二十話 決闘、スメイト対姉妹+傍観者
内臓が浮く感覚と共に、見たことがない場所へと転移する。
いや、見たことない場所ってよりかは別次元か異世界の方が合ってるね。
なにせ、灰色の床にマス目状に白く光る線が入っていて、それが地平線の先まで続いているもん。
「フェル姉、やっぱ流石。これで心置き無く戦えるってもんよ。」
「君の力じゃ石ころを壊すのが精一杯だよ。」
石ころ壊すの難しいと思うけど……。だって火系統の属性だと、溶かすぐらいしか壊す方法ないし……。
「舐めやがって。」
「……セイカ、私も交じっていい……? 」
「そだな。ひとまずはアタイにやらせろ。いいっつったら、交ざれ。」
「……分かった。」
決闘が始まりそうと言うところで、フリートさんが俺に話しかける。
「アサギリさんは私の近くにいてください。近くなら飛んできた魔法を分解できますから。」
「分かったが、分解ってどうやるんだ? 」
「飛んでくる魔法のまじゅちゅ……ごめんなさい。緊張していまして。魔術式を読み取って、核を壊せば魔力の塊になりますから。魔法式とも言いますね。」
待って。かわいい。噛んだところですらかわいい。
「で、魔法の弱体化っていうのは? 」
「魔力の塊にすることを無効化、式の攻撃の部分を消したり、含まれる魔力の量を減らしたりすることで威力を弱めるのを弱体化って一部の人は呼びますね。」
俺は教えてくれたフリートさんに感謝して、決闘の様子を傍観する。
「最後に聞いとくけど、怪我しても知らねぇからな? 」
「僕のことを舐めすぎだよね。そんな傲慢な君に負けるわけないよね。」
「ボコしてもいいってことだな。『炎帝城』」
炎が床から生えて、一瞬で辺りを火の海に変える。
俺は思わず感嘆の声を漏らしてしまう。
すごい……。俺も練習したらできるのかな?
「そんな魔法で僕を倒そうって本気で思ってるわけ? こんなちょっと熱いぐらいの火なんて、簡単に消せるね。」
「んなこたぁ言ってねぇだろ。」
炎で視界を遮って近づいたセイカの拳には、明らかに温度が違う白い炎が纏っている。
その拳でスメイトのお腹を殴り、ふっ飛ばす。
「いまのぁきぃたろ。」
しかし、何事も無かったかのように立ち上がる。
「火傷したらどうするつもり? けど、ここまで体力を減らせるとは思わなかったね。僕もお返ししないとね。」
そう言うと、一部だけ火の勢いが強くなる。
その部分は素早く移動し、セイカの腕を浅く切り裂く。
「うっぜぇ。わざわざ風で攻撃かよ。炎帝城使ってんのに無詠唱でこれかよ。」
「君みたいなのには火の強属性で十分だね。」
「男のくせに魔法を使うんだな。男なら拳で語り合えっつーの。」
「男のくせに? なんでそんな偏見するの? 偏見で嫌な気分になる人が何人いると思ってるわけ? 」
「てめぇがそんなこと語んな。死にてぇようだし、本気でやってやるよ。」
セイカは話すだけ無駄だと思ったのか、両手に白い炎を灯して、殴りにかかる。無数の拳がスメイトを襲う。
「まったく痛いね。女がこんな暴力を振るうなんてね。女はもっと魔法をするもんだよね? 」
セイカはスメイトの発言には反応せずに、殴り続ける。
それに比べてスメイトってすごいよね。最後まで偏見たっぷりだもん。
「ごめんなさい。真面目な空気なのは分かってる。だけど、ふざけるのを我慢できなかった。」と俺は罪を認めて供述しています。
「あれ? もしかしてもう話せなくなった? 脳筋過ぎると思うね。それに、痛いからやめて欲しいね。」
「やめるわけねぇだろが。」
「仕方ないね。」
二人の間になにかができたように、セイカが後ろに吹き飛ばされる。
吹き飛ばされたあとは、受け身が取れずに背中を強く打つ。
「つえぇ。ソラ、お前も入れ。」
「……分かったけど炎帝城があると……上手く使えない……。」
「しゃぁ。海底火山に変えっか。」
「……それがいい……。」
ソラはセイカに近寄り、指と指を絡み合うように繋いで
「……「複合魔法『海底火山』」……」
と術を発動させる。
床の炎は消え、代わりに水が現れる。所々には小さな山のようなものが出来ている。きっとあれが火山だろう。
火山の場合、岩とか地面とか土属性だと思うけど……。もしかして、火属性が溶岩とか言わないよね? それが水で冷えたから山ができたとか。
「……散々セイカをいじめてくれた……。……今度は私たちがやり返す番……。」
静かに呟くが、怒りと猟奇的な喜びがこもっている。
「ったく。お前はもうちょい落ち着いてたと思ってたがな。どこで間違えてんだ。」
「……セイカと一緒に居るとこうなった……。……セイカのせい……。」
「後でフェル姉に説教してもらわねぇとな。」
「君たちのような弱いのが集まっても弱いよね。偏見する、傲慢な人が勝つわけないね。」
それって自分負けるって言ってます?
「いい加減黙れ。てめぇのおかしい考えになんて聞く耳持ってねぇんだよ! 」
「人の事をおかしいなんて、自分は正しいって思ってるの? かなり傲慢じゃない? それに、人の話を聞かないのも傲慢だよね。」
「傲慢傲慢るっせぇよ! 聞かねぇっつったの聞こえてねぇのか! 」
かなりストレスが溜まったようで、声を荒らげて言い返している。
「聞こえてないのは君の方だよね? 人の話を聞けって言ってるのに聞かないなんて。頭おかしいんじゃないの? 」
それに比べてスメイトは非常に落ち着いた様子で話す。
「てめぇなぁ――」
「……セイカこれ以上話しても無駄……。……あの人には通じない……。」
怒りで我を忘れそうになっていたセイカをソラがなだめる。
「……早く倒せばイライラも少なくて済む……。」
「それもそっだな。大技いくぞ。」
ソラは頷き、二人は目を閉じる。精神を統一しているように見える。いや、魔力を練っているのかもしれない。
「大技打つって大声で言うなんて、馬鹿だね。そっちがその気なら、僕だって打つね。」
目を閉じた二人に比べてスメイトは目を開けたまま、手をかざして魔力を練る。
「アサギリさん、危ないので私の手を握っててください。」
「把握。それにしても、助けに入らなくていいのか? 」
俺は言われた通りに手を繋いでおく。
すごい柔らかい。フリートさんの体温が手のひらから伝わってくる。こんな場合じゃないんだろうけど、すごいドキドキする。
「いいんですよ。これは決闘ですから。助けに入ると逆に迷惑になります。」
俺がドキマギしているうちにお互いに大技の準備が出来たのか、詠唱をしている。
「『灼熱地獄』」
「……『泡沫の灯火』……」
「『断罪之光』」
燃え盛る炎がスメイトを包み込み、水の泡が体を抉る。
そして、世界を包み込むと思えるほどの眩い光が二人を襲う。
俺はと言うと、フリートさんの周りだけ光が届いていない。そのため、安全に傍観できている。
思ったことを言うと、神でもないもに断罪は傲慢過ぎない?
「凄いな。フリートさんはこれに勝てるのか? 」
「いえ、全盛期なら勝てたんですけど、今では相打ちぐらいだと思います。」
これに相打ちはすごいと思うよ? それ以前に全盛期なら勝てたって何者?
「なんで全盛期じゃなくなったんだ? 」
「分かりません。」
「え? 」
「何故か、気づいたら、急に使えなくなってました。」
色々あるんだね。
「それは……大変だったな。」
「ある程度戦えるので、良かったです。」
光が弱まると、二人が倒れている。
「ったく、火力おかしいだろ。」
「……つよい……。」
なんとか気力は残っているようで、思い思いの感想を述べている。
「これを耐えるのは素直に凄いね。でも、戦えないようじゃ意味が無いね。」
抉られた怪我も気付けば治っている。
「……クッ……いやだ……。……負けたくない……。」
「こんなやつにさえ勝てねぇのかよ! 」
スメイトが二人にトドメを刺そうと弾幕を張る。
「スメイトさん! これ以上はやめてください! これは決闘ですよ? ! 」
フリートさんはなんとか二人を助けようとしている。
「カピュアちゃん、君の言うことは正しいね。でも、この二人は君を洗脳して妹だって思わせているんだよ。そんな人は、僕が手を汚してでも倒さなきゃ。」
「やめてください! お願いです! 」
「……いやだ……死にたくない……誰でもいいから助けて……。」
フリートさんとソラの二人は涙を流し、セイカは歯を食いしばって拳を地面に打ち付けている。
『汝、我の助けを求めるか? 』
どこからもとなく声が聞こえる。
「……誰……? ……いや、関係ない……助けて……。」
その声に反応したソラが助けを求める。
『承知した。汝の奇跡を信じよ。』
辺りに光が現れるが、先程の攻撃とは違っていて暖かく包み込むような、そんな光だ。
光が収まったとき、そこには見覚えのある人影が……。




