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この世の朝は未だ遠く 〜Zwischen Traum und Erwachen〜  作者: レンリ
一章 三千大異世界

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六十一話 日常……なのか?

最近作者の実力不足がよく現れてるなって思う

努力します。

 なでなで。なでなで。なでなで。


 彼女はとても心地良さそうに目を細めてされるがままにされている。だが、実際は彼女の(ほしいまま)になっているほかない状況だ。


 小動物かな?


 まだ宵も来ていない時間帯で窓から見える恒星(たいよう)は俺の目線から見て60度程を保っている。

 遠くに見える森は青々と生い茂り、近くの石畳が古風な感じを(かも)し出している。

 じっくりと眺めたことがなかったが、ほとんど石で造られている街並みもなかなかに綺麗だと思った。


「もう、イッセイ。どこみてるんですか」


 俺の黄昏は鈴を転がす音で中断される。


 その鈴は意識を向けていないことに拗ねて避難するような、構ってくれないことに対して切なく思っているような、俺の見ていた風景を妬んでいるような、そんないろいろと混じった声だ。


「悪い。ちょっとじっくりと風景を観察してた。まじまじと見たことがなかったんでな。故郷の風景と比べて見てた」


 素直に思ったことを伝える。下手に取り繕うよりもこの方が圧倒的に効果的で信頼される。

 このことも、これからも。


 なんか、セリフが矛盾してたような気がしないでもないけど……。ちょっと? じっくり?


 ちょっと (時間的)じっくり (集中して)だから問題は無いね。うん。


「そういえば、イッセイのふるさとってどんなところなんですか? 」


 日本のことを詳しく伝えても分からないだろうし、この世界に合わせて喋るべきかな。


「あー、まぁ、俺の国基準で言えばかなりの田舎だな。えーっとそうだな、まぁ都会に行けば石や金属でできた建物が建ち並んで、えー、まぁ、なんていうんだ? その、まぁ俺の実家は外では猫が鳴いて、あーそのー梅雨頃にはカエルが泣きわめくところだな。周りには米を作る田があって、えー、それで、なんか、その、学ぶための建物があって、そこに、まぁ15歳までは絶対に通わないといけなくて……」


 言葉を選びながら伝えるがために、つなぎ言葉を連発してしまう。


 あー、でも初対面の女子と話す時いっつもこんなのだし、大丈夫だね!


 ……ほんとうにえ、あーまぁが便利すぎるんだよね。


 カピュアは大半が意味の無い言葉になっている文を熱心に聞き入っている。


 最近気づいたことだが、カピュアの目と髪は同じ緑でも微妙に色が違う。

 髪は光を浴びて透過させている葉のような自然な綺麗さを放っているのに対して、

 目は光を反射させて煌びやかな光と上品な美しさを放っている。


 どちらが良いかと聞かれれば、どちらとも答えられない。お互いにそれぞれ良さがある。


 要約すると、カピュア可愛い! (うん知ってた)


「……あとは娯楽がありふれていたな。あくまでも魔法のようなものを使った架空の世界で敵を倒したり、お化け屋敷で恐怖を楽しんだり、ほのぼのとした世界でのんびりと生活したり、頭を使った遊びもあるな。そして外せないのが、音楽に合わせて一定の動作をする、音ゲーと呼ばれる部類など様々だな。

 まぁ、田舎でも国自体は裕福だったしな」


 かなり抽象的になったが、きっとこの方が伝わり易いだろう。


 うん。ゲームになると頭が活性化するのなんなんだろうね。オタク特有の早口の派生?


「音楽に合わせて……。楽しそうです。いつかイッセイの地元にも行きたいですね」


 うん。異世界へと行ける方法があるなら今すぐ知りたいよ。


 ……ん?


 そういえば空間魔法の進化先の次元魔法に世界間転移があったはずだしそれで行けないのかな?


「カピュア、世界間の転移ってできるか? 」


 もとの世界に未練などほぼないが、僅かな希望をもって聞いてみる。


 だって、ねぇ? カピュアいるし。かわいいし。

 親も夏休み明けることまでは気づかないだろうし、

 オタ友とは音信不通になることも珍しくはないし、

 リア友は心配するかもだけど、そもそも俺の意識だけがこっちに飛んできているっていう可能性も無きにしも非ずだし、

 それをいってしまうとこれがただの夢という説もでてくるし、

 ステータスやらなんやらが理由もなく存在している時点でよく良く考えればおかしな話だし、

 もはや現実じゃない説の方が濃厚になってくるから未練がある方がおかしいよね。


 せいぜいカピュアと一緒にゲームができないぐらい? それもこの世界流の娯楽を楽しめばいいだけだし……。


「できますが、たくさん魔力を使ってしまうのと座標が分からないとかなり厳しいです」


 座標……さすがに地球の緯度経度じゃダメだよね。

 東経135度の兵庫県明石市で日本に行けたりしないよね。

 魔法的な座標はあの世界じゃ知る方法ないし……。


「座標っていうのはこの世界から知る方法とかないか? 」


「あるにはありますが、時間がかかりますよ」


 どうやら話を聞くに、しらみ潰しに異世界を見ていくという方法らしい。

 しかし、俺の想像していたよりも遥かに異世界は多い。軽く三千は超える。


 ……三千世界って本当だったんだ……。常世の闇〜


 それに加えて、地球上でも俺の知らない土地に繋がった場合は俺が現実と認識できないという問題も発生する。


 群馬とか群馬とか群馬とかね。

 想像よりは野性的じゃないっぽいけど。


 …結論。地球とは別れを告げて新たな星で生活しよう!


「まぁ、そこまで未練があるわけでもないし別にいいよ。それに、向こうだと俺一人でカピュアを養っていく財力がない」


 俺は言うが、カピュアは不満そうな納得のいってない顔をする。


「それだとイッセイの御両親にあいさつできないじゃないですか」


 ……なんて律儀。


「いや、それをされると俺が説明できない。異世界からやってきたなんて言っても、向こうじゃ魔法なんてものさえ存在しないしな」


「えっ? それって生活が不便じゃないですか? 」


「それは科学っていう魔法とは対極にある技術のおかげで大丈夫だ」


 考えれば、魔法と科学って似たところがあるよね。

 科学のゲノム操作なんて魔法みたいなもんだし、

 魔法の熱操作だって科学でもできるし。


 まさか似て非なるもの?!

 てことはそのうち魔法の中に科学が出来たりしてね。

 科学が進歩すれば魔法の域まで達するみたいだし。


 単なる事象を起こす経緯が違うだけで同じことは出来そうだね。


「SFみたいなことが実際にあるんですか?! 」


 一歩踏み出して聞いてくる。

 いつも煌めいているカピュアの目が好奇心でキラキラといつも以上に輝いている。声も大きくなって知りたいという欲求が強いようだ。


 君は好奇心旺盛なフレンズなんだね。


 このままだとあと一歩踏み出さられるだけでぶつかってよからぬ事が起きる危険があるので、白状する。


「知ってるかどうかは分からないが、超電磁砲(レールガン)やプラズマ砲は一応実現化されてる。まぁ実際に一般人が使えたりはしないが。

 あとは光学迷彩とかも有名だがまだ実現化されていないのと、実現化されたとしても光を曲げて姿を消しているわけだから隠れている本人にも分からないっていう弱点があるしな」


「そうなんですか……」


 目を伏せて目に見えるように落ち込む。

 今思うことではないのだろうが、俯いてみえる旋毛(つむじ)がとても綺麗だと思った。


 分かるよ。夢だと思ってたものがあるときのワクワク感なんてなにものにも変え難いよね。地球人で言うところの魔法みたいな感じで。


 レールガン程度なら(いなずま)魔法で再現できるとは思うけど。

 ……再現どころか本家作れるなぁ。フレミングの法則があるなら中学生でもできる。


 なんのために撫でていたのか分からなくなったが、喜んでいるカピュアを見るのはとても愉しいので、小一時間ほど撫で続けた。

 そのあと、それぞれの部屋に戻って明日に迫る試験に向けて追い込みをした。

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