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この世の朝は未だ遠く 〜Zwischen Traum und Erwachen〜  作者: レンリ
一章 三千大異世界

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三十二話 シュウルト戦

ゴールデンウィーク(4/29から5/5まで)は毎日投稿しようかな。

 俺がシュウルトに向かって駆け出すと、後ろからある程度の弾幕が後押ししてくれる。


 ほら、後ろから撃たれてる。だから嫌だったんだよなぁ。


 シュウルトに弾が当たって、こちらの存在に気付く。


 匂いで分かってたはずだけど、来ないってことはあまり好戦的ではないのかな。だとしたら戦いたくないなぁ。


 銃弾の傷は浅いのか、素早く動いて飛んでくる銃弾を少しでも避けようと逃げ回っている。


 ん? なにか戦いたくない理由でもあるの?


 俺は近くまで行ってみるが、交戦する気はないのか動き回るのを辞めて警戒体勢のまま後ずさりしている。


 俺は剣を構えるのをやめて、だらりと大剣をぶら下げる。


「ちょっと! 一成なにしてるの! 」


 後ろからの弾幕がシュウルトの体力を削る。


「おい、蒼! やめろ! 」


 俺は叫んで辞めさせるが、時すでに遅し。命の危機を感じたであろうシュウルトは俺に向かって飛びかかって来る。


 あー、もう。戦いたくない魔物と戦うなんて嫌なんだけど。


 俺は大剣を壁のようにして防ぐが、素早く後ろに回り込まれて、鋭い爪で左腕を切り裂かれる。


 分かってるね。左利きの俺は、左腕をやられるとかなり厳しくなることを。


 左腕が熱い。痛みよりも熱を感じる。

 カピュアからの回復が届くが、傷が癒えるより先に集中的に攻撃を食らって左腕の傷が増えていく。


 痛みを伴う左腕を使うことが出来ず、もちろん右腕だけで大剣を振ることも出来ず、ただ攻撃の的となっている。


 近くを動き回って、特に蒼・俺・シュウルトの並びになるようにされてるし、かなり戦い慣れてるっぽいし。


 左腕の痛みに耐えながら、魔法ならと思い詠唱を開始する。


 あの方法なら、前回の時だって本来ならもっと熱いべきなのにそこまでだった。つまり蒸発の時 (消費の時)に周りの熱を奪っているのかも? なら耐えられる!


「トラップ。灼熱の炎よ、燃え盛れ! 『ファイヤーマン』」


 大剣を投げ捨て、自爆同然の攻撃を仕掛ける。


 腕が燃えるなら、全身だって燃えるはず。なら全身に大量の魔力を纏わせて発動すれば、短時間の、そして高火力の魔法になる。

 痛い熱い痛い熱い。


 蒼は俺の意図を汲み取ってくれたのか、シュウルトの足を執拗に狙い、カピュアは回復魔法をより強くかけてくれる。

 回復魔法は少し痛みを和らげてくれている。


 数発足に当たり、動きが鈍くなった所に抱きつく。


 やっぱり獣毛だから燃えないよね。まぁ、回復魔法有りの俺とお前。どっちの方が耐えられるか勝負といこうか。


 感覚で体力と魔力が減っていくのがわかる。


 この減りだとあと数分ももたないかな。まぁ、そんときは魔法を切ればいいか。


 シュウルトも体力が残り少なくなったであろう瞬間に、大きな遠吠えをする。

 遠吠えをして少しもしないうちにシュウルトは動かなくなった。


「まずいな。直ぐに逃げるぞ。」


「え? なんで? 」


「あの遠吠えだ。絶対に仲間を呼ぶ辺りだろ。」


 シュウルトは仲間を呼んだ。

 しかし何も起こらなかった。


 なんてことはないだろうし。そうだったら可哀想すぎるし。


 間もなく地響きが聞こえてくる。


 ほら、やっぱり来た。地響きレベルは想定してなかったけど。


 近くにある森林の方から音がする。

 その方向を見ると、木々をなぎ倒しながら向かってくる象さえも超える巨体の影が見える。


「あれは……。 【ルフドテズ】? なんでこんなところにいるんですか。もっと北のところにいるはずです。それに、シュウルトとは関わりがないはずです。」


 カピュアが困惑しているが、それよりもあのパック長 (仮称)が襲ってこないことが気になる。


 てっきり、怒りに身を委ねて暴虐の限りを尽くすかと思ってたんだけど。


 パック長は仲間の死を追悼するかのように、前足を畳んで頭を下げている。

 時折聞こえてくる唸り声は優しい声色だ。


 なんか、罪悪感がとてつもないんだけど。ついでに言えば、こんなのと戦うことになったら確実に負けるよ?


 俺は静かに、相手を刺激しないようにゆっくりと後ずさりをして後衛と合流する。


「あの、イッセイ。今度からあの戦法はやめてくださいよ? 」


 静かに注意してくる。


 いや、このタイミングで? !


「ちょっとは気をつけるが、どうしてもそれしか方法がなければ取るからな。」


「ダメです。その時は逃げてください。逃げられないなら私たちを頼ってください。私の友人にもそういう戦い方をする人がいますが、いつも怪我してるんです。その友人は自動回復を使えますが、それでも見てて危なっかしくて嫌なんです。なので、お願いします。」


 カピュアにここまで言われたら、聞くしかないよ。

 不快な気持ちにさせるってだけでもう死にたくなる。


「それしか切り札がない時以外はな。俺の性質上すぐに魔法を使うことも出来ないし、罠を仕掛けることも出来ないしな。」


「なら、後で教えます。それでいいですね? 」


「それなら選択肢(たく)が多くなりそうだな。空間魔法とかも練習してみたいな。」


「頑張りましょうね。」


 あれ? なんでこんなに呑気な会話してるの? カピュアと会話をして空間魔法とか罠魔法とか使ってみたいって言ったところまでは覚えてるけど。

 まぁ、蒼が警戒してくれてるからいっか。


 追悼の儀式が終わったのか、俺と向き合ってくる。

 そして、何やらジェスチャーで伝えようとしている。


 え〜と、俺を指してから遺体を見る。そして顔の前でバツを作る。


 待って? この動物知能あるの? 大きくなると人間と意思疎通しようとするの? それよりも、面と向かった時の厳つさがかなりなことになってるよ?

 まぁ、意思疎通しようとするなら人の言葉わかるかな?


 俺はそこら辺に落ちていた石をパック長の前に置き、話しかける。


「俺の言葉が分かるなら、その石をお前から見て左に蹴った後に踏みつけてくれ。」


 パック長は言った通りに行動する。威力が桁違いなことを除けば。


 なんで軽く蹴るだけで数十メートルも飛んで、わざわざここまで戻した後に踏みつけると石が見えない所まで深く潜ってるの?

 なろう系主人公なの?


「なら、さっき話そうとしていたことは仲間を倒すなってことでいいか? 」


 パック長は大きく頷き、ジェスチャーをする。

 自分を指した後に俺を指して引き裂く動きをする。


「それは、これ以上倒したら直接手を下すって解釈で合ってるか? 」


 またも大きく頷く。


 恐ろしすぎる。


「最後に一個聞くが、お前みたいなのは他にも居たりするのか? 」


 パック長は軽く頷く。

 そして、遺体を咥えて森の中に帰って行った。


 毎回思うけど、なんだこんなに嵐のように現れて帰っていく人が多いの?

 とにかくシュウルト以外を狩らないと行けなくなった件。


 蒼は刺激しないように、カピュアは会話の邪魔をしないように黙っていてくれたが、居なくなることをきっかけに話し始める。


「いや、一成なにいまの? ! 」


「知らんな。」


「ところで、シュウルト以外を狩らないといけませんが、どうしますか? 」


「待ってそうじゃん! どうするの?」


 うーん。なにかないの? ギナズノシの進化系みたいなの。それか亜種とか。


「シュウルトに近い経験値と金額の魔物でここらに居ないのか? 」


「それは厳しいですね。」


 カピュアは俯いて考えている。

 なにか思いついたようだが、あまり気は乗らないような表情をする。


「経験値や金額も似たような魔物に心当たりがありますが、あまりオススメはしませんよ。」


「ちなみにどんな魔物か聞いてもいいか? 」


「ヒツジ型の魔物でメカワモフって言います。上質な毛は高く売れます。この近くの草原に生息してますけど、倒すのは難しいですね。毛並みは弱い攻撃を弾いて、物理ダメージも吸収します。」


「なんか、強そうだな。とりあえず行ってみるか。」


 そういうことで、メカワモフとやらを狩ることになった。

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