第一章 第十幕 リュージvsレイルpart2
ーーーグランガレオス
そう呼ばれた緑竜の体躯は今のミルと同じ程の大きさがあり、グランガレオスの体長と同じ位の大きさを誇る大剣が銀色にギラついている。
「行くぞ!!グランガレオス!!」
レイルがそう叫び、物凄い速さでこちらへ迫ってくると同時、グランガレオスは咆哮を上げて、闘技場が大きく揺れた。
しかし、臆している暇はない。
俺も対抗するように右手を前に掲げ、魔法陣を展開した。
同時にミルも力強い咆哮を上げる。
俺は迫ってくるレイルに向かって展開された魔法陣からファイアボールを連続で放つが、軌道が読まれているのか、全て剣で弾き飛ばされてしまう。
「くそっミル!!頼む!!」
「あいさっ!!」
しかしーーー
「うわああぁぁ!!」
「ミル!?」
上から飛んできたグランガレオスの尻尾が鞭のようにしなり、ミルを吹き飛ばしたのだ。
「ミルとやらはグランガレオスが抑えているぞ!!どうするリュージ!!」
「こうなったら…あまり使いたくは無かったけど!!」
そう、俺が使えるのは無詠唱魔法だけではない。
精霊魔法も使えるのだ。
レイルはまだそれを知らない。
「とっておきを…見せてやる!!」
俺は後方へ飛んで体勢を整えると右手を左へ持っていき、そのまま一閃を描くように右へと振り払った。
その瞬間、描いた一閃の軌跡を追うように炎が舞い、一本の杖が形成された。
「顕現せよ!!サラマンダー!!」
ーーーーーーーーーーーーーー
一方、ミルとグランガレオスは上空で接戦を繰り広げていた。
「くらえ!!」
体躯が大きくなったミルは口から炎を噴射する様に吐く。
「ふんっ!!」
一直線に伸びた炎をグランガレオスは意にも介さない様に剣を振り払って、その風圧のみで掻き消したのだ。
「やっぱ一筋縄じゃ行かないね」
「この程度の攻撃、我に通じると思うな」
そして、大剣をミルに向かって振りかざして突進してきた。
しかしミルはそれを手で受け止めて言った。
「じゃあ、これはどうかな!?」
今度はゼロ距離で巨大な火球を放つ。
「ぐおおおぉぉぉ!!」
グランガレオスは雄叫びを上げながらもう一方の大剣で巨大な火球を受け止めている。
そして、何とか火球を薙ぎ払うが待っているのはミルの追撃だった。
ここぞと言わんばかりに更に巨大な火球を放つ。
グランガレオスもこれを直で受けるのは危険と判断したのか、ミルに掴まれている方の大剣を手放してギリギリで右に旋回して躱した。
「一本取ったね」
ミルが得意げに言い放つ。
しかし、劣勢の筈のグランガレオスは不敵な笑みを浮かべた。
「そうか?貴様がそう思うのであればそうなのだろう」
グランガレオスはそう言うと、空いた右手を前に差し出した。
何かの攻撃を仕掛けてくる物だと悟ったミルは咄嗟に防御態勢を取るが、一向に攻撃が飛んでくる気配がない。
そして気付いた。
いつの間にか、奪い取った剣が消滅している事に。
慌ててグランガレオスに再び視線を戻すと、グランガレオスは両手に剣を握っていたのだ。
「これで振り出しに戻ったな」
「そんな事も出来るの!?」
「この剣は我が意志だ。どこに在ろうと、どれだけ離れていようと意のままである」
グランガレオスは再びニヤけると言った。
「次はこちらの番だな。まだ実力を見せていない」
「ミルと言ったな、貴様の名前を覚えておこう。そして、我が剣技に散れ!!」