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この世の朝は未だ遠く 〜Zwischen Traum und Erwachen〜  作者: レンリ
一章 三千大異世界

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六十五話 反省文

 カピュアを生きたまま褒め殺してしまったことは、深く反省し、今後このようなことを起こさないように心に留めていきます。善処を心がける上で気をつけたいところは特筆すべき箇所は二つある。

 一つ目は俺自身が暴走をしないこと。カピュア同様、俺も暴走するとカピュアを褒めるしか脳のない人形となる。なるべく自制心を鍛え、己を律することのできる人間になることが重要だと考える。

 二つ目は一つ目と少し重なるが褒めすぎないこと。多少の褒めならば、カピュアは照れるだけで褒め殺しにはならない。しかしあまりにも過度に褒めてしまうと、今回のように恥ずかしい思いをさせることをなる。だから今後は花鳥風月ではなく、明鏡止水、光風霽月、地水火風、山紫水明で褒めたいと思う。

 以上の二点をふまえ……


 などと一人で脳内反省文を書いていると、ゴロゴロと鳴っていた車輪の音が段々と小さくなって消える。


 もちろん正座で背筋ピン!の体勢で目を閉じて、座禅のように反省していた。

 そんな俺は慣性が体に加わった時はなにかあったとかと思ったが目を開けてみると、眩しい、カピュアかわいいと順に思った。


 眩しくてもいつも輝いてるカピュアだもん。認識できるにきまってる!

 ちなみにカピュアは反省している俺の真似をして正面で正座をしている。目を瞑って……。

 これが口付け待ちの表情に見える俺はやばいのだろうか……。うーん。とりあえずまた反省の時間を設けよう。


 そして目が光に慣れてくると石造りの門のような物が見える。


 これは…関所かな? 衛兵らしき鎧を着て帯剣している男性が見えるし。


 ジョウカさんと蒼が代表してかカードをみせ、少しの雑談をした後戻ってくる。


「反省とやらはもういいのですかな? 」


 目を開け辺りを見渡している俺に彼は皮肉げに聞いてくる。


「新たに反省材料ができたことを除けば一応終了だな」


「ところで、これからは気を引き締めて頂けますかな。関所を超えると魔物たちが増えますからな」


「把握。魔物のレベルは目安として最大と最低はどのくらいだ? 」


「今までで確認されているのは最低D、最高A−ですな」


 ありがとう、と感謝を伝えた後に魔力のコントロールを軽く試しておく。


 魔力を動かすことは十分できる…と。

 なら、一応あれも交換して戦闘準備しておこっと。


 しばらく待機していると、再び移動が止まる。


 ん?


 ――不思議がる時間もなくピキィィンという甲高い音が辺りに響く。馬車は赤い光に包まれ、布は微かに赤く光っている。


 慌てて外を見ると透明なハニカム構造の壁でドームがある。


 今の音はこのドームを生み出した音。最も可能性が高いのが襲われたこと。

 カピュアは近くで驚いていたから違う。なら、商人だと考えるべきか。


 一度深く息を吸い、正常な思考ができるようにする。


「カピュア、安全の確認ができるまではここで防御に徹してくれ」


 弱めの身体強化をかけて飛び出す。

 ジョウカさんの傍に行き、


「一体何が――」


 もう一度辺りが赤いものに包まれる。

 赤と言っても白みがかった赤でオレンジに近い。色にはばらつきがあり、特定のカタチに留まることなく常に動いている。


 ……炎。だとすれば真っ先に思いつくのは魔法使いかドラゴン。

 一定の方向から流れていることを考えればドラゴン説が濃厚か。


「忌々しい神め! この魔力量、この感覚、間違いない! 」


 炎が止むと共にはっきりとした声が聞こえる。

 音は(そら)からだ。みてみれば皆が思い浮かぶようなドラゴンが浮かんでいる。


 空に浮かぶ飛龍(ドラゴン)からなにか小さな影が降ってくる。

 いや、元々の影に比べて小さいだけで人並みの大きさはあるか。


 宝石を交換して構えているうちにも影はどんどんと大きく近づいてくる。


「っ! こんの! 」


 音もなくドームに辿り着いた影は手元で反射し(ひかっ)ているものをそのまま突き刺す。


「ひとつ伺いしてもよろしいですかな? 」


 この場の空気に合わない、慌てる様子もない呑気さで質問をされる。


「ちなみに魔力量はいくらほどですかな? 」


 ジョウカさんが落ち着いて世間話をするかのように話している間にも、影は何度も刺して穿こうとしている。

 その眼差しは怒りに満ち、俺を睨んでいる。


 え? 待って? 心当たりないよ?

 あれ俺またなにかやっちゃいました?


 いや、こんな巫山戯てる場合じゃない。状況打破の一手を考えろ。


「ジョウカさん。あとでいいよな?

 蒼、足止めだけでいいから人型を任せる」


 返答を聞かずに質問は先送りにして指示を出す。


 姿が見えないと思っていたが、蒼はとっくに臨戦態勢に挑んでいるようだ。その証拠に中距離を攻撃するアサルトを構えている。


 この調子なら、上手く噛み合えばいける。


「ジョウカさん、車を引いてる動物はどれぐらい戦える? 」


「ミュアのことですかな? 守りが強いのでできればこのままにしておきたいですな」


「そうか。なら人型は任せた。よし、カピュア。ドラゴン討伐だ」


 えっ? と言いながらひょこっと顔を出すカピュア。


 かわいい。なごむなごむ。


「簡潔にまとめると、襲われた。人型とドラゴンがいる。以上」


「えっと、分かりました」


 カピュアも車から降りて気持ちを切り替えたようだ。面持ちが真剣に変わった。


 隣までやってきて、腕に触れて魔力吸収の戦闘態勢だ。


「確認だが、このATフィールドは普通に抜けられるよな? 」


「えぇ、歩くだけでも通り抜けられますな」


 その言葉に信じて軽く手で触れてみる。水の壁のような少しの抵抗はあるが、それでも拒まれることはない。


「カピュアはこのドームの中で見ていてくれ。少し立体機動するからな。危なそうだと転移でここまで飛ばしてくれ」


「分かりました。気をつけてください」


 そう答えるが、不安そうな表情は残ったままだ。


 うーん。うまく取り払う方法……。


 カピュアの身につけているハンカチが目に映った。以前俺に化けた神成が勝手に渡したものだ。


「なら、ちょっとこれ借りるぞ」


 腕に巻き付けていたハンカチを自分の腕に巻き直す。

 そして頭を撫でて、


「大丈夫だ。カピュアのものを借りたまま死ねるわけないだろ? 」


「……それもそうですね」


 彼女なりの強がりなのだろうか。少し不安の残る顔で精一杯笑顔を作る。


「なら行ってくる。平穏なただいまを待っててくれ。遅くなりそうなら先にご飯食べててもいいよ。なんなら熟睡してても」


 精一杯の笑顔に精一杯の茶化しで答えて、(いよいよ)覚悟を決める。


「……援護はジョウカさんか蒼から魔力を貰ってしてくれ」


 少しひよって助力の話をしてしまったが、戦うことは変わらない。


 変えるつもりもないし、そもそも変えても助からない。


 俺の空間転移は不完全で直ぐに発動できないのに加え、生物は無駄な魔力を浴びて変貌してしまうらしい。

 カピュアの魔力量では一度に二名しか送れない。カピュア自信がいないと目標を設定していないために遠距離は不可能。それに俺がいないと戻ってくるときの魔力が足りない。なんか、俺が一番しっくりくるとのことで、親族以外だと普通はまともに吸えないらしい。

 だから援護はほとんど期待できない。


 つまりは戦うしかないってことだな。


「おっと、あのドラゴンのスキルは属性変化ですからな。お気をつけて」


 最後にジョウカさんの助言を受けて水の壁を超える。


 俺は宝石を片手に飛龍と向き合うのであった。


 なんか、文字にすると超絶ダサい。

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