四十二話 オススメ巡りはデートに入りますか?
この低クオのために数週間待たせたのか
俺は思いついたとある案を脳内で疑似体験してみる。
特に問題はないかな。
……これなら、いける!
差し出されたパン (仮称)を手で掴んで受け取る。
「ありがとな」
「どういたしまして。」
あっ。これもとからあ〜んとかって考えずに受け取れば良かったじゃん……。
カピュアと一緒にいると、時々冷静な判断が出来なくなるっと……。覚えとかないと。
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「あのパンのせいでかなり時間を取られたな。」
「固かったですけど、美味しかったですね。また食べませんか? 」
「今度は普通ので充分だ。」
あの堅パン (仮称)を体感で小一時間程かけて何とか食べきった俺たちは、オススメ巡りを再開した。
食べている途中に耳にしたことだが、あの階段を恋人同士が通ると仲が深まるらしい。
……それってそれを意識させて思い込ませることでお互いを意識させ合う、一種の洗脳じゃないの?
人の恋愛にとやかく言うつもりはないけど。
次の場所は本屋だ。
あ、これが一番マシかもしれない。今回のおすすめの中で。
やっぱり恋愛スポットがなくなったのかな。
「あっ、|全滅した吸血鬼の生き残り《ぜんいき》の新刊って出てたんですね。」
カピュアは小さく声を漏らして驚いている。
え? なんて? ぜんいき?
「なんて言ったんだ? 」
「すみません。私が言ったのは 【全滅した吸血鬼の生き残り】、略して 【ぜんいき】のことです。面白いですよ。」
ねぇ、タイトルあるあるだとは思うけど矛盾してない? 全滅したの? 生き残ったの?
「どんな話なんだ? 」
「ネタバレをしないように言うと、
吸血鬼は世界からいなくなったはずだったんですよ。ですが、主人公には何故か吸血鬼の力が宿っているんです。しかも主人公は学生なので、周りにバレないようにしながら学園生活を送って行くというローファンタジー系の小説です。色々なハプニングに見舞われるんですがそれを解決していったり、時々みせる吸血鬼要素がかっこいいんです。それに、たまに伝承や神話などがネタとして使われているので面白いですよ。」
カピュアが生き生きと話す。
分かるよその気持ち。好きなものを話す時ってどうしても早口になるよね。しかもそんときは絶対に噛まないっていうね。
オタクの七不思議に任命しようよ。
他にも推しに関しては絶対の記憶力を誇るっていう不思議もあるし。
「確かに、面白そうな小説だな。絵で決めるのもどうかとは思うが、挿絵ってどんな感じなんだ? 」
表紙は基本的にシンプルな色で統一されているため、カピュアはめくって口絵の部分を見せてくれる。
そこにある絵は実写的でもなく、かといってファンタジックすぎる絵でもない。ちょうど俺が描けるようなよくあるラノベの画風だ。
「この主人公らしき人。かっこいいな。」
黒い服に赤い血液らしきものがものすごく映えてる。かっこいいとしか言えない。
「ですよね! 良かったら貸しましょうか? 家に全巻あるので取って来れますよ。」
「他に良さそうな本がなかったらでいいか? 」
「はい。」
良かった。カピュアの私物を借りるとか汚れとかつかないように細心の注意を払わないといけなくなるし。
俺はなにか良さそうな本がないか探してみる。
この本屋で探す感じになんとも言えない楽しさがあるんだよね。なんか、宝探しみたいじゃん?
タイトルでいいと思った本を軽く開いてを繰り返す。
・時間逆行の謂れ
・鉄の丘の真なる英雄
・義務と権利の最強勇者
・過去の差別と英雄達
・ビルガメス叙事詩
・魔女と言われた魔法の祖
……この辺は神話とか伝承が多いのかな? まぁ? 1つ現代人が書いたと思われるパクリのようなものがあるけど。
もっとなんか、シリアスでほのぼのしてるファンタジーはないの? この伝承も面白そうだけど。
歩き回って他のものも探してみる。
・異世界戦記
・科学戦争で魔法の俺は案外無双出来ないようだ。
ここはifの戦争系かな。
・第一次空想魔法大戦
俺に電流が走る。
これ、絶対面白い。名作かなって時は見ただけで直感が発動するし。今がそれだもん。
みょんな胸騒ぎがするが気にせず本を手に取る。
温かく柔らかいもちもちとした感触がある。
ねぇ、おかしくない? 本ってもっと違う感じのはずだよ?
「あっ、ごめんなさい。」
温かいものがピクリと動く。
……。
ソレは逃げることを諦めたようで身動きをしていない。
「あの、イッセイ? 」
……呼びかけられてようやく思考力を取り戻す。
「あぁ、悪い。」
慌ててソレから手を離す。
ねぇ、ダメだって。不意打ちでこの天使と触れ合ったらダメだって。
同じ本を取ろうとして指と指が当たるとかさ。なにこのラブコメ的展開。テンプレを通れなかったけど!
蒼はこのことを狙って本屋にしたの?
「悪い。少し放心状態になってただけだ。御放心してくれ。」
こんな時にだけ直感スキルが発動しないってなんなの? (発動しているが、本人が気にしてない模様)
「放心をかけて言えるほどの余裕はあるんですね。なら安心しました。」
「よく気づけたな。放心で気にしないなんて普通思うか? 」
「イッセイの事ですから、そうかなと思いますよ。
それより、私が買いましょうか? 」
「いや、俺が買う。カピュアも欲しい本があるだろうしな。」
それに、うん。ずっと貸し借りの関係を続けたくないし……。喧嘩別れしそうだし……。……特にハーフエルフと。
「それならまだもう少し買えそうですね。」
カピュアは店の奥まで行って何冊か……いや何冊も取ってくる。
うん。わかるよその気持ち。あれだよね。
新刊情報を手に入れてないとかお金が足りなかったとかで買えなかったやつだよね。うん。よく分かる。
ラノベとかでよくある。めちゃくちゃ好きとかじゃなくて、面白いなぁレベルで良く起こるやつ。
この後は俺もファンタジー系の小説を三冊買って、カピュアは買った本を空間魔法で格納した。
空間魔法便利だなぁ。俺も練習したい。
……さすがにもうオススメスポットないよね?
頑張って意識しないようにしてるけど、これって男女2人で店を歩き回ってるわけだし、凄い緊張するし、カピュア可愛いし、時々心臓が死にそうになるし、カピュアが可愛すぎて死ねないし。
忘れかけた時に出てくる緩カールが可愛すぎる。
「次は――」
「いやまだあるのか? 」
「はい。後2個ありますよ? 」
「そうなのか。」
「もしかして嫌ですか? 」
「嫌じゃないな。己のフラグ回収能力に驚いただけだ。気にしないでくれ。」
思い出したように言い出すカピュアに俺が反応する。そのことでカピュアは勘づいたように聞いてくる。もちろん俺は否定する。
うん。もはや考えるだけでフラグ回収できるんだね。うん。
一回卓球の試合でふざけて友達と、「決勝で会おう」とか言いながらグータッチすると、友達は初戦敗退したから能力は認めてるんだよ。
こんなフラグって発言して立つもんじゃん。ならもうわかりやすい死亡フラグ立ててみる?
俺、このカピュアに告ることが終わったら結婚するんだ (気が早いにも程がある)。
次は……よくネタ切れしないね。うん。
恐らく俺たちが運動練習してた時に探したんだろうけど、一日でよく見つけられるよね。
もしかしてその道のプロかなにか?
彼氏いるような発言ないのに?
あれかな。出来たときの為にこういうのよく調べるのかな。
……まずは彼氏を作る努力をした方が……。
話を戻そう。次は公園だ。
……なに? 同居してるのに公園で話せと?
それか遊具で童心に帰って精一杯楽しめと?
「公園はとうとう意味がわからないんだが。」
「…そうですね。どうしますか? 最後の1つが残ってますけど。」
ねぇ。カピュアも飽き始めてない?
「とりあえず行くだけ行ってみようか。」
「分かりました。」
なんか、俺が強制したみたいになってないよね? 大丈夫だよね?
ということで最後の1つに行くことにした。
最後のところはかなり見慣れているところだ。
見慣れてるっていうか、もはや生活してるんだけど?
なんでオススメスポットで|自宅(借り物)が出てくるの? お家デートしろと?




