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この世の朝は未だ遠く 〜Zwischen Traum und Erwachen〜  作者: レンリ
一章 三千大異世界

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三話 はじめての町

なんか、蒼を書くのが一番難しい

 流石にこれ以上俺の心をえぐる気はないのか、蒼は俺に聞いてくる。


「で、なんか変な目で見られないようにするようにはできるの? 」


「うまいこと交換を使えば少し無駄が起きるぐらいで済む。」


「もう、なんでもいいや。準備まであとどのくらい? 」


 俺は目を開けたまま頑張って表を出し、適当に価値のなさそうな綺麗な宝石と大剣の交換をはじめる。

 アップデートの進み具合はタオルより遅く、三十秒で十五パーセント程しか進んでいない。


 えーと、だから、6で、三分ぐらいか。カップ麺のうどんだと作れない時間ですね。


「あと、三分ぐらいでやっと交換できるようになるからその間はなにかして待っててくれ。」


 と言いつつ、待たせている張本人の俺は地面から黒い本を拾い、立ち読みの姿勢で目次から読み始める。


『※この本はあくまでも参考程度にしてください。

 一章:この世界の種族

 二章:魔法について

 三章:スキルについて

 休章:色々な英雄

 四章:大まかな歴史

 五章:ステータスについて

 六章:この世界の地理

 七章:冒険者について

 八章:ことわざ・故事成語

 九章:異世界と正世界を比較して

 おまけ:英雄譚


 一章:この世界の種族

 一節:神族

 其ノ壱:神

 この世界には大きく分けて人族・神族・魔族の三種類の種族が暮らしている。神族の中には《神》や《天使》、《神獣》がいる。

 神は古来より、ほかの種族には到底真似出来ないような奇跡や天災を起こしてきた。超常的な力を持つ反面、個体数が圧倒的に少ない。また、後ほど七章で詳しく説明するが、戦いを極めたものであれば神殺しを成し遂げることも可能と言われている。

 神はそれぞれなにかしらを司っており、二章の復活魔法は魔法や生命、魂、世界を司る神が使えるとされているが、未だに成功した例はない。

 神は基本的に世界に干渉することはないが、なにか神を怒らせることをしてしまうと、人類そのものが滅ぼされる可能性があるため、八章で詳しく説明するが世界には『神のものを盗む』ということわざがある。

 神はこの世界に点々と住んでおり、性格も好きな物もそれぞれだと言われているが、傲慢な神が多い。』


 俺はここまで読んで思う。


 これ、順番に読んでたらダメなやつのような気がする。欲しい時に欲しい情報を辞書みたいに取らないとダメなやつだ。

 でも、辞書みたいにページ書いてないから探すの面倒なやつだ。

 よし、もう、読むのやめよ。


 俺は表を想像して、残り時間を確認する。

 案外進んでいて、メーターの三分の二程赤く染まっている。


 暇だし、推しキャラの声と姿を脳内編集再生して、癒されておく。


『これから、異世界生活だよね。ぼく、なんにも分からないけどきっと大変だよね。でも、一成なら出来ると思うから、頑張ってね。』


 なんでこんなにSaiちゃんって可愛いんだろう。みんながみんなオタクなら戦争は起きないと思うんだよね(キャラクターについての戦争はあるかも知れない)。

 陽キャだって、二次元にはハマると思う。だって可愛い要素詰め込んだキャラクターなんだから。


 そもそも、なんで少年系の漫画だとアニメとかみてもグッズ集めても少しならオタクって言われないのに、ラノベを読んでたり、アニメを観てたり、グッズを少し買うだけでオタク認定されるんだよ。おかしい。

 こういうのを理不尽って言うんだね。


 俺が世界の理不尽について心の中で文句を言っている間に表の枠が全て赤く染まり、右側のボタンを押す。

 すると、ポケットに何とか入る大きさの石 (多分宝石)が目の前に宙に浮いた状態現れて、大剣が消える。


 交換が終了すると、石は重力に従い自由落下を始める。

 俺は落ちる石を掴もうと、左手を振ってキャッチする

 ――ことが出来ずに石は手のひらに弾かれ、地面に落ちる。


 なんでこんなカッコよく決めようとした所で決められないんですかね。


 仕方なく地面に落ちた石を拾い、二枚の紙と一緒にズボンの左ポケットに入れる。


「よし、これで、普通に町を歩けるぞ。どうせだから、黒い袋持つぞ。」


 俺は蒼に交換したことを伝え、荷物持ち化する。


「はい、これ。」


 蒼は袋をこっちに放り投げながら続けて言う。


「一成は勝手にその袋の中身を覗いたり、手を入れたりしないこと!」


 蒼は待っている間に袋の中身を見たのか、俺が袋の中身に関しての行動を禁止してくる。なので俺はとりあえず頷いておく。


 なんだか、異世界に着いてから俺への当たりが強くないですか?

 まぁ、俺も女子の下着とか罪悪感しか湧かないから、出来れば、蒼のものだけでも蒼が持っていて欲しいんだけどなぁ。流石に今更袋もない状態で渡す訳にもいかないし。持つか。


「ほら、行くよ。」


 気付くと蒼はゆっくりと歩き出していた。

 俺はそれに黙って某異世界RPGゲームスタイルついて行く。


 なんで、あれ置いて行ったらワープしてくるのにストーリーでは敵に走って追いつかれてるの? なんなの? わざとやってるの?



 □□□□□□□□□□□□□□□


 しばらく歩いて町まで辿り着いた。

 建物は石と木で出来ていて、中世ヨーロッパのような街並みになっている。人はパッと見で二十人程であまり人口密度は高くないっぽい。赤、青、黄、緑、紫と色とりどりの髪色の人がいる。


 なんていうか、この町並みで看板に武器屋ぶきやとか、宿やどとか、八百屋やおやって書いてあるから違和感しか感じない。

 いや、確かにマークがあるんだよ。武器屋は剣のマークとか、宿はベットのマークとか、八百屋はりんごみたいなマークとかあるんだよ。だけど、日本語の違和感がえげつない。

 読み書きって翻訳じゃなかったんですね。完璧な日本語に見えるんですね。なんか、こう、もっと異世界語が見たかった。見てみたかった。解読したかった。


「一成、これからどうする? 」


 落ち込む俺に蒼は今後の予定を提案してくる。


 異世界だけじゃなくても、衣食住は大切だよね。住は宿を探すとして、いつまでも袋の中身に頼って生活するのはあの神の事だからどうせ五日間程しか生活出来ないようにしてあるんだろうな。となると、やっぱりお金を稼がないといけなくなるから、異世界の定番の冒険者になろうかな。


「いや、とりあえずは泊まる所の確保だな。出来ればその後に、冒険者になって収入源の確保。少しの間なら暮らせるから安全な宿の確保が最優先だな。宿はなるべく安くて妥協できるまで生活環境がいいところがいいな。いつまで続くか分からないから食料は最低限の三食ぐらいでいいか? 」


「そのいいか? はどのいいか? 全部でのいいか? なの? それとも、三食でいいか? のいいか? なの? 」


 俺の提案に蒼は疑問形に疑問形を付けた質問で返してくる。


 多い多い多い多い多い。一人のセリフの疑問形の飽和量を超えてる超えてる。


「全体的ないいか? だな。」


「うーん。その、冒険者ってのがよく分からないんだけどなんなの? 」


 提案を質問で返した蒼に肯定で返した俺に蒼は質問で返してくる。


 やばい自分で考えてて、思った。提案だの質問だの使い過ぎてすごく分かりにくい。


 まぁ、蒼でも分かるように俺は簡潔に答える


「ゲームで言うところの勇者みたいなところだな。クエストをこなして報酬を貰うみたいな制度だと俺は思ってる。」


「思ってるってことは違うかもしれないの? ! 」


「いや、この世界に来たのが初めてなんだから知ってるわけないだろ。」


 まるで初めて知ったみたいに返してきた蒼に俺は冷静に返すとまたも驚いて蒼が返してくる。


「じゃあなんであんなに詳しかったの? ! 」


「そりゃあラノベをたくさん読んでるからに決まってるだろ。」


「まって、らのべってなに? それにらのべってそんなファンタジーサバイバル法みたいなことがかいてるの? 」


「ラノベは若者向けの娯楽小説って言うのが定義だけど、最近の日本語あるあるでかなり曖昧なところがあるけどな。そして、ラノベはファンタジーサバイバル法が書いてある訳じゃなくて普通に物語が書かれてあるんだが、俺が異世界ものが好きってのもあるんだが、その中のジャンルで異世界とかのファンタジー系が人気なんだ。だから、異世界ものの知識をまとめた結果、こんなふうになったんだな。」


 俺は馬鹿げた質問をした蒼に対して、つい少し早口で説明する。


「でた! オタク特有の早口! いつも思うんだけどなんで好きな物を話してる時は全く噛まないの? 」


 これ、全部答えてたら終わんなくなるやつだ。


 俺は蒼の質問を無視して、路線をもとに戻す。


「で、俺が言った条件でいいのか? 」


「まぁ、いいかな。辛かったらすぐに変えればいいし。」


 俺は蒼が甘い考えをしているので適当にナレーションをつけておく。


「この時、蒼は知らなかった。この決断が、後にあんなことになるだなんて。」


「まって、変なナレーションされてるんだけど。」

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