四十話 オススメ巡り
おかしい。大喜利大会に誰も参加してない……。
「イッセイ、私なんかに魔力を無駄遣いしないでください。」
何故だろう。説教されてるはずなのに、お願いされてる?
「そうは言ってもな。短剣を持っていなかったから仕方なくしたんだ。」
俺は必死に弁明する。
現在の状況を簡潔に説明すると、ベッドに腰掛けているのがカピュア。その正面で正座しているのが俺。
ちなみにカピュアはスカートである。
「私のために魔力を使ってくれるのは嬉しいんですけど、魔力は無限じゃないんです。」
「休憩すれば回復すると思うんだが。」
「それはそうですが。今日はもう魔法が使えないじゃないですか。」
でもなぁ。カピュアが運動したいって言ったんだもん。その想いに応えるしかないじゃない!
「カピュアの為だったんだが……。仕方ないか…。」
カピュアは自分の為と言われたことが嬉しいのか足をパタパタさせる。
やめてください。スカートで座ってる状態で足をパタパタさせるとスカートの中身が見えそうなんです。
俺は本能に必死に抵抗してカピュアの顔を見つめ続ける。
待って。これはこれでかわいすぎてニヤけそう。やばい。詰んだ? ねぇ詰んだ?
舌を噛んでにやけるのを防ぎながら、じっと見つめる。
「私の為に……。」
カピュアは俺の言ったことでうっとりとしている。
毎回思うけど、愛が足りない環境かなにかで育ったの? その分俺が溢れんばかりの愛を注ぎ込んであげた方がいい?
カピュアはハッと我に戻り、話す。
「とにかく! 魔力の無駄遣いはしないでください。分かりました? 」
ここまで必死にお願いされるともう反抗できるわけないよね。それがカピュアっていう神の言葉ならなおさらだよね。
「分かったが、寝る前の投影とかはいいよな? 」
「私が帰った後で寝る前に魔力を使うならいいですよ。」
寝る前の交換は許された。
これで空間魔法に収納して飛ばすからアーチャーって言えるよ。アーチャーになったことを後悔だけはしないようにしないとね。
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次の日……。
「イッセイ。今日は精一杯楽しみましょうね。」
隣を歩くカピュアはこちらを向いてとても明るい表情で言う。
「まぁ、蒼のオススメならある程度は信頼できるだろうしな。」
こんな事になった理由としては、いいと思ったところを蒼が見つけたから二人で行ってみてということだ。
うん、どういうこと?
3つぐらい言いたいことあるけど言っていい? 言っていいよね (圧)?
1.カピュアがcute
カピュア is cute.
2.カピュアがcuter
カピュア is cuter than 蒼.
3.カピュアがcutest
カピュア is the cutest in the world.
世界で一番になっちゃったよ。
……正しいけど。
ここまで言うのにはある理由がある。
なんかいっつもこんだけ可愛いかわいい言ってる気が……。でもまぁ、それ以上に理由があるから。
それは、カピュアの髪が緩いカールになっているからである。
かわいすぎる! いつもとは違った新鮮さがよりかわいくしてる!
最近オシャレに目覚めた?
かわいすぎて人目のある場所を通らせたくないんだけど。他の人に見せるにはもったいなさすぎる!
「ところで、今日はもう狩りには行きませんよね。」
「予定はないが、どうかしたのか? 」
「た、楽しんで疲れきった後に狩りに行くのは少しつらいかなと思っただけです。気にしないでください。」
「それならいいんだが。」
なんか気になるなぁ。少し焦っていたみたいな感じもあったし。まぁ、言いたくないことかもしれないし余計な詮索はやめとこう。うん。
少し歩くと目的地と言われたところに辿りつく。
この…朝霧一成が…迷わなかった…だと…!?
一つ目のオススメの場所は噴水のある広場だ。
あの、アオイ=サン。俺たちのことをカップルかなにかだと勘違いしてません?
水面で日光が反射してキラキラと輝いている。水底の星は色とりどりに煌めいている。
通貨のことを星って表現したのは痛いかな?
「綺麗な噴水ですね。そういえば、ここにコインを投げ入れると願いが叶うっていう伝承がありますよ。試しにやってみますか? 」
「ちなみにコインっていうのはいくらぐらいなんだ? 」
カピュアがかわいすぎていくらでも課金しちゃいそうだから、今のうちに聞いとかないとね。
「金額は関係ありません。大切なのは込める願いの強さらしいですよ。」
「そうか。」
財布から銀貨を取り出して、強く願いながらコインを投げる。
カピュアが幸せに暮らせますように!
カピュアが幸せに暮らせますように!
カピュアが幸せに暮らせますように!
……ついでに受験に合格しますように!
高校二年の夏に受験祈願はさすがに気が早いかな。まぁ、先輩の分だと思えばいっか。
後はカピュアがこれ以上かわいくなりますよう……それはいっか。これ以上かわいくなると、本当に俺の命が危なくなるからダメ。
カピュアも目を瞑って、強く願っている。
これの願いを聞きたい。そして叶えたい。だけど気持ち悪がられそうだし……。
心の葛藤のうちに、
「次に行きましょうか。」
とカピュアに促されて次の場所に行く。
次は綺麗なアクセサリーを飾ってある店。
カピュアは目を輝かせて近寄っていく。
光を受けて輝いている宝石を手に取って、日光を透かせて眺めたり、お店の人に許可を取って身につけてみたりしている。
なんでここを選んだの? そろそろ蒼のセンスを疑うよ?
カピュアが楽しんでるからまだいいけど。
宝石をみて楽しんでるカピュアかわいい。
……なんか略し方ないかな。カピュアはかわいい。
カピュかわいい? いやもうカピュいいかな。いっその事、カわいいでもいいかも知れない。
何もせずにひたすら眺めてるのも楽しいが、せっかくなので四角くカットされた赤い宝石を見てみる。
長方形の面の周りに台形の面4つがあり、それが広い面と広い面でくっついた形をしている。
見た目って言うよりかは実用性重視なのかな?
宝石によっては宝石魔術なんていうものも使えたりするらしいし。
「これを使えば魔法が使えたりするのか? 」
「それもありますが、やはりアクセサリーとして身につける人も多いですね。」
きらびやかな宝石を至る所に付けたカピュアが答える。
宝石よりもカピュアが輝いて見えるのは気のせい?
「やっぱりそうなるのか。」
宝石が置いてあったところにある説明書きを読んでみると
『この宝石は軽く魔力を流して衝撃を加えると爆発する。』
なに? ニトログリセリンなの? 20センチ上からネズミが落ちたら爆発するの?
ていうか、ここの重力って地球とどのくらい違うんだろ。
……ニトロのことを考えるとホスフィンが出てきたんだけど。
簡単にホスフィンを説明すると、やばい物質のハッピーセットである。
だってそうとしか言えないんだもん。
常温で酸素と反応して自然発火するし、
無色なのに腐った魚の臭いがするし、
吸い込んだだけで昏睡or死亡だし、
色々な物質と反応してすぐに爆発するし、
空気より重いから地面に沿って遠くまで広がるし、
その広がった状態でどこかが燃えると一気に爆発するし……。
これが水素化リン (リン化水素)H₃Pの実力なんだよね……。野生の青酸カリなんかよりもかなりやばいよ。
後で固体のホスフィンが交換できないか試してみよ。
取り扱いにはかなり注意しなきゃだけど。
俺は念の為にそっと戻してから、カピュアの試着?が終わるまで待つ。
カピュアはしばらく楽しんだあと、半透明な灰色の宝石を数個買って来る。
「ごめんなさい。つい夢中になっちゃいました。」
「それは大丈夫だ。それより、三つ目の場所はどこなんだ? 」
「えーと、確かパン屋さんだった気がします。」
なんでパン屋? パン屋は恋人同士でも行かないよ?
少なくとも読んだことのある恋愛小説ではなかったよ?
……なんか、恋人同士になるように思考誘導された気がする。
噴水と宝石店のせいかな。
「蒼のセンスを疑うんだが。」
「行ってみましょうよ。きっととても美味しいんですよ。」




