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この世の朝は未だ遠く 〜Zwischen Traum und Erwachen〜  作者: レンリ
一章 三千大異世界

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3■話 ■■■■と■■の■■

 今日はなにやら、広場にたくさんの……それこそこの街の市民全員が集まっているのではないかと言うほど……人が集まっている。


「お前だろ! 魔族と協力して人を滅ぼそうとしてるのは! 」

「そーだそーだ。じゃなきゃ、なんでここら一帯の貴族でお前だけが生き残ってんだ! 」


(わたくし)はただ、平穏に暮らしているだけです。何もしていません。皆様信じてください。」


 人だかりの中心にいる男は、魔族と手を組んでいると疑われているようだ。


「そんなこと言ったって信じられるか! 」

「魔族なんかと手を組みやがって! 恥を知れ! 」


「ですから、私は皆様の暮らしが危険に晒されないように、ただこの街の秩序を守っていただけで――」


「口では何とでも言えんだろうが! 」

「そーだそーだ。」

「秩序秩序言うなら、周りの街や国はどう説明すんだ! アァ? 」


 少し聞いてみるが、話に耳を傾ける者は一人もいない。

 それもそのはず、魔族がここに来れば市民たちの命は必ずと言っていいほど無くなるのだから。


「それは……。私からは何も言えません。ただ、不幸な出来事だったとしか……。」


「不幸で済ませてんじゃねぇ! 」

「そーだそーだ。」

「運が悪いだけで五人も死ぬか! 」


「もし、この街でそのようなことが起こった場合、私が責任を取ります。安心してください。」


 命がかかっていないのであれば、かなり有効だっただろう。責任の取り方について明言すれば。しかし、生きるためというこの状況では、信頼されていないこの貴族は誰の意見も変えられない。


「そんなこと言うなら、今ここで命で償えや! 」

「そーだそーだ。」

「責任取るんだよなぁ? 」


 おい待て。ずっと見逃してたが、なんだそのそーだそーだしか言わないやつは……。


「全く。お前ら人間ってのは自分の都合のいいように解釈しかしないのか? 」


 声は空から聞こえてくる。


 四方八方に視線があるなかどのように登場するのかと思っていたが、空中で現れるとはな。そこまでして転移の瞬間を見られたくないのか。


「今日は忙しいんでな。ササッと終わらせて帰りたいんだが、それでいいか? 」


 なにかこの後予定があるのか、少し急いでいる。


「アァ? なんだお前。俺たちは忙しいんだ。帰れ。」

「そーだそーだ。」


「あー、魔族の長の俺にそんな口聞くんだな。」


「魔族だと? 」

「死にそうになったところに助けに来たぞ。こいつ、やっぱり魔族と……。」

「そーだそーだ。」


 魔族と明かしたことで事態が余計にややこしい事になっている。


「気になってたんだが、そのそーだそーだしか言わないお前はなんなんだ。」


 やっぱりお前もそれ思うか。


「そんなことは関係ないだろ! 」

「そーだそーだ。」


「これで会話になるんだから、凄いよな。遺言はあるか? 」


「遺言なんてふざけてる場合じゃないんだよ! 」

「そーだそーだ。」


「よし。それが遺言だな。」


 魔帝は人差し指に中指を絡めた右手を上にあげて


「|幸運を祈る《GOOD LUCK !》。」


 と言う。


 すると、急に湧いて出た細い水色の線が、市民全員の胸を穿いていく。


「『死の線(ラブデスゴッド)』といったところか。」


 市民の胸に空いた穴からは血が流れ出し、その量は徐々に多くなっていく。

 たった一人を除いて例外なく穿かれている。その一人は貴族だ。


「ま、これから大変だろうが頑張ってくれよ。」


 魔帝は貴族にそう言って、転移でもとの場所に帰る。


 今日は暇だからついて行くとするか。


 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 戻ってきた魔帝は、寸分の狂いもなく玉座の上に転移出来ている。

 足を組み、腕を肘掛けに置いている様は王にしか見えない。


「おかえりなさいませ。今日早かったですね。」


「そりゃあ、新家来雇用式が今日だろ? 俺が出ない訳にはいかないからな。それより、 【キ】を呼んでもらってもいいか? 新戦略を考えるんでな。」


 心を読んでみると、

『キは電気魔法が得意だからそれを使う道具をあてがうべきか? いや、あいつは出力調整が不得意か。それならあの――』


「すみませんが 【キ】は忙しいみたいです。仕事を要件を放棄させてでも呼びましょうか? 」


「いや、そこまでじゃない。」


「でしたら今夜(きょう)は私と話し合いませんか? 」


 秘書的立ち位置と思われる女性が少しずつ擦り寄りながら言う。


「遠慮しておく。なら今日は 【アカ】の元に行ってみるか。」


「私はいつでも貴方のことを受け入れますよ。今宵は楽しみましょう。」


「勝手に話を進めるな。」


 しっかりとツッコミを入れてから、歩き出す。


 しばらく歩いた先で扉をノックする。


「今時間あるか? 」


「なによ。アンタなんか時間があっても入れないんだから。……まぁ? アンタがどうしてもって言うなら入れてやってもいいけど? 」


 魔帝が下を向いて振り返るといった瞬間でデレの要素が入る。


「何回このくだりをするつもりなんだ。」


「で? アタシの時間奪ってるんだから、大したことない用だと怒るわよ。」


 流石に男女の会話を盗み見るのはどうかと思ったので、一度見るのをやめておく。


 会話が終わったらしいところでもう一度見始める。


「じゃあ、そろそろ他の仕事に戻るな。」


「ま、待って。アンタ……私の時間奪っといて勝手に帰るなんて許さないわよ。」


「お前は電磁誘導(でんじゆうどう)時における時間の変化か! 」


 おい魔帝。そのツッコミじゃ賢くないやつには伝わらないぞ。


 しかし、魔帝は電磁誘導でなにかアイデアを閃いたようだ。


「……ん? 電磁誘導……。あー、 【キ】にはそれが使えるかもな。」


「ちょ、ちょっと。アタシの話聞いてる? まだ話し足りないわ。」


 置いてけぼりのアカは魔帝を引き留めようとする。


「悪い。ちょっと用事ができた。また今度な。」


 しかし、魔帝は自室まで走っていく。

 自室に着くと、看板に

推し事(おしごと)中です。邪魔しないでください。』

 と書いて閉じこもる。


 ちなみに、この後の新家来雇用式とやらには思いっきり遅刻したようだ。

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