第一章 第十二幕 不思議な鍵
「す、凄いわねリュージ!!」
そう言って駆け寄って来たのは闘技場の奥に逃げていたカリンだ。
「そうですね、貴方達の実力は十分把握できました」
そう言ってユリアも俺達に向き直る。
「これで、例の件に関してレイルが口を挟む事は無くなるでしょう。一度戻りましょう」
「じゃあ、僕は一旦消えるよ。疲れたからね」
「分かった、お疲れ様ミル」
そう、寧ろここからが本題なのだ。
おとぎ話だと思っていた邪竜ティアマトの存在。
そして、それを復活させようと目論む組織がいる事。
レイルと闘ったのもそれが本質としてあるのだ。
それから再び王室へ戻ると、五人全員が着席しており、その一番左のレイルは不機嫌そうにそっぽを向いている。
そんな中、ユリアが話を切り出した。
「さて、説明しなければならない事が幾つかありますね。まずは貴方が顕現させたティアドロップについてお話させて頂こうかと思います」
ティアドロップ。
先のレイルとの模擬戦で顕現させた青色に輝く石の事だ。
石の内部には赤色で何かの紋章が刻まれている。
「その石の事を我々はティアドロップと呼称しています。それは竜の涙で出来いると言われていますが、具体的な生成方法は分かっていません」
「ただ分かっている事があるとするなら、主と竜が本当の意味で心を通わせた時である事と、ティアドロップを顕現させた竜は体躯が大きく変化する事。因みにこの体躯は以前の小さい姿に戻る事も出来ます」
それを聞いてなのかミルが再び姿を現した。
その姿は以前の小さい姿であった。
「正直、あの形状を保つのは結構疲れるんだよ。まだ慣れていないからなのかも知れないけど、どちらにしろあの形状は常にエネルギーやら魔力やらを使うからね」
「そうなのか」
「うん、だからいざとなった時の切り札と考えておいて欲しい」
「分かった、だからお前は今は休んどけ」
「あいさ」
そう言うとミルはまた姿を消してしまった。
「では、話を戻しましょう」
ユリアが再び切り出す。
「次にお話せねばならない事は『邪竜教団』についてですね。邪竜教団と言うのは聞いたことありますか?」
「いえ、初めて聞きました」
「まぁそうでしょうね。この組織こそが邪竜ティアマトの復活を目論む組織です。教団名に邪竜と名乗るくらいですからね、本気で考えているのでしょう」
「でも、それってお伽噺だと思われていたんですよね?それを何故わざわざ問題視したのですか?」
「それに関してですが、ここで話すより実際に見て頂いた方が良いでしょう。メアリー!」
すると、王室の扉が開いてメアリーがやって来た。
「この方達を地下図書室へお連れしなさい」
「かしこまりました」
すると、メアリーは近くの丸テーブルに置いてあった鳥籠らしき物を手に取った。
金色に装飾された鳥籠の中には淡く光る水色の鳥が六羽ほど羽ばたいている。
それに、鳥籠の頭には不自然に細い棒が付いていた。
メアリーは、まるで手持ちの蝋燭台の様に棒の部分を持っている。
「えっと…メアリーさん?一体何をしているのですか?」
「地下図書室の鍵を取ったのでございます」
「鍵?鳥籠じゃなくて?」
「付いてくれば分かりますよ。説明するよりも見た方が早いですから」
そう言ってメアリーは先導するように行ってしまった。