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この世の朝は未だ遠く 〜Zwischen Traum und Erwachen〜  作者: レンリ
二章 主人公の素質

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七十九話 夏祭り 承

 なにか目星いものはないかとウロウロ歩き回ってみると水中コイン落としと大々的に看板を掲げた出店がある。基本的に何処もこれと似たようなものなのだが。


 水中コイン落とし。

 それは、水中にある皿にコインを落として入れるという、一見簡単そうに聞こえるが実際やって見ると案外難しいものである。難易度を高くしている要因は水の抵抗だ。空気よりも遥かに大きい抵抗はコインの面でより変わる。抵抗が少なければスッと落ちるのだが、大きければ水中を滑空するように滑っていく。人であればバランスも取れるがコインではそうはいかない。クルクルと回りながら落ちるコインは予測よりも大きくズレる。そうして入るか入らないかで一喜一憂し、「凄いね」や 「惜しかったね」と言い合って青春を謳歌していると実感し、何気ない、そして将来の大切な思い出として刻まれるものだと認知している。それが幻想であるか現実であるかは定かではないが。


「イッセイ、これやってみましょう! 」


「別にいいが、水中コイン落としの極意身につけてるから高確率で入ると思う」


「一成は縁日のプロかなにかなの!? 」


 蒼は冷静にツッコミを入れるが、たった二つでプロだと決めつけるのは早計だ。ここはマニアと言うのが正しい。実際に不得手なものもある。


「いや、俺だって苦手なものぐらいある。輪投げとか金魚すくいとかは苦手だな。……蒼は縁で金魚持ち上げてそう」


「そんなの出来るわけないじゃん! 」


 とは言っているものの、実際に成し遂げてしまいそうで怖い。

 俺たちが雑談しているうちに、カピュアは既に参加する所まで言っており、コイン片手に水槽に向き合っている。一人で遊ぶなんて切ない行為をするのは俺だけで充分だと思い、慌てて隣まで寄る。


「カピュア、袖が水につきそうになってる」


 身なりを気にせず遊戯に集中して遊ぶのも可愛いが、こんなにも綺麗な布でできた着物だ。さぞかし値段が張ることだろう。そうでなくとも、袖が濡れたまま歩き回るとなると人目が気になるところだ。


「えっ? あ、ほんとだ」


 ここ数日で口調が少し柔らかくなって来ている。もともと丁寧語を使っている割には砕けた言い方をしているところもあり、後輩のような可愛さがあったのだが、今では時々 《です》 《ます》を使っていない時がある。敬語を使われないということは距離を感じなくなってきたのだろうか。それにしても敬語じゃないカピュアが素感が強くてとても可愛い。敬語は誠実さが増えて可愛い。結論、可愛い子はどのような口調で喋っても可愛い。

 今後どうやって男言葉にしようかと考えあぐねていると、コインを手にむぅ、と可愛く唸っている女子が一人。


「やっぱり難しいですね」


「水中コイン落としの場合はコインの丸い部分を下にして垂直に落とせばかなりズレを抑えられる。軽く水面につけてから落とすとし易いかったりするが」


「イッセイ詳しいですね」


 彼女はスズランの髪飾りを揺らしてこちらに微笑みかける。


「まぁ無駄な知識と才能だけは持ち合わせているからな」


「全然無駄じゃないですよ。だって、今もこうやって私に教えてくれてるじゃないですか」


 全肯定してくれる優しさがあるのだが、もう少しダメなところも言ってくれた方が直しやすいというか、カピュアの理想の彼氏像になれると嬉しいというか、そんな不思議な感覚になってしまう。褒められているのに指摘された方がありがたいとは。


「そう言われると悪い気はしないんだが、ダメ出しもしてくれないと直しようがなくてちょっと尽くせないなと思っているんだが……」


「そう言われてもイッセイの悪いところなんて思いつきません」


 ふるふると首を振って否定する。喩え俺が違うと言っても頑なに認めようとしないだろう。そうした意志の強さが伺える。


「案外あると思うんだが? 運動神経は悪いし、カピュアの事以外が疎かになることはあるし、カピュアへの愛が重すぎて気持ち悪い時があるし、興味のないこと全然覚えられないし、かなりの面倒くさがり屋だし、空気読めないし……」


 難攻不落の城を落としてみせようと、自覚症状のある部分を述べていく。これで四分の一といったところか。


「もう、こんなところでそんな自分の悪い所を言わないでください。それに、今言ったことなら全部素敵だと思ってますから。なんなら今から言いましょうか? 」


 頬を膨らまして子供っぽく怒る彼女を可愛いと思ってしまった。怒られている途中にニヤけなどすれば真面目に受け止めてとでも言われてしまうだろう。


「いや、なんか褒め殺しになりそうだからまた今度で」


 とても話が逸れたが、カピュアはコイン落としに挑んでいる。袖も捲らずに。


「カピュア、袖」


 俺が横から口出ししたせいで袖を捲ることを忘れていた彼女は左手でそっと袖を掴んで水につかないようにしている。しかし、今度は左腕の袖がつきそうに……。


「カピュア、次は左腕が」


「えっ? あっ! 」


 抜けているところも可愛いなと思いながら、手伝ってあげようと手を伸ばす。


「イッセイもコイン落とししたいんですか? 」


「そうじゃなくて、ほら、また水に浸かりそうに……」


「どうしたらいいんでしょうか」


 何もしなければ右の袖がつく。かといって袖を持っていようとすると左の袖がつく。困り笑顔で首を傾げる。単純に腕(まく)りすれば良いだけの話なのだが、どうもここにいる人間はその事に気が付けないようだ。


「しょうがない。袖持ってるからその間に済ませてくれ」


「ありがとうございます」


 その後、彼女は落ち着いて……といっても特に意味はないのだが、黙々とコインを落としていった。

 結果はまずまずと言った出来だ。5枚中2枚入ったんだ、彼女にとっては大きな成果だったのだろう。その証拠に大きく両手を上げて喜びを表現していた。とても可愛かった。


「コイン2枚で子メカワモフのぬいぐるみだよ」


 メカワモフが愛玩動物としての地位を獲得していることはさておき、カピュアがとても可愛い。


 子メカワモフって言いにくくない?


「あれ? アオイさんはどこ行ったんですか? 」


 気付けば蒼はどこかに行ってしまった。「ふたりで楽しんで」という意味合いが絶対に含まれている。折角なのでとある方法を使って呼び戻そう。


「あぁ蒼? 彼女はもう、帰らぬ人に……」


「勝手に殺すな! 」


 どこからともなく金髪じぇーけーが現れる。彼女はツッコミを入れる為にここまで来たというのだ。何処ぞの英霊?とツッコミを入れたくなるが、何故か俺が巫山戯た時のみ一定距離内だと反応してくれる。最近になって気付いたことだ。そういうスキルでも持っているのか疑問だが、女の勘の気もする。もしかするとそういうプログラムが組み込まれているのかもしれない。ここは俺の直感を頼って女の勘ということにしておこう。


「まだ言い切ってないだろ。帰らぬ人に……なりかけたかもしれないだろ」


「それでも私死にかけてるんだけど?! 」


 求め人との再開にカピュアはとても嬉しそうな顔をするかと思っていたのだが、迷子を窘めるような、単純に疑問に思っているような声色だ。


「アオイさん、どこいってたんですか? 」


「ちょっと欲しいものがあって…」


 純粋なカピュアに虚言を吐くのははばかれるのか適当に誤魔化そうとする。


「それなら先に言ってから行ってください。じゃないと心配します」


 何故だろう。とても実感の籠った台詞だ。きっと幼い頃に親辺りに叱られたのだろう。それを今も覚えていて大切だと思っているから蒼に伝えようとしているのか。


 結局蒼は逃れられず、三人でまわっているとカピュアの知り合いと思わしき人物と出会う。


 出会った人はとても中性的な子供だ。丁度小6ぐらいの。ボーイソプラノか、それよりも少し高い声。男女どちらとも言えない見た目をしている。表が白、裏が赤のローブ……礼服と言うべきか、を着ている。髪は白を基調としたものに所々水色のメッシュが入っている。それが右目にかかるぐらい伸びたままで、実際に右目を完全に隠しきってしまっている。鬼太郎スタイルだ。顔つきも男女どちらとも言えない顔つきで、おとこの娘及び宝塚の男役と言えば伝わりやすいか。

 その人はボウ・アンド・スクレープをして……!


「これはこれは麗しいお嬢様。以前お会いした時と一向に変わっておりませんね。いや、少々大人びてお可愛くなりましたか? 」


「改まってそんな言い方して、私をからかってるのは分かってるんですから」


 旧知の仲を温める会話を始めようとしている……。


「待って一成無言で大剣交換しないで! 怖い怖い! 」


 俺がここまで怒っている理由はただ一つ。そこの男が許可なくカピュアの右手を取り、そのまま唇をつけた事だ。それも予備動作無しで……いや、あるにはあるのだが、頭を下げているときに流れでしていたために俺が止める間もなかった。


「久しぶりですね。その格好は、王宮筆頭魔術師になったんですか? 」


「まぁちょっとね〜。それよりも〜そこの彼氏さんがお怒りだけどいいの〜? 」


 先程までのかなり丁寧な言葉遣いは何処へやら。かなり特徴的でおっとりとした話し方だ。聞く人によってはイライラする速さでもある。というより大半はイライラするであろう。俺はその大半に入っていない。ただ、口付けをしたことは許せないが。


「面識あったとしても、出会って直ぐに手の甲に口付けは褒められたことじゃないんじゃないか? 」


 周りが少しざわつき始めたので大人しく大剣は宝石に戻しておく。


 あぁ神よ。何故私が毒針を持つことをお許し頂けないのですか!

 A.お前がカピュアに近付く男を抹殺していくから。


「だってボクは女の子だし〜女の子同士なら許されるでしょ〜?」


「嘘つくな。お前、男だろ」


「えっ? 男? ほんとに?! 」


 一人衝撃の事実を知ったような反応をしているが俺は確固たる自信を持って言い張れる。彼は男だと。


「おかしいな〜。このローブだと女の子に見えると思うんだけどな〜。

 ま、そういう君こそ選ばれし者なんじゃないの? 」


 最後の一文だけ語尾を伸ばす癖が抜けていたが、特に気にはならない。一瞬で俺の素性を見抜いた衝撃に比べれば。


「なんでわかった? 」


「洞察力の鋭い人なら分かるよ〜。だって〜選ばれし者って骨格が微妙に違ってるもん〜」


 骨格の違いで本人は見抜いたと言うが、本当なのだろうか。確かに少しばかり骨格が違うのは当然だ。日本と東方諸国でさえ大小なりとも違いはある。それが異世界ともなれば尚更だ。しかし、俺の事をそうだと言いきるには……。


「それじゃあ〜君がボクのことを見抜けた理由を聞こうかな〜」


「単純に俺におとこの娘センサーがついているだけだ。お前の行動が不審だったわけでも、特段女っぽくなかったこともないから安心しろ」


「良かった〜。自己紹介が遅れたね〜。ボクはレイリ・フォン・マホーア。よろしくね〜」


 どこか演技に見えるが、ホッと肩をなでおろして安心する仕草をする。


「初対面で彼女の手の甲に口付けされて好印象は持ってないが、朝霧一成だ。出来ればカピュアに近付かないで欲しい」


「カプア君……じゃなかった。フェルト君〜彼氏がああ言ってるみたいだけど〜? 」


「そんなこと言わずに仲良くしてください。二人とも私にとって大切な人なんですから」


 とても「俺とそいつ、どっちが大切なの!」と問いたくなる言い回しだが、それは愚問だろう。カピュアにそれを聞いてレイリと返ってもきてみろ。ショックで立ち直れずに閉じこもる自信がある。そしてレイリを道ずれにし、俺の方が大切になるように仕向ける。


「えっと、私は九条蒼。気楽に蒼とでも呼んで」


 俺とレンリの不穏な空気を感じ取った蒼は割り込んで自己紹介を済ます。

 完全に雰囲気がこのまま一般通過しようとなっているのだが、それを俺も感知しているのだが、どうも気になったことがある。


「俺以外の選ばれし者にあったことがあるのか? 」


「うんあるよ〜。軽く四人には会ってるかな〜。みんな個性が強かったけど〜一番君が異端そう〜」


「平然と初対面相手に個性強い扱いしてることに恐怖を感じる」


 確かに自分でも普通ではないと思っている。しかし、それを初対面の人間に言われるとなると侮辱とまではいかないが小馬鹿にされている感覚になる。まぁなんとも思わないのだが。


「にしても〜フェルト君が付き合うだなんて〜どんな口説き方したのかな〜? 」


 俺ではなく、カピュアに向かって問う彼は間違いなくからかっている。表情が水を得た魚のように活き活きしている。


「先に私の方が、好きに…一目惚れしたんですけど……ってなんで言わなきゃいけないんですか」


 ノリツッコミ……というよりはふと我に返った彼女は恥ずかしいのか言いかけていたのを辞める。すっかり俺と蒼のような立ち位置が出来上がっているのか。

 完全なる直感か、ここで彼の台詞が脳裏によぎる。


「……! 以前のカピュアを知ってるのか?! 」


 普通に考えれば知っていて当然なのだが、今の俺にそれを思いつく余裕はない。目を見開き、戦闘中に間合いを詰めるかの如き速さで歩み寄る。その気迫に押されたのか彼は少し身体を後ろに仰け反らせて、若干引いている。


「えぇ、引くんだけど〜。まあ知ってるよ〜。見る〜? 」


「え? なに? そんな写真とか動画とかあるん? 」


 もう着飾った言葉なんて投げ捨て恥をかなぐり捨てて、カピュア・リリィを見るために尽力を尽くす。彼女の幼姿を見るためなら喩えロリコンと罵られても構わない。


 カピュア・オルタ・サンタ・リリィ?


 そんな気持ちで問いたのだが、案外現実……というよりレイリは優しい。子羊を甚振(いたぶ)るような目付きで、


「仕方ないな〜。えい! 」


 えっ? 待ってなにあの目付き。怖いって!


 俺はすぐにその目付きの正体を知ることになった。

 目の前には制服のようなものを着たカピュアがいる。どうやらここは教室のようだ。

 青染めのロングコートスタイルの上着に、同色で膝丈のズボン。黄色のハイソックス。これは今の俺の視点なのかいつもよりも小さく見えるカピュア。そんな彼女がコートを着ていると、失礼だろうが背伸びをしている感じがして和やかな気分になる。そのイメージをより補強しているのは見たことも無いおさげの髪型だろう。教科書と思わしき本を胸に抱え込むように両手で持っているのも点数が高い。

 とても発狂したいが、まだカピュア以外の人が視界に映っている為なんとか耐え忍ぶ。


「ん〜と、休日はこんなのかな〜」


 呑気な声と共に視点がぐわんと変わり、街の一角と思わしき風景。次はカピュアは正面に居ない。どこにいるのかと辺りを見渡して……少し左を向いただけでその姿を捉える。その服装は裾や袖に白いフリルとレースの付いたふんわりとしたスカート。灰色が基調にされていて、差し色に黒が使われている。俗に言うゴスロリだ。


「ーーーーッ!! 」


 ゴスロリカピュアの爆発的な可愛さに耐えることが出来なかった。周りにも特に人影が見えず、耐える理由もないと思い叫び声をあげる。


「あ〜、いまボクから以外の五感切ってるから聞こえてないよ〜」


 俺に向かってではない声が聞こえる。言葉からして誰かが俺に何か言ったのをレイリが宥めて?いるところか。


「そういえば〜こんなのもあったな〜」


 ネコ耳とふかふかの尻尾を付け、手には大きな肉球を填めた彼女の姿が見える。ここは観客席のような場所で


「にゃん♡」


「グハッ……」


 レイリから以外の五感は切っていなかったのか。恥ずかしげもなく彼女の声帯から発せられた猫語は、本人が使えば当たらないが魔法少女がカードを読み込んでコスプレすると当たるようになる(ゲイ・ボルグ)のように俺の心臓を貫く。いや、自分の心臓には当たっていたか。それは呼吸することも忘れる可愛さだ。

 なんとなくの胸苦しさを感じて、自分が呼吸を辞めてしまっていたのだと自覚する。いつもなら気付いた時点で人目を忍ばずに奇声をあげるところだが、それすらも出来ない。

 本当に辛い時(かわいいと思った時)は声すら出ないというのは本当のようだ。今の俺に叫ぶ余裕はない。浅く速く喘ぐように息をしてなんとか生命活動を続けている。しかし、段々と吸っても肺に行く感覚が無くなり、息を止めているかのように苦しくなってくる。

 じわじわと蝕むような頭痛がして、まともに立っていられないぐらいのふらつきが起こる。目眩で片膝をつくが、一向に良くなる気配がない。両手もついてなるべく楽な姿勢であろうとする。


 なんだこれ。このまま死ぬのか?


 最早瞳に映るのは観客席の椅子となるが、未だに空気が吸えない。手足や口元に血が通っていないかのような痺れの症状が、先程までのと重複していく。


「流石に可哀想だからこの辺にしとこうかな〜」


 何処を見ても真っ黒な瞼を閉じたような世界が見えた。

 次の瞬間には石畳の床がある。熱を持った空気にひんやりと冷たい石。肌で感じる感覚からここが現実なのだと認識する。しかし肺に空気は向かわず、額から頬へと冷や汗が伝う。


「学芸会でカプア君が猫の役だったんだよ〜」


 彼のマイペースな口調に釣られて少しずつ落ち着きを取り戻す。一度呼吸を止め、完全に歩調を一旦零にして普段通りの呼吸を開始する。


 浅く速い息。目眩。頭痛。手足や口元の痺れ。


 俺は、構えていない状態だと過呼吸になることの判明し、今までの愚行を恥じる。単に症状と行動から思っただけだが。


「全くカピュアを猫役に配役した人誰だよ。天才だろ。もう頭上がらないし、足向けて寝られない」


 構えてないと過呼吸になるとかカピュアのかわいさは毒に近しい何かでもあるの?


「う〜ん、それはあのゴミを褒めることになるから伝えておきなくないな〜」


 声は穏やかだが、顔は歪んでいる。


「ゴミ? 女の子がそんな言葉を使わない方がいいと思うんだが? 」


「あのさ〜男って見破った後にそれはどうかと思うよ〜」


 彼は呆れたように目を細めて言う。そして続けて


「でもま〜君の言うことも確かにね〜。こんなところを他の人に見られたら悪いイメージついちゃうかも〜」


 と周囲を一切見向きもせずに言うところは、周りを気にしていないが建前として一応、といったことか。


「にしても〜あのカプア君が今となっては彼氏持ちか〜。信じられないな〜。フェルト君〜きっとその男はめんどくさいだろうけど〜頑張ってね〜」


 イマイチカピュアの呼称が安定していないが、それでもしみじみとした物言いで心から労い、奉賀の言葉を送っている。異性とはいえ友達に彼氏が出来たことに素直に祝と言えるのは貴重……でも良い事だ。


 蒼にも彼氏とか出来ないのかな。できたら俺も気分楽になるんだけどなぁ。蒼のぼっち計画が着々と進んで来ているから。


「ありがとうございます」


 普段通りと言えばそうなのだが、カピュアも自分の気持ちに正直で思っていることを率直に言える存在だ。いつもと同じようにありがたいと思った彼女は花のような笑みを浮かべる。


「じゃあボクはこれで行くよ〜。これ以上は迷惑だからね〜。ばいばーい」


 子供みたいに大きく手を振って人混みに紛れて、行ってしまった。


 本当に台風みたいな人多くない?


「一成、あの人一成が一番嫌いなタイプかも」


「いや、なんで分かるんだ」


 俺が一番嫌いということは、後輩で亜麻色の髪をしたあざとかわいい系の方かな。推しの出番を奪ったこと、許さない。


 それ以上にカピュアを傷つけたストーカーは許さない。

止まるんじゃねぇぞ…。

ってしたい。それぐらい大変なんだけど、この企画始めた人誰だよ()

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