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白雪姫とヤクザ

お楽しみください。

『美女と野獣』というお話がある。


 魔女の魔法により、見るも恐ろしい野獣の姿に変えられてしまった皇子。そこへ偶然にも深い森の奥にある彼の城に訪れた美しい女性が恋に落ちるお話である。


 最終的に彼らはそれぞれ愛し、愛されることで『真実の愛』を手にすることができた。それにより、魔女の魔法は解けて皇子の姿は元の麗しい姿に戻ることが叶った。


 ふむ、なるほど。俺は疑問に思う。


 姿なんて元に戻らなくても『真実の愛』とやらがあれば野獣のままでも愛し合えたのではないのだろうか。


 じゃあ何故物語ではわざわざ元の姿に戻してやったのだろうか。


 観点を変えよう。


 もし、元の皇子の顔が野獣なんかよりもっと恐ろしかったら?


 それでも彼らは愛し愛されるされることが叶ったのだろうか。


 無論、この物語はフィクションだ。作者読者共に先の展開など好きなように考えられる。


 だからこそ、俺は思ってしまう。


 ……きっと彼らは上手くいかなかっただろうな、と。


 ところで、俺にかかっている筈のこの『魔法』は一体どうすれば解けるのだろうか。真実の愛とやらを手に入れればいいのか。


 答えは簡単だ。


 解けない。解けるはずがない。この顔はフィクションじゃないからな。誰も魔法などかけていない。


 だから、これからもずっと付き合い続ける顔だ。


 鏡にごつん、と拳をぶつけては自分の恐ろしい顔を呪った。



 ☆☆☆☆☆



 この学校には、【太陽王子】なるものがいる。こっぱずかしくて、余りにも稚拙で陳腐な呼び方だと、俺は思う。大体センスが無い。もっと……こう、ライジング・サンとか。天が与えたもうた祝福の光、とかどうだろう。ふふ、悪くない。


 きっも俺。


 光条こうじょう陽太ようた。ともかく彼はその持ち前の爽やかさとピカピカの笑顔から彼は『王子』と呼ばれて親しまれたのだった。


 人当たりの良さ、運動神経抜群、勉強もできるときた。天は二物を与えぬと言うがきっとそれは嘘だ。明らかに三物も四物もこいつは貰ってる。弱点、もとい欠点が見つかんねぇ。光属性とか反射しそうな勢い。闇属性は無効だろうな。


 なんだ神さん、そっちでも俺TUEEEEが流行ってんのか。奇遇だな、俺も好きだ。魔法とか使いたいな。次のアプデで実装されない? 


 え? 王子様が強いの使うならいいや。アプデ延期で。


 そしてもう1人、このお話にはヒロインも存在する。雪のように白い肌、透き通る声、細い体つきに小さい顔。枝毛一つないサラサラの白髪。整った顔つきに吸い込まれるような大きな瞳。


 何者も寄せ付けないその凛々しい態度から彼女は、白雪姫というまた小恥ずかしい名前で呼ばれた。スノーホワイト、これはいいな。でも雪の姫ならフリージア・プリンセスとかも悪くなくない?


 何? 某雪の女王が先に出てくる? いつの時代だよレリゴーしてんじゃねえよ。流石に少し寒いわ。


 まぁ本人は別になんとも思ってないようで、興味が無いと一瞥しているのだが。


 なんだこいつ変子か? 普通、白雪姫様なんてあだ名付けられようもんなら赤面卒倒して地面に這いずり回るくらい恥ずかしいもんじゃねえの?


 や、別にしろとは言ってないが。見てみたいけど。


 彼女の名前は白河しらかわ雪乃ゆきの。俗に言う、学校一の美少女というやつだ。古めかしい言い方をすればマドンナ。今時でいうと完璧JK。


 彼女が歩けばすれ違った男は二度見し、彼女が話せば男は釘付けになる。バレンタインは争奪戦で、クリスマスはお誘い戦争。実にこの学校は治安が悪い。誰も取り締まってないのだから余計にタチが悪い。


 はぁ。ガンジーさんの無暴力非服従の教えを守りたまえよ。は? パンジーさん? そりゃマリオのキャラだろ。懐かしいなオイ。



 太陽のように雄々しく、素晴らしい人格の王子は、凛々しく静かに月光に照らされた雪の姫に一目惚れをした。そして、一途に彼女を愛した。


 ただこれだけの物語。子どもですら結末が予想できる、反吐が出るような、ベタでありきたりな物語。


 いくら王道といえど、もうお伽話でも流行んねぇよ。もっとほら……ざまぁ展開見せていけ?



 そして、俺は────



「スイ、一緒に帰ろう」


「生憎だが一人で帰る。ユキ……じゃなくて白河さんは友達と帰ったらどうだ、あっちで帰り誘って欲しくてウズウズしてるウズラ系女子がいるだr……」


 彼女は俺のありがたいお話を興味もないように一瞥いちべつし、ぶった切っては真っ直ぐに俺を見つめた。


「どうでもいい。私はスイと帰りたい。それを邪魔する女なんて興味も沸かない。だって私は────」


「……はいはい。許婚、だよな」


「そう。スイの許婚だから」


 彼女は真顔で言い放った。


 ───そう、俺は彼女の、もとい雪の姫の許婚だったのだ。


感想を聞かせて頂ければ、とても励みになります。

宜しければどんどこどん書いてください。


「草」とかでいいですので。

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