三十話 緑の天使
一階まで降りてみると、妖精が居た。
そうとしか説明できないようなカピュアが居た。
「もしかして、寝付けないんですか? 私もなんです。」
光魔法で照らしているのか、精霊のようなキラキラが辺りを小さく照らしている。一つ一つは小さいがかなりの数があるため、明け方の外ぐらい明るくなっている。
「ちょっと怖い夢を見てな。死ぬ恐怖を味わったんでな。」
「ちょっと怖い夢ですかそれ。」
怖かったけど、カピュアを見た途端に恐怖が吹き飛んだね。
「怖い夢で済まして起きたいんだ。」
死ぬ夢を見たとかトラウマになりそう (鬱アニメ沢山観てきたから全くなる予感しないけど)
「それより、かなり明るくしているみたいだな。」
「はい。暗い所ってどうしても苦手なんです。お化けとかでそうなので。」
やばい。お化け怖いってかなり可愛い。
何この子、もう五大天使に仲間入りして六大天使になってもいいんじゃない?
・支配元素が火の 【ミカエル】
・支配元素が水の 【ガブリエル】
・支配元素が風の 【ラファエル】
・支配元素が地の 【ウリエル】
・支配元素ペンギンの 【 (フランシスコ)ザビエル】
に追加で支配元素が可愛さのカピュアエルとか。……いや、カピュエルやフェルエル、フリエルとかいいかもね。
いやそういえば、ラファエルって治療の能力を持ってたはず。心身ともに安らげてくれたはず。……つまりは、一緒にいると心が安らぎ、治癒魔法をかけてくれるカピュアはラファエルだった? ! エンジェルカラーエメラルドグリーンだし。
いやでも、美しさを司るハニエルとかもいいかもしれないね。
まぁ、会話が続かないのも変だし、光について触れとこうかな。
「妖精みたいだな。」
「光魔法の魔素を空中に浮かせて少しずつ消費すると出来ます。簡単ですよ。」
「全属性同時発動できるって言ってる人に簡単って言われてもな……。」
「でも、イッセイは予測不可軌道可変性式できてましたよ? 」
あー。あの適当にやったら出来たやつね。
「あれはその場のノリと感覚でやってみたら出来ただけだ。後は、難しいものができて簡単なのが出来ないっていう特性があるからな。それもあるとは思うが。」
ものすごく端っこまで振られたのは飛びつきで返せるのに、それをミドルにツッツキで返されたときは何故か失敗するんだよね。 (唐突な置き去りの卓球トーク)
「イッセイなら絶対できますよ。私も頑張って教えますから。」
ならもう死ぬ気でするしかないね。
カピュアに恥をかかせるわけにはいかないし。
「まぁ、俺の器官が許す限りは頑張るが。」
「明日から頑張りましょうね。ところで、イッセイはなにか用でもあったんですか? 」
話を540度変えて、聞いてくる。
一周まわって180なんだよなぁ。
ていうかこんなボケしか思いつかないレベルで緊張してる? カピュアはボケキラー?
「怖い夢で汗かいていたからな。ちょっとシャワーでも浴びようかと。」
「良かったら、背中でも流しましょうか? 」
「あの出来事があったその日にこれとはな。反省しろ。」
俺が言うと、カピュアは肩を小さく揺らして笑う。
「冗談ですよ。案外ボケじゃなくてツッコミもできるんですね。」
「まぁ、友達に鍛えられたからな。」
とある友達 (夢で大根がクラーケンに圧勝するやつ)がふざけすぎるせいで、条件反射でツッコむなんてよくあるよね、ほんと。
一回テストの問題に大声でツッコミそうになったもん (定期テスト中)。
危うくカンニング (何故か声出すとカンニングと疑われるよって言われる)容疑で逮捕されるところだったね。
「じゃあ、私は先に寝ますね。おやすみなさい。」
「あぁ、おやすみ。」
カピュアはてくてくと階段を登っていく。
大丈夫かな。階段でコケたりしないかな。過去の俺みたいに (階段を踏み外してスネを強打)。俺ぐらい運動神経悪そうだし心配だなぁ。
ハラハラしながら見送って、登りきったところで目を離す。
よし、シャワー浴びに行こ。・・・カピュアが使ったあと……? あの高貴な存在様の使ったもの??
―
俺
↧
―
‖
俺 (てくてく)
(謎の記号だけの挿絵)
俺は踵を返して、自室に戻ろうとする。
いや待てよ? ここで汗かいたままだと、不快に思われる? 不快にさせるほどしなくないものはないし、浴びておこう。そうしよう。
できるだけカピュアの触れた、神聖な場所に触って穢さないようにしながら、シャワーを浴びる。
これから先は、火と氷の応用で水作ってシャワー浴びようかな。でも、魔力の無駄使いで怒られそうだし。
まぁ、カピュアに怒られるなら何年でも耐えられるけど。
……テンションが深夜モードになってる件。
シャワーを済ませて、備え付けのタオルを使った後に持ってきた服を着る。
ここ、備え付けの設備かなり豪華だからね。フォーク、スプーンもあったし、お箸はなかったし。
なんていうか、The異世界って感じに作られてる気がする。異世界ものの定番っていう感じ。
シャワーを浴びた俺は、しっかりと明かりを消して自室に戻って寝た。
「いっせい、起きてください。」
耳元で癒しの声が聞こえる。
これカピュアだよね。
というより……これは死ぬ。余裕で死ねる。
朝起きてこの声聞いて生きていられるのは女子……非人間……いや、みんな死ぬね。
女子はユリの花になって、非人間はダメ人間になるよ (非人間が人間になるという矛盾)。男子はもう永遠にこの声聞いていたいってなるからもう起きられない。
「やっぱり、アオイさんの言ってたように同じ布団で寝るか、抱きつかないと起きないんですかね。恥ずかしいですけど、誰も見てませんし……。」
声が少し揺れて聞こえてくる。
首を振って、周りを確認しているのだろう。
ん? なにか嫌な予感、というより嫌な確信がするよ? 蒼は一体何を吹き込んだの?
落ち着こう。そして、避けよう。神聖なカピュアを俺で汚す訳にはいかないし。
…………今だ!
俺は直感スキルを信じて、寝返りをうつ。
「わぷっ! 」
横ではベッドに倒れ込む音が聞こえる。
ごめん。
ベッドだから、柔らかいし衝撃も少ないだろうし、怪我もしないだろうから避けたけど、怪我してたら償うよ!
「避けられました? でもイッセイは寝てますし……。偶然ですよね。両手で押さえ込めばこんなことにはならないですね。」
同じ手は使えなくなったので、蒼にも使ったあの方法をとる。
そう。転がってベッドから落ちる作戦。
略して 【KBkO】。またの名を 【寝相が悪すぎる】。
ドンッという鈍い音とともに俺は重力によって地面に叩きつけられる。
「大丈夫ですか? ! 」
心配と驚きの交じった声で聞いてくる。
「痛いな。全く、異世界のベッドはなんでこんなに落ちやすいんだ。大丈夫だから、その初級回復をやめてくれ。」
あたたかく優しい、癒される光が俺を包み込んでいる。
「これはヒールじゃありませんよ。癒しの衣です。全身を心身ともに治癒する魔法ですよ。」
「そうなんだな……って違うだろ。回復をしなくてもいいって言っているんだ。」
なんで俺がツッコミになってるの?
「もし内臓が破裂してたらどうするんですか。」
いや、怖いよ? ベッドから落ちた衝撃で内臓破裂は恐怖しかないよ? せめても高いところから落ちたならともかく、ベッドだよ? あって50センチだよ? 二段ベットの場合は除くけど。
「もしものことでそんなに非現実的な考え方をするのはやめてくれ。」
「なら……もし落ちたところにちょうど小型の魔物がいて、死ぬ間際の呪いがかかってたらどうするんですか! 」
「俺の知ってる呪いだと術者が亡くなった時点で呪いは発動しないんだが? 」
魔法は残るけど、呪いは残らない〜みたいな感じの。
後は自分に帰って来そう。
なんか、ヒューマンドラマできるかな。家出した息子が帰ってくるみたいな。
……面白くなさそう。
「そうですね。ですが、死ぬ間際に発動してその効果によって傷が残っていたら、危険です。」
「だから、まず俺が超小型の魔物を押し潰したとして、そいつが呪いを使えるという可能性を考えてくれ。」
俺が言うと、一度静かに考え込む。
考える姿も可愛いとか反則だよ? もうメガネとかも似合いそうなレベル。
「……。そうでしたね。ごめんなさい。」
あ、ボケじゃなかったんですね。
「天然って言われないか? 」
「何故かよく言われますね。天然系は可愛いとは思いますけど、私自身は天然じゃないですから。」
あ、天然自覚してないって本物の天然? 天然記念物? 絶滅危惧種?
改めてカピュアの性格を知った瞬間だった。




