四十九話´ 一成視点でみた感動シーン
感動シーン (笑)
そもそも、一成がいる時点で感動は無理なんだよなぁ
部屋に戻ってきたが、あの神は蒼の手を繋げすらせずに帰ったせいで、右手のない状態のままだ。
「蒼、右手ないの不便だろ。手伝おうか? 」
「……一成、私がなんで怒ってるか分かる? 」
唐突! ……ん? これってあれじゃ……。
肯定で答えると 『ならなんでするの! 』
否定で答えると 『察してよ! 』
となる究極の2択では……? (とあるアニメでしてた。)
まぁ、こんな反則的な質問をされたからには反則的な返しをするしかないね。
「蒼が怒ってから気づいたんだが、守りきれなかったことだよな。本当にごめん。」
怒ってからで 『なんでするの! 』を回避。
気づいたで 『察してよ! 』を回避。
ごめんで 『言い訳しないで! 』を回避。
外堀から埋めていく最強戦法だよ (使えるかどうかは知らん)。
「言い訳しないで! 」
しょぼん……。
「言い訳……。謝ったのに……。」
「一成はいつもなに考えてるのかわかんない目も気持ち悪いし!
オタクなとこもキモイし!
男なのに女子みたいにしてるとこみてるとウザッてなるし!
ふざけてばっかなとこも面倒くさいし! 」
珍しく悪口言ってるね。ストレスかな? ストレスが溜まると人や物に当たりたくなる人だっているし。
コメ欄でもたまにそういう人いるし。
「ストレスでも溜まってるのか? 話を聞くぐらいならするが。」
「はぁぁ、ウッザ。一成なんかが聞いてなにになるの? 力になれるとでも思った? バッカじゃない?
いいように使ってただけなのに力になれると思うなんて笑わせないで!
あんたなんか友達じゃない! ただの荷物持ち! 」
最後の方は声を大きくなっている。そこまで強調したいのだろうか。
ぐ、ぐは! 友達じゃない……だと?
なんていうか、全く心が傷つかないよ?
それ以前に隠しきれる女子って……。感心して関心を持ったね (つまらない)。
「そんな風に思われてたのか……。女子って凄いな……。」
俺は思わず感嘆の声が漏れる。
「あんたの顔なんてもう見たくない! 出てって! 」
「いや、でもそれだと――」
俺が出ていくと、この部屋の稼ぎが辛いと思うんだけど (冷静)。だって蒼は大猿の賞金も豪遊してたし。
「なんでもいいから出てって! 」
とりあえずは言う通りにしておこうかな。
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ノックの音が聞こえる。
「イッセイ、聞こえますか? 」
「あぁ、聞こえるが。どうかしたのか? 」
今少し荷造りで忙しいんだけど、カピュアの可愛さで許す!
「イッセイは、これからどうするんですか? 」
これから……。もしかして、蒼に出てってって言われたこともう伝わったの?
……てってって……。
「これから?
あぁ、俺一人なら少ない稼ぎで生活できるからな。底辺冒険者として生きていくつもりだが。」
正直言うと、1人じゃ稼ぐ自信が無いよ。でも、ストーカーの言う言葉からすると、次にカピュアと絡んでたら間違いなく俺が殺される。そして、そうなるとカピュアが悲し……悲しむ……?
俺が死んだらカピュアは悲しんでくれるのだろうか……。最悪の状況があまりにも悲しいからこれ以上はやめておこう。うん。
「そこに私もついていってもいいですか? 」
「いや辞めた方がいい。俺はカピュアを守れない。実際、蒼を守りきれなかった。前衛であるのにだ。
諦め…ではないが、俺よりも強くちゃんと守ってくれる人なんていくらでもいる。そんな人とパーティを組んでくれ。
所詮は一般人の…一般人以下の俺だ。選ばれし者でも勇者でも英雄でもない。
悪いことは言わない。そんなやつと同じパーティなんてやめておけ。」
少し、言い方がキツくなってしまった。
でもこれでカピュアが悲しまないなら……。いや本当にごめんなさい。カピュア、ごめんなさい。
「……イッセイ、私は人を励ますいい言葉を知りません。なので思っていることを素直に言います。
イッセイが守れないなんて思いません。」
「これが俺以外の人なら当てはまったんだろうな。だが、俺の場合は何も違わない。俺は弱い、ただそれだけだ。」
過去に友達におかしいって言われたけど、俺は2次元でも自分より相手を優先するんだよね。推しキャラの場合は。
課金はしないって決めてたけど、アイテムを渡すためには何度も周回して周回して、休日を潰したんだよね (オタクあるあるであると信じたい)。
「どこが弱いんですか。一人でバキッキールを倒したじゃないですか。なにがそんなにイッセイの自信をなくす原因になってるんですか。」
「あれは単なる偶然だ。読みが当たったのと、蒼とカピュアの助力……いや、主力あってこそだ。」
「そんなこと無いです。私は知ってますよ、イッセイが強いってことは。」
ひとつ言わせてください。
俺の自我確立方法は否定でしてるんだよ。
みんなが俺は○○ができるから俺なんだって所を、○○ができないから俺だ。と言うみたいに。
こんな考え方になったのは過去のいじめだけど、今となっちゃいい思い出だよね。だってメンタルかなり鍛えられたし、今まで以上に異質になれたし。なにより、そんときの相手のセリフをネタにできるし。
「あまりこんなことを言いたくはないが、あって数週間で分かるのか? 」
「それは、私がイッセイのことを知らないって言うんですか?
……確かに何も知りません。ですが、イッセイが優しいことは知っています。その優しさを自分に向けてください。」
「俺は優しくなんてない。極度に自分の利益を優先するだけだ。自分勝手な人についてくる必要は無い。」
こんなことは思ってない。けど、カピュアの幸せのためなら命だって投げ打ってみせる。そうある日なんとなく誓ったから (なんとなくでそんなこと誓うな)。
「確かにイッセイは自分勝手かもしれません。」
「そうだ。俺は自分勝手だ。そんな性格の悪い俺についてくる必要はない。」
「確かにイッセイは性格が悪いかもしれません。」
「かもじゃない。悪いんだ。」
「そんなこと、私には分かりません。出会って数週間しか経ってませんから。」
俺の言った言葉を利用されたことに、思わず息を呑む。
「なら、そいつにそこまで尽くしてやる義理はない。」
先程の動揺とこれ以上は言いたくないという気持ちにサンドイッチにされて自分の声が少し震えている。
……イッセイサンドイッチ。……ジェル……。
「ですが、私は一生懸命知ろうとしてます。アオイさんに聞いて、イッセイの行動をよく見て……。それでも足りないって言うんですか! 」
感情が昂ってしまったであろうカピュアは声が大きくなっている。
「そうだったのか。」
「それでも知らないって言うなら、イッセイから教えてくださいよ! 知らない分からないって言って突き放そうとするなら、ちゃんと教えてください!
それでもダメって言うなら、納得できる理由を教えてください! 」
少し沈黙する。ここで一度思考を落ちつけてまとめる。
「なら、俺といると不幸になる。俺と居れば傷つくのはカピュア自身だ。」
「知らないって言ったあとは、今度は不幸になるって言うんですか!
不幸か幸福か、誰が決めるんです? そんなの私が決めるに決まってるじゃないですか!
私にとって、1番の不幸は……。」
躊躇いか、単なるタメか、僅かに無音が生まれる。
「1番の不幸はこのパーティを失って、イッセイと居られなくなることです! 」
その言葉に思わず声が漏れる。
そんなに思ってくれてたの? 神なの? 天使なの?
……論破しようと思えばできないことは無いけど……。カピュア相手に論破は本意じゃないなぁ。なら、やめとこうかな。
何故か重い空気になった。
ま、俺にこんな空気、あってないようなものだけどね。
「俺がいてもいいのか? 好きな人に勘違いされるだろ? 」
だって、ほら。カピュアって好きな人いるっぽいし……。泣きたくなったし。
「大丈夫です。イッセイがいてくれると私も嬉しいですから。
……それよりも、その……。
あれだけ言っておきながら不安なんですけど、私邪魔になっていませんか? 」
これは、笑ってしまった。
あれだけ励まして、そこに自信ないのは謎だって。
もう直接言った方がいいよね。
「扉を開けてもいいか? 」
「えっ? あ、はい。いいですよ。」
微かにバタついたような音が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。
ドアが半分まで開いて、しっかりと視線と視線が交差してから口を開く。
「逆に聞こう。俺が1人で生きていけると思うか? 」




