そうまずは信じませんと、始まりませんぜ!

早速僕はブログを作成しました。僕がブログに書いたことは、もちろん「ラブ・ハンド」の事です。まずはさわりと紹介だけを載せました。乗せ初めの頃はまったくといっていいほど反応がなくて、しばらく見てくれる人はいませんでした。

あのコマーシャルのようにはいかないようでしたが、これ位の事、今まで僕がされてきた扱いに比べたらなんて事ありませんでしたので、僕はなんとも感じていませんでした。

確かに、これまで幾度となく思い、考え、実行してきたことはまったくうまくいきませんでした。しかし、自分でやってみようと思いついた事には素直に従って、やってきたつもりでしたし、例えうまくいかなくても信じるのは自分の気持ちしかありません。

今回も、今出来る事をして行く他はない、それしか僕の頭の中にはありませんでした。

要するに、人が見てその人達を引き付ける様な事を、自分で作り上げ、表していくしかないのです。

そうして、自分を表現して、理解してもらう。

きっと理解してくれる人がいると、信じて行う他は無いのです。

そんな僕に、ブログは絶好の機会を与えてくれるものでした。

要するに、僕の世界観を作れ、それを世に発表する場が与えられたと言う事で、そうなると俄然、僕の力の込めようも強くなってゆきました。

デジカメを使って町で歩いている女の子の腰辺りをとってランキングしたり、その写真一つ一つにコメントをつけました。そして、外国のサイトにアクセスして、いい「ラブ・ハンド」の写真があればそれを僕のブログに乗せて、世界地図を作成していきました。

まあ、主に欧米と南米が多いのですが、それぞれの腰を紹介したのです。

そして、近年激しさを増していく女性のスリム化をどうにかしたいというような文章を書いて、それに対する意見を求める欄も作りました。

そこにはかなりデフォルメはされていましたが、紛れもない本物のモデルたちの腰を羅列して、加えて、コルセットで絞り上げられた十九世紀の貴婦人の写真も貼っておきました。

これは、僕から見たらまさに悪魔の所業で、それをその時代の女性達が求めていたのが信じられないというようなコメントも載せておきました。そして、「ラブ・ハンド」の投稿欄も作って、いい「ラブ・ハンド」があったら送ってもらい、月間ランキングを作るという事も忘れずに乗せておきました。

ただ、僕もいろいろ考えたのですが、この中に、僕が「ラブ・ハンド」を広めたい事、音楽を使ってムーブメントを起こすことは一切書かないようにしました。

まずは、知ってもらう事から始めようと思ったのです。

それに、そんな事を始めに書いてしまうと、怪しく思う人も要るだろうし、本当に好きな人がいても腰が引ける場合もありえます。今までの僕の行動から見て、あまりに熱く、急な働きかけをしてしまって失敗した事がよく、いや全てだったのですから。

なので、ここは落ち着いて、焦らず、まずは知ってもらおうと思ったのです。

急がば回れの精神です。

そうこうしてブログを作っていると、まあぜんぜんアクセスはされないのですが、作ってる方は俄然盛り上がってきていて、どうしたら面白いのを作れるかと日夜考えるようになり、いいアイデアが浮かべば、早速それをブログに反映するようになりました。

そんな事をしながらも、音楽方面の事も考えていたのですが、ブログ作りに嵌って行くうちに、それも頭の隅に追いやられていき、四六時中考えているのはブログの事だけになりました。

そして、しばらくたってからのことでした。

僕がバイトから帰ってきて、いつもどうりパソコンをつけ、自分のブログを開いてみると、なんと誰かが僕のブログにアクセスしたらしく、観覧者欄に『1』が刻まれていました。僕は二度画面を見ましたが間違いなくて、一人部屋で叫び声を上げました。

そして落ち着いて何か書き込んでないか調べましたが、その人は開いてみて行っただけのようで何も痕跡はないようでした。でも、少しもがっかりなんてしなくて、むしろ喜びが溢れてきました。

今まで色んな事をしてきて、これほど前に進んだことはないのです。

見ず知らずの人が、僕の考えを見てくれたのです。

僕にとっては大きな一歩でした。

僕は他にも誰か見てくれないかと祈りながら、パソコンお前に座っていましたが、そんなすぐには表れるはずもなく数字は変わりませんでした。

気を取り直して、この喜びをブログの作者コメント欄に書き込むと、僕はベットにもぐりこみました。

そして、翌日またバイトから帰ってきて自分のブログを開いてみると、アクセス件数がまた増えていました。そしてなんと観覧者からのコメントが載っていたのです。


「俺様を覚えているか?『女論塾』の脂肪男爵だ!こんなブログを書いているのはいつかの貴様に違いない!みんなに言いふらしてやる!」


どうやらあのサイトの連中に見つかってしまったようです。

僕は記念すべき最初のコメントがこんな感じなので、さすがに溜息をついてしまいました。

しかし、考えようによっては素直な意見をくれるかもしれません。

それに、広めてくれるなら有難い事です。

溜息をつくより、喜ばなくては。

僕はそのコメントを見て、変に勇気ずけられてしまったようでした。

どんな内容にしろ、第一歩は踏み出せたのですから、いい事だ、そんな事を思って、僕は意気揚々と、今日バイト帰りに見つけた貴重な「ラブ・ハンド」の写真をまたブログに載せては、作者コメント欄に新たな感想を書きました。

それから、またアクセス数が増えていき、それに伴って「女性の評価論塾」の客人のコメントも増えていきました。

「脂肪男爵」は有言実行の人らしく、確かにあのサイトの住人からのコメントが、真にあそこの住人らしい内容で書かれていて、僕を非難するか、馬鹿にするか、あるいはブログの出来の未熟さを指摘してきました。

彼らのしつこさにはある意味すごいと思いながら、今度はすべてのコメントに目を通しました。どれも内容は似たり寄ったりなのですが、プログの未熟さの指摘は正しい意見だと思ったので、それはすぐに取り入れて直していきました。

この世界では彼らのほうが先輩なのですから、意見を聞くに越したことはありませんし、正しい意見に素直に従わない理由はありません。

前なら腹を立てたかもしれないことでも、その言葉の奥の気持ちを読み取ってみればまた違うことも思えてくるもので、ちょっとした事に熱くならないでいる自分がいました。 

しかし、僕の根底に流れるマグマは隠しきれようもありません。

冷静に熱くなった僕は、少し挑発じみた事を彼らに提案してみました。

要するに、僕にそこまで言ってくるのなら、

君達の思いはどれ位のものなのか見せてみろ!と。

それをこの場にもってこいよ!と。写真を撮って見せ付けてみろよ!と。

俺が評価してやろうじゃないのか!と。

僕は上から目線で、ブログに新たなる投稿欄を作り、客人達を刺激してみる事にしました。まあ、前回と違って、土俵はこちら側、いわばホームゲームでしたので強気になれたからかもしれません。

すると、それが相手の頭にきたのか、フェティズムの琴線に触れたのか、日ごろの見せたがりの性格が表に表れたのかどうかは知りませんが、その投稿欄を作った翌日には実に五十枚もの登校写真が送られてきました。

まあ、かなりの重複を含んではいましたし、明らかに意味を取り違えているもの、それに行き過ぎた女性の姿などもありましたが、大半の人が僕の趣向を理解してくれたらしくて、自分のお気に入りのお腹の写真を送ってきてくれていました。

こうなると、僕としても気持ちを返さ無い訳には行きません。

気に入った二十枚の写真を取り上げて、と言うか僕の趣旨を理解してくれていたものがそれしかなかったのですが、全部の「ラブ・ハンド」にコメントと評価、そして僕のブログだけの称号をつけて、ランキングにしてブログに乗せることにしました。

この作業に、睡眠が気にならないほど、バイトの時間を惜しむほどに時間を費やして、ようやく完成したものを自分で見てみると、なんとも言いがたい達成感がありました。

そして、僕は感謝のコメントを作者コメント欄に書きました。


「今こうしてランキングを作ってみて、改めて自分が「ラブ・ハンド」を好きだと言う事に気付きました。僕の馬鹿げた問いかけに答えてくれた皆さん。皆さんの投稿無しにこれはなしえませんでした。それに、大方は僕の事を快くは思っていないと思うのですが、その人達にもお礼が言いたいです。皆さんの力が、このランキングを作り上げてくれました。ランキングには僕の好みが存分に入ってはいるのですが、一つ、ひとつ大切に吟味してみたつもりです。カイザーになった人も、そうでない人も楽しく見てもらえたら光栄です」


カイザーというのは、僕が一番気に入った「ラブ・ハンド」の投稿を送ってくれた、「セルロースハム」さんに送った称号です。

要はグランプリです。

僕は書き終えて、ベットに寄りかかり、身を委ねました。

達成感からくる脱力感に襲われて、もう自分の出来る事はやれたなぁ、と思うくらいの気持ちになっていました。ただ、この後、またどんな反撃を食らうかも分からなくて不安な気持ちもあって、もしかしたら、また良くない反応が返ってくるかもしれないと悪い予感が頭の中を駆け巡りもしましたが、それより何より張り詰めた糸が切れてしまったようになってしまって、それまでの疲労もあってか、僕はベットに寄りかかりながら寝付いてしまいました。

夢の中で、今まで僕に関わってきた女の子がタンクトップにホットパンツ姿で僕の周りを囲んできます。

そして、お腹のお肉をつまみながら僕にアピールしてくるのです。

小学校の同級生やら先生、中学と高校の時の彼女、そして初めての女性、皆が僕めがけて飛び込んできます。

そして、何人もの女の子が僕に飛び込んで来た時、急に北村の姿が現れました。

「あぁぁ。北村!」

僕はそう叫びながら、目を覚ましました。

時計を見ると、午前五時になっていて、暗い部屋の中でパソコンの画面の光だけが部屋を照らしています。

ブログを更新したまま眠ってしまったんだなぁ、と寝ぼけたように確認しながら、僕は一つくしゃみをしました。

そして、今見た夢をおぼろげに思い出してみましたが、最後の北村が僕をにらんで仁王立ちしているところ以外、明確に思い出せませんでした。

思えば、彼女とは最近はまったく連絡を取っていません。

北村は何をしているかなぁ?と思いながら、自分のブログに目をやると、画面がなにやら点滅しています。

見てみると、予想外の出来事が起きていました。

誰かが僕のブログに投稿してくると、画面上の小さな鳩が羽を振りながら僕に知らせてくれるのですが、その鳩が点滅していたので、僕は投稿欄をクリックしました。

そしたらなんと、あのランキングに対する返事が返ってきていたのです。

時計を見てみると、ブログを更新してか五時間くらいしかたっていないのに、もう反応が返ってきていました。

僕は驚いて返事の内容を見ようとしたら、次々に投稿を知らせる鳩が騒ぎ出し、あっという間に、十通の返事が返ってきました。

僕はやや興奮しながら、はじめの返事を呼んでみました。


「脂肪男爵です。なんか俺の投稿を載せてくれて(お前いいやつだな。)ありがとう。あんなに攻撃した俺の投稿なんて載せてくれないと思ったけど(実は期待してたけど)お前はちゃんと乗せてくれた。俺は(なんか恥ずかしいけど)恥ずかしいけどうれしかった(興奮した)また見つけたら送ってやるよ!(だから、もう一回やってくれ、第二回目、やってくれ)」


僕はこのよく分からない予想外の「脂肪男爵」からの返事を見ながら、体が熱くなり、神経網に電流が走るような興奮を覚えました。

「ラブ・ハンド」批判の筆頭のようなこの人が、まさかこんなことを言ってくるとは思わなかったのです。それに加えて、二回目もやれだなんて、何が起こったのでしょうか? 


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