二十一話 神と一成
現れた人は見覚えのある……いや、俺をこんな状況にした張本人の自称神だ。黒髪黒目のスタイルのいい男だ。
「俺を呼んだのはお前か? あとは任せて、ゆっくり休んでな。」
神は二人に魔法をかけて、眠らせる。
「何しに来たんだ。この世界に来れるならレベリングを手伝って欲しかったんだが。」
ほんとに、レベリングを手伝ってくれたら、今頃LvMAXのなろう展開始まってたのに……。
「まったく。お前ってやつは。神が現れるには制限があるに決まってるだろ。」
そーなのかー。正直興味ないんだけど。
「それより、口調が偉そうになってないがいいのか? 」
「俺を見ている人が少ないからな。この口調でも広まらないだろ。吸血鬼。」
「相変わらず、心を読む能力は健在のようだな。さとり妖怪目指してみたらどうだ? 」
俺が軽口を言うと、呆れた顔で返される。
「神とここまで対等に話すお前はおかしいからな? 」
「大丈夫だ。もともとかなり頭おかしいからな。安心して戦ってくれ。」
「俺が戦うこと前提かよ。まぁ、そのために奇跡を消費してまで来たんだしな。」
神はスメイトの方を向き、構える。
「お前がスメイトだな。神でもないのに、断罪とは随分と傲慢なやつだな。」
「君こそ、まるで自分が神のように話すね。思い上がってるね。」
神は威圧をしていないのか、これまで通りのスメイトで返事が返ってくる。
「なら、試してみるか? かかってこいよ。」
「怪我しても知らないからね。」
刹那の時間で、無数の電撃が神を襲う。
「当たってないが、なにかあったのか? 」
本人曰く、当たっていないらしい。
「雷属性を避けるなんて、君は人間離れしてるんだね。」
「ま、俺は神だしな。」
次は神を囲むように隙間なくぎっしりと並べられた弾幕が襲う。
「見えている攻撃が当たらない権利。見えていない攻撃が当たらない権利。認識できていない攻撃が当たらない権利。があるんだ。お前が俺に攻撃を当てるのは無理だ。」
よく見ると弾幕は全てが当たるかどうかギリギリのところで外れている。
なに? ルナシューターかなにか?
「は? なんだよそのチートは。ズルだね。そんなせこい人に僕が負けるわけないね。」
「ずるじゃないな。力の差がハッキリしてるだけだ。実際、俺でも勝てるかどうか危うい相手はいるしな。」
だからインフレし過ぎでは? フリートさん姉妹はかなり強いし、それを圧倒するスメイトとそれと相打ちにできるフリートさんと。最後のスメイトの攻撃が当たらない神と。
俺以外全員なろうかな?
「いくら当たらなくても、これは避けられないね。」
焦ったのか、もう一度あの大技を使おうとしている。しかし、神は落ち着いて突っ立ったままでいる。
「あー、そこのカピュア。あの二人を守ってやれよ。次くらったらさすがに命が危ないからな。」
呆気にとられていたフリートさんは、名指しで呼ばれたことでハッとした顔をした後に二人に駆け寄っていく。俺も手を握っているため、走ってついていく。
「そうそう。よく見とけよ、朝霧一成。これが神の能力だ。」
「見とくよ。そこまで到達出来ないだろうがな。」
「お前が一番可能性はあるけどな。」
神はよく分からないことを言って、スメイトに向き直る。
「さ、こいよ。真の神の強さを見せてやるよ。」
「最後まで偏見するんだね。『極・断罪之光』」
先程の一撃よりも更に眩い光が神を包み込む。
光が収まったとき、無傷で立っている神がいる。
「な? 無理だって分かったろ。今回は見逃してやるからさっさと逃げるんだな。」
「魔法の無効化か遠距離攻撃回避だね。なら、剣で斬ればいいね。」
「人の話を聞けよな。」
スメイトはスキルをだと思ったのか、鉄属性の魔法で剣を創造する。
身体強化魔法でも使ったのか、かなりの速さで神に斬り掛かる。
「これなら当たるよね。」
「当たらないって言ってるだろ。」
神は微動だにせず、しっかりとスメイトを見つめている。
有言実行というのか分からないが、剣はどれだけ振っても当たらない。
一番面白かったのは横から斬られたときに剣がぐにゃりと曲がって避けたことかな。剣が溶けたときの飴細工みたいで面白かった。
「やられっぱなしってのも嫌だな。かといって、剣を使うと一瞬で終わってしまうからな。」
「なに、僕に勝てると思ってるの? みんなみんな傲慢過ぎるね。君の方こそ、僕に負けないように頑張りなよ。」
神は何も無い空間から青い剣を引き抜く。柄にはバラの形の飾りが付いている。
「青薔薇の……いや、 《蒼茨剣》とでもするか。一成、動くなよ? 」
動くなよ? は嫌な予感しかしないんだけど。何があるの? 心臓を抉りとって生贄にでもされるの?
神は相似剣……掃除剣かな? とやらを俺の腕目掛けて振る。刃は肉を切り裂き、右腕に痛みが走り、思わず斬られた部位を押さえる。
「なにしてるんですか! 」
俺の代わりにフリートさんが怒ってくれる。
「よく見ろ。血は出てないだろ。それに、精神攻撃だが、廃人になるほど威力が強い訳でもないからな。」
確かに、イノシシの時よりも痛くない。
痛みは直ぐにひいていく。
「それでも、痛いことには代わりないですよね! 勝手に他人を傷つけるのはダメです! 」
「一成だからしたんだ。他の人にはしないから安心しろ。」
「なんですかそれは! 一成の方がダメです! 」
最後のフリートさんのセリフは無視して、スメイトに凸っていく。
脳筋ですか?
神は飛んでくる剣撃を弾いて、きっちりと反撃をしている。
刺され、斬られるたびにスメイトの顔が歪む。
「まだ続けるか? 」
「そんなの決まってるよね。分からないの? 」
「なら、戦う気がなくなるまでするしかないな。」
神は人間の急所ばかり狙うようになる。
みぞおち、脳、心臓、目と普段では絶対に何度も斬られる経験のないであろう場所に幾度となく痛みが走る。
あまりの痛みに耐えきれなくなったのか
「こんなのズルだね。覚えておくんだね。」
そう捨て台詞を言ってこの空間から出ていく。
なんだろう。この強いのに小物感。
「一成。まだ、弱いのは分かるがいざと言う時は、身を犠牲にしろ。代償があれば、力を得られるからな。」
「要約をしてくれ。」
「無理だな。自分で考えろ。最後の慈悲に二人の傷は治しておく。治す間に質問をしとけよ。」
光が二人を包み込んで、傷を癒していく。
「なら早速。お前は何者だ。」
「何者だという質問は難しいな。本名か? 地位か? 成し遂げたことか? 」
謎多いキャラを装っているみたいにしか見えないんだけど。
「全てだ。」
「なら、地位からだな。俺は神だ。正真正銘のな。この世界を司っている。本名は言えないから偽名と二つ名を教えればいいだろ。まず、偽名が 【神成】、二つ名が 【作者公認チート】だ。二つ名の名付け親は言わないがな。」
「成し遂げたことは? 」
「二人を見ろ。傷は完治してるだろ。だから、神界に帰るな。期待してるぞ。」
光が神成を包み込み、空間から消える。
この神成は派手に転移しかできないの?
「あー、あの神っつーやつにも勝ちてぇな。」
「……それは高望みし過ぎ……。」
二人は目覚めて会話をしている。
「アサギリさん、帰りましょう。クジョウさんが待ってます。」
「そうだな。」
そうして空間転移をして、元いた場所に戻った。
「またな、フェル姉。」
「……姉さん……さよなら……。……そちらの人も……。」
二人は別れを告げて、帰っていった。
「アサギリさん、食材は無事ですか? 」
「なんとか無事だな。」
「良かったです。食材が心配で参戦出来ませんでしたから。」
ん? 全盛期って食材無しとか言わないよね?
「そうだったんだな。参加したら勝ててたか? 」
「セイカとソラが居れば勝てましたね。」
「最近思うんだが、フリートさん強すぎないか? 」
「そんなことありませんよ。」
これで、買い物に行くだけで巻き込まれる俺たちの不運さを実感した。
何はともあれ決闘危ない雰囲気だったけど、無傷で帰ってこれたし良かったよ。




