第一章 第五幕 アラスタ王城
少女にハーツと呼ばれた白い子竜が姿を現し、こちらを見据えている。
「カリン、どうやら彼らはドラゴンテイマーの様ですが」
「そうみたいだね、ハーツ」
俺はカリンと呼ばれた少女に声を掛けた。
「カリンって言うんだ?宜しく。俺はリュージ、こっちの紅いドラゴンはミルって言うんだ」
「ありがとう。でも何で私を助けてくれたの?」
「えっと…ほら、女の子が危険な目にあっているのに見捨てられないと言うか…」
「え?でも最初王様に呼ばれているから見捨てようとーーーむぐっ!?」
俺はすかさずミルの口を抑えて抗議した。
「いや、そんな事は言ってないよ決して!!」
しかし、既に遅かったらしい。
カリンはミルの言葉に反応した。
「今、王様に呼ばれてって…」
「あー、えっとまぁ、呼ばれては居たんだけど見捨てようなんて事は決して無いよ。うん神に誓って!!」
「いや、そういう事じゃなくって…貴方達も呼ばれていたの?」
カリンの意外な発言にキョトンとして目を丸くしてしまった。
「えっと、それってどう言う意味?もしかして君達も…」
「うん、実は私達も王様に呼ばれていたんだ。これから城へ向かおうとしていた所だったの」
「それってもしかしてドラゴンテイマーって事で?」
「そうみたい」
俺とミルは顔を見合わせた。
「・・・・・」
それに対してハーツは何やら考え込んでいる様に小さな手を下あごに付ける仕草をしていた。
「どうしたの?ハーツ」
「何かきな臭い感じがしまして…」
「きな臭い?」
「いえ、何でもないです。どちらにしろ現状確かめようがありませんから。とにかく、リュージとミルもこれからアラスタ王城へ向かうのですね?ならば共に向かいましょう。数は多い方に越したことはありませんから」
「またそうやって一人で考え込む!!」
「この場合はー匹じゃないかな?」
なんとなくツッコんでみた。
「確かに!!」
カリンもハッと気付いた様に両手を口に抑えて驚愕していた。
「やれやれ…」
それを見ていたミルは肩を落としているようだ。
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「これがアラスタ王城か…」
城の正門までやって来た俺達は天まで届くのでは無いかと思ってしまう程荘厳で高い城を見上げていた。
所々に装飾が施され、田の形を縦長にした窓が幾つも張ってある。
そして、装飾の中に幾つかドラゴンを模した装飾が施されている物もあったのだ。
「ドラゴンの装飾ですか…」
ハーツが独り言を呟く。
「古来より建造物の装飾はその国の文化を伝えるとされていますからね。ここに施されているドラゴンも何かしらの意味があるのかも知れません」
「って事は俺達が呼ばれたのもそれと何か関わりがあるって事なのかな?」
「そうかも知れませんが問題は…」
そしてまたハーツは考え込んでしまった。
「もう、だから一匹で考え込まないで話してみなさいって言ってるでしょっ!」
「そうですね、では聞きますが」
ハーツはそう言うと、一拍置いてから言った。
「何故、王様とやらは私達がドラゴンテイマーだと知っていたのでしょう?」
ハーツの言葉に一瞬思考が停止した。
そして気付いたのだ。
そう、俺達は王様に『ドラゴンテイマー』として呼ばれたのだ。
しかし、一体どこでどうやって俺達がドラゴンテイマーだと知り得たのか。
それが全く分からないのだ。
勿論、俺とミルは自分達がドラゴンテイマーだと言う事を今まで隠してきたつもりだ。
それはカリンとハーツも同じだろう。
「警戒すべきでは?」
ハーツの言葉に俺も頷く。
「うん、それを確かめる為にも行かなきゃだね」
そして、俺達は正門を潜って城の内部へと入っていった。