4■話 魔帝の懺悔
「今日はみんなに集まってもらってすまないな。
実は今から勇者討伐への編成をするつもりだ。」
黒いフードを被った俺は集まった者たちを一望する。
「ところで、カイラがいないようだがどうかしたのか? 」
「アンラ様。カイラは今日はあの日です。」
俺の質問に対して、ある女性が代表して答える。
「そうか。そうだったな。となると、カイラは除外か。
……俺なりに戦いに参加して欲しい者がいるんだがいいか? 」
俺は二人の名を呼び、その二名は快く引き受けた。
「なら、他の者たちはその二人をできるだけ鍛えてやってくれ。今回は人数を相手に合わせる必要があったんだ。許してくれ。
いつも言っているが、暇な時間があれば周りを手伝うか、精進するようにな。」
あぁ、これで今日も仕事は終わりか。
こんなことをして、意味がないのは分かっているつもりだ。
初めは人族の王。次は貴族。そうやって何人もの命を奪った。
慈悲はないのかと叫ぶもの、悲しみにくれてただひたすらに泣くもの、なかには魔族だって人だって分かり合えると言ったものも居たな。
だが、人を信じることの愚かさを教えてくれたのは他でもないお前らだろ。
……なんて、格好つける意味なんてないよな。
確かに人を信じるのは辞めた。だが、あの時の俺に言えるのなら、
「やめておけ。後悔しかしないぞ。」
と言いたいな。
まぁ、怒りに満ちた俺がその言葉を素直に聞き入れるとは思えないがな。
この殺人行為を始めたのは彼女がきっかけだったな。
彼女は変わっていた。もちろん人族ではなかったという点では俺もだが。
彼女とは幼いころからの付き合いだった。そんな彼女はあまりにもふざけた理由で殺された。
思い返すと今でも怒りが沸いてくるよ。
その時、俺は無力だった。おもしろいくらいに弱く、人を…人に対して信じていたいという気持ちが強かった。いや、それ以前にあんなことがあったから疑いたくなかったんだな。
彼女が殺された、と実感したのはいつも隣にいたものがなくなった虚しさからだった。
実感した途端にあの人間を今すぐにでも殺したいと思った。
ここまで思ったのは、無意識のうちに彼女のことが好きになっていたのだろうな。
……非常に認めたくはないが。
無力なままではダメだと気づいた時、俺はこれまでに経験したことのないほど努力をした。日々が死と隣り合わせだった。
振り返ってみると、その頃は目標に向かってひたむきに努力をしていた。
……と言えば聞こえはいいが、実際は周りを一切見ずに突き進む暴走馬車のようだった。恋は盲目と似たような感じだな。
修行期間に止めようとしてくれた者はたくさんいた。
それほどにも俺は彼ら彼女らにとって大切な存在だったのだろうか。
俺なんて無駄な命を奪うために努力をしていた愚者だと言うのに。
なにも成し遂げることのできなかった、夢を口にするだけのペテン師だと言うのに。
話が逸れたな。
無駄な修行を積んだ俺は、視野の狭いまま何人もの命を奪った。
それが最初に話した王や貴族だ。
何回か行ううちに頭が冷えたよ。
もとは彼女の復讐のつもりだった。しかし、彼女は死ぬ間際にそんなことを言い残したか? 彼女はそのようなことを願ったか?
答えは否だ。
勝手に彼女の復讐だと思い込んで。勝手に彼女のためと決めつけて。私刑を正当化させて。
だが、ここまで進んでしまった以上もう、後戻りは出来ない。
自らを悪として悪を裁くヒーローのようなものと思って。自分は悪ぶった正義なんだと己に言い聞かせて。
後戻りをしては奪った命が報われない。
自殺も考えたが、死んで償うのは償いじゃない。そもそも俺の命じゃ、俺の罪とは釣り合わない。
だからこのままの道を進む。
たとえそれが誤った道だと分かっていろうとも。
たとえそれが神に…世界に刃向かうような、茨の道だとしても。
一度決めたことは貫き通す。それこそが、俺の贖罪であり信念だからな。
……分かっていた。いや、分かっていたつもりだったんだがな。人は善にも悪にも成りうる二面性を持った生き物だってことぐらいは。
もし奇跡が起きて、また記憶を持って生まれ変わったら。その時は、今度こそは、もう一度、信じてみようか。
後は、彼女への告白かな。
……きっと拒絶されるだろうが。




