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この世の朝は未だ遠く 〜Zwischen Traum und Erwachen〜  作者: レンリ
一章 三千大異世界

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二十五話 この世界の人間は決闘しすぎでは?

 おかしい。今日は 「いつも練習している場所で待っててください。」って言われていたのに、全くフリートさんが来ない。


 ……一回ギルドに行ってみよ。


 何故か来なかったフリートさんを探しに、俺たちはアマゾンの奥t……ギルドに向かった。


 このネタ二回目になる所だったよ。危なかったなぁ。


 ギルドに行くと、フリートさんが数人の先輩冒険者に絡まれていた。


 先輩が女性だから痴漢とかそういうのでは無いだろうけど、カツアゲとか?

 なら、自爆してでも止めないと。抱きついて炎上でいけるかな。


 会話の内容を聞くと何やら言い争っているようだ。


「だから、私は新しいパーティに入ったんです。出ていけって言ったのはそっちですよね? 」


 いや、タイミング良すぎでは?


「アンタはそんなこともわかんないわけ? あんなのそん時のノリに決まってんじゃん。さっさとパーティに戻れって言ってんの。アンタが居ないせいで稼ぎが減ったんだから、その分取り返せっての。」


 なんだろう。ツンデレのデレ消えた感じがする。


「だから、私は別のパーティに入ったんです。もう帰りません。それに……」


 ここで、俺たちに気づいたフリートさんがこっちに向く。


「アサギリさん、ごめんなさい。待たせてましたね。」


「いや、それはいいんだが。揉めてるようだが大丈夫なのか? 」


「大丈夫ですよ。あのパーティに戻る気はありませんから。」


「アンタねぇ。出来損ないのくせになに調子のってんの? 」


 フリートさんの言葉を聞いた先輩系女子がイライラを隠さずに言う。


 どちらかと言えば好意的に思えるかな。陰でチクチク言う人よりはマシだし。


 まぁ? フリートさんのことを失敗作とか言ったことは? 許しませんけどね? というか、あんなになんでも出来て出来損ないってどういうこと?


「その言い方はやめてくださいって言ってますよね。」


「アンタが勝手に抜け出しただけでしょ? 失敗作のアンタの面倒みてやってんだから感謝ぐらいしろよ。」


 よし、何とか止めに入ろう。……決闘とかいけるかな。邪眼使えるようになったし。善戦できるといいな。


「なら俺と先輩が決闘して、勝った方のパーティに入るって事でいいか? 」


 俺は二人の顔を見て確認を取る。


「私はいいですよ。アサギリさんが私を取り返してくれるって信じてますから。」


 過度な信頼ってここまで圧力になるんだね。絶対に負けられないじゃない。


「ま、こんなの勝てそうだしいいけど、怪我しても騒がないでよ。」


 そんなことで、俺は先輩と決闘することになった。




 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


「アサギリさん。相手はAランクですから気をつけてくださいね。」


「気をつけててもどうにもならない気がするがな。」


 俺たちは外に出て、決闘の準備をしている。

 どこから聞きつけたのか、ある程度の野次馬は出来ている。


 ……Aランクは人外って信頼度(ゼロ)の黒本に書いてたからね。仕方ないね。うん。暴れよ。


「ルールは負けを認めるか戦えなくなったらな? アンタ、今のうちに負けを認めてた方がいいんじゃない? 」


「できるできないは気にしないタイプでな。負けると思ったら、その分勝算度外視で暴れるからな。覚悟しとけよな。」


「へぇ。死なないようにしなよ。」


 そう言って、長い間合いで斬られそうになる。

 俺は準備していた 『重圧の邪眼』で動きを鈍くする。


 しかし、遅くなったとはいえ、かなりの速さで突っ込んできている。


 なんで、剣じゃなくて槍なの? 大剣の利点である間合いだって負けてるし、遅い振りに素早い突きで翻弄されそうだし。


 相性悪すぎるね。


 俺は大剣を盾にして槍を防ぐが、攻められてばかりで反撃に出ることが出来ない。


 まずいね。卓球でも決闘でも守りだけでは勝てないってお約束があるし。


 重圧を発動させたまま、小声で幻視の詠唱を開始する。


「(これは自然の悪戯(いたずら)。光の屈折。見間違い。錯覚。そんな全てを我は操りたもう――)」


 遅くしてなんとか防げているけど、解除していけるかな? いや、後で考えよう。


 ずっとしているだけでは埒が明かないと思ったのか、大剣を横から蹴られて、防御が崩れる。


 横にずれた大剣から見えた景色では、床に突き刺して槍を支点にして回っていた。


 俺は少しの可能性にかけて、大剣を投げ捨て走り出す。


 ――槍で体を支えて放ったムーンサルトの蹴りで吹き飛ばされる。


 体勢を崩した俺に、先輩は槍の先端で足を突き刺す。


 あまりの痛みでうずくまったところで、首筋に刃が当てられて質問される。


「で? アンタはまだ続ける気? なら死ぬかもね。」


「諦めるなんてすると思うか? 」


 じわりと首筋に刃がくい込んでいく。




 ……という夢を見たのさ。


 俺は隙だらけのところに卓球のバックハンドカルデラーノドライブの要領で大剣を振る。


 上手い具合に『幻視の邪眼』が発動出来て良かった。

 幻覚と行動を途中まで一緒にすることで疑いを少なくする。そして、本体を大剣で隠しながら死角まで移動して斬る。完璧だね。


 しかし、相手もプロだ。すんでのところで槍を手元まで引き寄せて、金属の部分で軌道をずらして避ける。


 うぐっ。槍を斬れば有利になると思ったのに。


 そして、二撃目を避けるために大きく後ろに飛ぶ。


 後ろ壁だけど大丈夫かな。


 振り切って後隙に入っている俺に、壁を蹴って勢いをつけた先輩が突進してくる。


 おう……。アクロバティック。


 俺は慣性に従って左に飛ぶ。

 元いた場所を見ると、石畳に小さなクレーターが出来ている。


 あの、人間って知ってる? 人間辞めるってそんな簡単にできるの?


 立ち上がり向き合ったところで話しかけてくる。


「アンタと戦ってると変な気分なんだけど、なんか変な魔法でも使ってんの? 」


「いや、そんなことは無いが。」


 変な気分? まさか……庇護欲?


 俺がそう答えると、また突撃が何度も襲ってくる。

 俺はある程度の怪我は割り切って、大剣を何度も振る。


 ミス……ダメージを与えられない。

 ミス……ダメージを与えられない。

 ミス……ダメージを与えられない。


 全てギリギリで躱されている。


 なんでこんなに当たらないの? 当たり判定バグってるの? 修正してほしいよ。運営に連絡しなきゃ。


 この状況の改善を求め、小声で高速詠唱を試みる。


「(火の神に命ずる。この状況の改善を求む。望むは炎を用いた凶悪な術。出来れば予測不可な可変性を持った術。『イタズラ神、ロキの気まぐれ火炎玉(フレイムボール)』)」


 発動の瞬間だけ右手をかざすと、手のひらから火の玉が飛び出る。


なんか出た! 意表を突いて斬る予定だったのに。


 飛び出た火の玉は、まるで意志を持っているかのように壁にぶつかり跳ね回る。

 幸いカピュアが結界を張っているのか、野次馬に当たるより先に宙で跳ね返っている。


「これ、あの出来損ないに教わったの? 」


 魔法の相手をしながら気だるげに聞いてくる。


「カピュアだ。お前が出来損ないって言った人は、かなり役に立っているようだが? 」


 俺は動き回って戦っているため気持ちが高揚してしまっている。


「あんなのが役に立つ? なに言ってんの? 出来損ないはどう足掻いても出来損ないだってのに。」


 普段なら冷静に対処出来るような言葉でも、今は怒りでいっぱいになってしまう。


「これ以上喋るな。お前に何が分かるんだ。本人のことは、本人しか分からないだろうが。」


「へぇ。アンタはあいつのことを知ってるって言うわけ? 全く知らないのによく言うじゃない。」


「一番わかってないのはお前だろうが。」


 俺はつい怒りに任せて、大剣を大きく振る。


 後ろにステップして避けられた? なら、もう一撃!


 先程とは反対からの斬撃を放とうと大剣を振る。


 ――あっ……大剣重い……しくじったね。回転斬りした方が良かった。


 慣性で隙だらけになった胸に、槍先が吸い付くように進んできている。


 もう勝てないからふざけよ。


「えっ? こんな状況からでも入れる保険があるn……。」


 痛みで歯を食いしばって台詞が中断される。


 痛い痛い痛い痛い痛い……。

 心臓は外してくれているだろうけど、痛すぎる。


 痛みで薄れゆく意識の中、最後に聞こえたのは人々の


「うっわ、自分から挑んどいて負けてるよ。だっさ。」

「勝てないって分かってるのに挑むなんて馬鹿なんじゃない? 」


 という侮辱の言葉だった。

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