四十五話 やっぱり俺たちはこうなるんだなって。
7日後に告白する朝霧一成
1日目。
なんで俺告白することになってるの?
今日はカピュアと料理。ここまで辿り着いた経緯が謎すぎる。
記憶を辿ってみる。蒼がお腹すいたーとか言い出して、早く食べたいから2人で作れと。
よくこれでカピュアにバレなかったよほんと。
力技でつなぎ過ぎ。もっと自然にナチュラルに。
スラーで。フェルマータで。 (地理は出来なくても音楽はできる一成。尚、英語は苦手な模様)
包丁を使えない俺は、加熱と味付けに徹している。半袖になったカピュアに油がとばないように細心の注意を払いながら。
半袖になったことでよく見える、俺よりもきれいな白い腕。
ねぇ。女子に白ッ!綺麗!って驚かれた俺よりも白いって何事?
「イッセイ、そこのニンジン取ってください。」
この世界にもニンジンってあるんだね。小さい子が食べられない野菜代表が……。
俺ができるだけ少ない面積で、だが安定した持ち方でカピュアに渡す。
それを何も気にしないように受け取るカピュア。
ねぇ、渡す時に手と手が触れ合うんですけど! 手と手が合う〜瞬間なんだけど!
カピュアは気にしてないの? 俺を異性として見てないの? それとも信頼しきってるの? なんなの?
それに他に渡す時にも当たったんだけどわざとやってる?
……さすがにそんなことはないか。偶然だよね! ね!
そんなこんなで料理が完成した。
……うん。こんなので距離が縮まるとでも?
天然なカピュアにこんなの伝わるわけないよ。ていうか、天然って異性を異性として意識しない気が……。
これ以上はダメだ、うん! 考えないようにしよう。そうしよう。
次の作戦
蒼が2階からたくさんのパンが入った箱を構えている。そして、その下にはカピュア。
パンを落としたら許さないよ? カピュアに攻撃は極刑に処すよ?
俺の心の中の抵抗虚しく、蒼はパンをばらまく。
「あっ! 」
声を漏らしながら。
ねぇ、芋けんぴしろとでも? できるわけないでしょ。精神的にも物理的にも生理的にも!
カピュアの髪に触れるとか恥ずかしさで燃え尽きる。
……食べ物を無駄にしちゃダメでは? せっかくの稼ぎが……。
そして、パンが髪に付くわけない。
俺の予想に反して、数あるうちのパンのひとつがカピュアの髪に引っ付く。乗るのではなく引っ付く……。
フラグっちゃった? ねぇ!
「なんで、空からパンが落ちて来たんですか……。」
カピュアは上を見上げてキョトンとしている。
カピュア、上からだけど空じゃない。
「大丈夫か? 」
「大丈夫ですけど、なんでパンが……? 」
「どうせ、蒼が夜食のために溜め込もうとでもしてたんだろ。」
蒼に罪を着せながら、カピュアと一緒にパンを拾う。
「床に落ちてますけど大丈夫でしょうか。」
「光魔法とかで何とかできないのか? 」
「浄化していますけど、食べてもしなにかあったらと思うと……。」
「念の為に蒼に食べさせるか? 蒼のまいた種だしな。」
「撒いたのはパンですけどね。
……どうですか? 」
カピュアは小首を傾げて聞いてくる。
ねぇ。神! 死ぬ! 尊い! 以上!
「俺は評論家でも師匠でもないんだが? まぁ、良いとは思うが。」
俺のせいでカピュアがネタに染まってきたの?
「そうですか、ありがとうございます。」
一通りパンを集めきった。
うん。するべきかな。
俺はカピュアの髪に手を当てる。
え、やばい。ものすごく肌触り良い。髪と髪の間にスっと指が通っていく。これで布とか織るとかなり高級なものになりそうなぐらい良い。
一生触ってたい。
「えっ、あ、その……。」
まぁ、急に髪に手を当てられたらそうなるよね。
なんで俺こんなことしたんだろう。
もう引き返せないのでパンを取る。
あれ? なんかカピュア目を閉じてない? 気の所為? 俺の幻覚? それとも光の錯覚? 錯乱中?
「髪にパン、付いてたよ。」
ここは原作再現で口調も合わせて、一口食べる。
実を言うとかなり笑いかけてる。口角が少し上がってるかもしれない。
だって! 髪にパンが付いてるっていうパワーワードいつ聞くの? それを実体験してるんだよ? 笑いそうになるよね普通は。
カピュアは瞼を持ち上げる。そして、目を丸くする。
「髪にパンって付くものですか? 」
「俺だって聞きたいんだが。」
「それ、本当に付いてたんですか? 」
聞いてはいるが、疑いではなく驚きや確認の意味が強いように思える。
「俺の目が節穴じゃない限りは付いていたな。少なくともそう見えたんだ。」
「……。」
少しの沈黙が起きる。そして、カピュアが口を開く。
「……そんなもの食べなくて良いですよ! 髪の毛に付いていたものなんて汚いですから。」
これが普通の反応なのだろうか。 (考察と悪口 (特定の人を言うのではなく集団や概念に対して)のときは口調が喋りと同じになる。)
「いや、実はこういうネタがあってだな。」
「そうだとしても、イッセイは食べなくて良いです。私が食べます。」
カピュアは俺のかじった (原作再現のためにちぎらなかった)パンを略奪……貰いうける。
「これは私が食べますから。イッセイは他のを食べてください。」
「でも、それは――」
「でもじゃありません。」
せめてかじった部分をちぎらせて?
そう言いたいがカピュアは確固たる己を持っているため、人の意見に流されない。
これが蒼なら人の話を聞かないって言えたけど、カピュアだからね。悪口を言うなんてもってのほかだね。うん。
……うん。が便利過ぎる。
「もし食べてなにかあったらどうするんですか! 」
先程の大丈夫でしょうかよりも声が大きいように聞こえるのは気のせいだろうか。
「いや、だからせめて――」
「せめても何もないです。食べちゃダメです。」
カピュアはそう言って時空を歪ませて、その中に収納した。
そして、この日の夜。なんで無理やりにでも奪わなかったんだろうかという後悔が俺を襲い、罪悪感で満たされた。
そういや、魔力回収こなかったなぁ。
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2日目
今日も蒼様のためにご朝食をお作りする。
ゴットフリート料理長は今日もお美しい。しかしずっと見惚れているわけにもいかず、愚生は職務の完遂に向けて今日も尽力する。
ここで、とある事件が起こってしまう。
めんどくさいし、敬語やめた。
何があったかと言うと、カピュアの服にトマトケチャップが付いた。比喩的なケチャップではなく、物理的なトマトケチャップ。
なんだろう。比喩的なケチャップに見えてきた。殺意湧いてきたね。
「ちょっと着替えますね。」
「ん? え? は? 」
カピュアはしっかりと危なくないように包丁を置いてから、左手を水平に伸ばす。その手の先に赤い魔法陣が展開される。
その魔法陣は横からカピュアを透過して、右まで移動する。
魔法陣が消えると、真っ白なワンピースに身を包んだ、美しい系と可愛い系を両立しているカピュアがいる。
ん? なにこれ?
「着替えの魔道具があるのを思い出したので、使ってみました。」
「それは分かるんだが……。なんでその変s…着替え方法なんだ? 」
「私にも分かりません。魔道具にもたくさんの種類があるので……。」
それは分かった。なにかの変身シーンに似てたこともある程度は納得できた。
けど、ワンピース白くない? カピュアが輝いているのはいつものこととして、ワンピースですら少し発光してるように見えるんだけど。
「にしても白いワンピースだな。」
「これですか? 着る人によって色が変わる服です。
純粋であればあるほど白く、不純であればあるほど黒くなります。
……今の私なら黒くなると思ったんですけど、なりませんでしたね。」
つまり養殖女子キラーと……。
カピュアが不純だったら製作者に殴り込みするよ?
誰にとっての純粋不純なのかが分からないけど。
「触ってみますか? 触るだけでも効果ありますよ。」
カピュアは袖をひらひらさせる。
「俺は物の凹凸が分からなくなるぐらい黒くなりそうだからやめておいてもいいか? 」
「そんなこと言わずに試して見てください。」
カピュアが手を引いて袖に当てる。すると、その場所が光り輝く。そう物理的に。
なんでこんなになるの? ていうか、眩しい。
目に危なそうな光だったので、直ぐに離す。
「さすがイッセイですね。」
「これ壊れてないか? 」
おかしい。俺の心は不純たっぷりなはずなのにね。
カピュアが不純なわけじゃなくて! カピュアに対して考えてるってことが不純ってだけだからね?
「一成がそうなるなら、私も白くなるかも? 」
名案みたいに言ってるけど、それはないと思うよ。だって蒼って女子 (現実)の具現化みたいな人だもんね。
カピュアは女子 (理想)の具現化。
蒼が輝いた方とは逆の袖に軽く握る。
途端にカピュアの服が黒く汚染されていく。まるで白い水に黒い絵の具を落としたような、渦巻いた不思議な模様が多くなっていく。
「それ以上カピュアを汚染するな。」
「なんで?! 私だって純粋なのに。」
そんなの分かりきってたことだよね? まぁ、俺が真っ黒にならなかったのが謎すぎるけど。
「少なくとも純粋な人は自分で純粋って言わないんじゃないですか? 」
カピュア。正しい。俺もそう思うよ。
その理論でいくと、カピュアとイッセイ (他人事)が純粋なことになるね。
俺が純粋なことに納得いかないんだけどなぁ。




