二十五話 この世界の人間は決闘しすぎでは?
おかしい。今日は 「いつも練習している場所で待っててください。」って言われていたのに、全くフリートさんが来ない。
……一回ギルドに行ってみよ。
何故か来なかったフリートさんを探しに、俺たちはアマゾンの奥t……ギルドに向かった。
このネタ二回目になる所だったよ。危なかったなぁ。
ギルドに行くと、フリートさんが数人の先輩冒険者に絡まれていた。
先輩が女性だから痴漢とかそういうのでは無いだろうけど、カツアゲとか?
なら、自爆してでも止めないと。抱きついて炎上でいけるかな。
会話の内容を聞くと何やら言い争っているようだ。
「だから、私は新しいパーティに入ったんです。出ていけって言ったのはそっちですよね? 」
いや、タイミング良すぎでは?
「アンタはそんなこともわかんないわけ? あんなのそん時のノリに決まってんじゃん。さっさとパーティに戻れって言ってんの。アンタが居ないせいで稼ぎが減ったんだから、その分取り返せっての。」
なんだろう。ツンデレのデレ消えた感じがする。
「だから、私は別のパーティに入ったんです。もう帰りません。それに……」
ここで、俺たちに気づいたフリートさんがこっちに向く。
「アサギリさん、ごめんなさい。待たせてましたね。」
「いや、それはいいんだが。揉めてるようだが大丈夫なのか? 」
「大丈夫ですよ。あのパーティに戻る気はありませんから。」
「アンタねぇ。出来損ないのくせになに調子のってんの? 」
フリートさんの言葉を聞いた先輩系女子がイライラを隠さずに言う。
どちらかと言えば好意的に思えるかな。陰でチクチク言う人よりはマシだし。
まぁ? フリートさんのことを失敗作とか言ったことは? 許しませんけどね? というか、あんなになんでも出来て出来損ないってどういうこと?
「その言い方はやめてくださいって言ってますよね。」
「アンタが勝手に抜け出しただけでしょ? 失敗作のアンタの面倒みてやってんだから感謝ぐらいしろよ。」
よし、何とか止めに入ろう。……決闘とかいけるかな。邪眼使えるようになったし。善戦できるといいな。
「なら俺と先輩が決闘して、勝った方のパーティに入るって事でいいか? 」
俺は二人の顔を見て確認を取る。
「私はいいですよ。アサギリさんが私を取り返してくれるって信じてますから。」
過度な信頼ってここまで圧力になるんだね。絶対に負けられないじゃない。
「ま、こんなの勝てそうだしいいけど、怪我しても騒がないでよ。」
そんなことで、俺は先輩と決闘することになった。
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「アサギリさん。相手はAランクですから気をつけてくださいね。」
「気をつけててもどうにもならない気がするがな。」
俺たちは外に出て、決闘の準備をしている。
どこから聞きつけたのか、ある程度の野次馬は出来ている。
……Aランクは人外って信頼度零の黒本に書いてたからね。仕方ないね。うん。暴れよ。
「ルールは負けを認めるか戦えなくなったらな? アンタ、今のうちに負けを認めてた方がいいんじゃない? 」
「できるできないは気にしないタイプでな。負けると思ったら、その分勝算度外視で暴れるからな。覚悟しとけよな。」
「へぇ。死なないようにしなよ。」
そう言って、長い間合いで斬られそうになる。
俺は準備していた 『重圧の邪眼』で動きを鈍くする。
しかし、遅くなったとはいえ、かなりの速さで突っ込んできている。
なんで、剣じゃなくて槍なの? 大剣の利点である間合いだって負けてるし、遅い振りに素早い突きで翻弄されそうだし。
相性悪すぎるね。
俺は大剣を盾にして槍を防ぐが、攻められてばかりで反撃に出ることが出来ない。
まずいね。卓球でも決闘でも守りだけでは勝てないってお約束があるし。
重圧を発動させたまま、小声で幻視の詠唱を開始する。
「(これは自然の悪戯。光の屈折。見間違い。錯覚。そんな全てを我は操りたもう――)」
遅くしてなんとか防げているけど、解除していけるかな? いや、後で考えよう。
ずっとしているだけでは埒が明かないと思ったのか、大剣を横から蹴られて、防御が崩れる。
横にずれた大剣から見えた景色では、床に突き刺して槍を支点にして回っていた。
俺は少しの可能性にかけて、大剣を投げ捨て走り出す。
――槍で体を支えて放ったムーンサルトの蹴りで吹き飛ばされる。
体勢を崩した俺に、先輩は槍の先端で足を突き刺す。
あまりの痛みでうずくまったところで、首筋に刃が当てられて質問される。
「で? アンタはまだ続ける気? なら死ぬかもね。」
「諦めるなんてすると思うか? 」
じわりと首筋に刃がくい込んでいく。
……という夢を見たのさ。
俺は隙だらけのところに卓球のバックハンドカルデラーノドライブの要領で大剣を振る。
上手い具合に『幻視の邪眼』が発動出来て良かった。
幻覚と行動を途中まで一緒にすることで疑いを少なくする。そして、本体を大剣で隠しながら死角まで移動して斬る。完璧だね。
しかし、相手もプロだ。すんでのところで槍を手元まで引き寄せて、金属の部分で軌道をずらして避ける。
うぐっ。槍を斬れば有利になると思ったのに。
そして、二撃目を避けるために大きく後ろに飛ぶ。
後ろ壁だけど大丈夫かな。
振り切って後隙に入っている俺に、壁を蹴って勢いをつけた先輩が突進してくる。
おう……。アクロバティック。
俺は慣性に従って左に飛ぶ。
元いた場所を見ると、石畳に小さなクレーターが出来ている。
あの、人間って知ってる? 人間辞めるってそんな簡単にできるの?
立ち上がり向き合ったところで話しかけてくる。
「アンタと戦ってると変な気分なんだけど、なんか変な魔法でも使ってんの? 」
「いや、そんなことは無いが。」
変な気分? まさか……庇護欲?
俺がそう答えると、また突撃が何度も襲ってくる。
俺はある程度の怪我は割り切って、大剣を何度も振る。
ミス……ダメージを与えられない。
ミス……ダメージを与えられない。
ミス……ダメージを与えられない。
全てギリギリで躱されている。
なんでこんなに当たらないの? 当たり判定バグってるの? 修正してほしいよ。運営に連絡しなきゃ。
この状況の改善を求め、小声で高速詠唱を試みる。
「(火の神に命ずる。この状況の改善を求む。望むは炎を用いた凶悪な術。出来れば予測不可な可変性を持った術。『イタズラ神、ロキの気まぐれ火炎玉』)」
発動の瞬間だけ右手をかざすと、手のひらから火の玉が飛び出る。
なんか出た! 意表を突いて斬る予定だったのに。
飛び出た火の玉は、まるで意志を持っているかのように壁にぶつかり跳ね回る。
幸いカピュアが結界を張っているのか、野次馬に当たるより先に宙で跳ね返っている。
「これ、あの出来損ないに教わったの? 」
魔法の相手をしながら気だるげに聞いてくる。
「カピュアだ。お前が出来損ないって言った人は、かなり役に立っているようだが? 」
俺は動き回って戦っているため気持ちが高揚してしまっている。
「あんなのが役に立つ? なに言ってんの? 出来損ないはどう足掻いても出来損ないだってのに。」
普段なら冷静に対処出来るような言葉でも、今は怒りでいっぱいになってしまう。
「これ以上喋るな。お前に何が分かるんだ。本人のことは、本人しか分からないだろうが。」
「へぇ。アンタはあいつのことを知ってるって言うわけ? 全く知らないのによく言うじゃない。」
「一番わかってないのはお前だろうが。」
俺はつい怒りに任せて、大剣を大きく振る。
後ろにステップして避けられた? なら、もう一撃!
先程とは反対からの斬撃を放とうと大剣を振る。
――あっ……大剣重い……しくじったね。回転斬りした方が良かった。
慣性で隙だらけになった胸に、槍先が吸い付くように進んできている。
もう勝てないからふざけよ。
「えっ? こんな状況からでも入れる保険があるn……。」
痛みで歯を食いしばって台詞が中断される。
痛い痛い痛い痛い痛い……。
心臓は外してくれているだろうけど、痛すぎる。
痛みで薄れゆく意識の中、最後に聞こえたのは人々の
「うっわ、自分から挑んどいて負けてるよ。だっさ。」
「勝てないって分かってるのに挑むなんて馬鹿なんじゃない? 」
という侮辱の言葉だった。




