十九話 買い物デート?
蒼が起きた時は二人で仲良く話していたため、かなりニヤニヤされた。
そして今、フリートさんと買い物に来ている。
「なんだか、デートみたいですね。」
冗談めかして言ってくる。
やばい。そう言われると意識してしまうじゃん。凄くドキドキしてきた。やばい。心臓張り裂けない? いやでも死んだら、好きな人とのデート中に殉職できたってことになる? かなり誇り高きことになるよ? あの世で永遠に自慢できる事だよ? 「俺は殉職できたことを自負している。」って言えるよ?
「買い物デートって普通は、服とかアクセサリーとか買うものだと思うけどな。」
今の変じゃなかった? 返しとしていつも通りだったよね? フリートさんといるとたまに冷静さを欠いてしまうから、気をつけるようにしないとなぁ。
「でも、一成ってオシャレとか興味なさそうですし。」
「まぁ、そうだな。オシャレセンスが無さすぎて、蒼に何度叱られたことか。」
今になっても、ズボンに服を入れるのがダサい理由が分からないんだけど、同士居ないのかな? それと、上下の色を揃えることとかさ。
「もう、ダメですよ。デート中に他の女子の名前を出すなんて、私に興味無いのかなって思われますよ。」
デートじゃないじゃん! ってツッコミを入れたい! ていうかデートって何 (哲学)? 定義を教えてください。
返し方分からないから、聞いてみようかな。
「実際に思うのか? 」
「はい…。まぁ、少しその人に嫉妬をしますね。」
嫉妬するんだ。うん。分かってたことだけど、会話の続け方が分からないんだけど。
「そうなんだな。出さないように気をつければいいか? 」
「そうですね。その方が嬉しいです。せっかくのデートなんですから。」
だーかーらー、デートじゃないじゃん! 買い物してるだけじゃん! デートとか言われる度に心臓が5m飛び上がるじゃん。死にかけるじゃん! 殉職できるじゃん! (歓喜)
「そうだな。でも、デートなのかこれ? 」
「違うんですか? 」
「俺はただの買い物だと思ってるが……。デートの定義を教えてくれ。」
フリートさんは衝撃を受けたような顔をする。
「男女が一緒にどこかに行けば、デートじゃないんですか? 」
「そういう考え方もあるのかもしれないが、なにせそんな経験は一度もないんでな。」
更に驚いた顔をする。
「アサギリさんのことだから、たくさん経験があるのかと思ってました。」
「ゲームの中なら……いやギャルゲーですらやったこと無いな。」
そんなことを話しながら、歩いていると後ろから声が聞こえる。
「あっ! フェル姉じゃん。ひっさ〜。」
「……フェルト姉さん……。……その男の人誰……?」
フリートさんと一緒に振り向いてみると、燃えるような赤い髪と、落ち着いた青い髪の女性がいる。
《原文》
可碧目愈白
女青他欲然
今時看又過
何日是付合
《訓読文》
可ハ碧ニシテ目ハ愈白ク
女ハカミヲ青クシテ他ハ 欲ス然エント
レ
今時ハ看ス又過グ
何レノ日ニカ是レ付キ合ワン
漢詩のルール? 知らないね、そんなもの。押韻とか覚えてしかないし。
《現代語訳》
カピュア (フリートさん)の髪は鮮やかな緑色、俺の目はいっそう白く見える。
女性の一人は青々と、もう一人は燃えるように赤い髪をしている。
そうしている間にみるみると時間は過ぎてしまう。
いつになったら (フリートさんと)付き合うことができるのだろう。
一成 絶句
ふぅ、疲れた。漢詩のオマージュ (パロディ)ほど、疲れるものは無いね。しっかりと頭を使わなきゃいけないからね。
「久しぶりですね、二人とも。こちらの男性は、アサギリ・イッセイさんです。」
「へぇ、フェル姉も男ふっかけてんだ。結構やるじゃん。」
フリートさんをフェル姉と呼ぶ赤髪と八重歯が特徴的な女性が肘でフリートさんを突っついている。
ん? フェル姉? 妹かなにか? 赤髪だからフレイム……フレイム? どちらかと言えば羊肉だけど。
「ち、ち違いますよ。ただのパーティメンバーで、アサギリさんが、リーダーなだけですよ。」
「……でもフェルト姉さんはモテる……。……きっと相手も好きって思ってる……。」
「相手もって、まるで私が好きって思ってるみたいじゃないですか。」
「……私が一番姉さんに好みが似てる……。……私がそう思ったから聞いたけど……違った……?」
落ち着いた雰囲気の青髪の人が、小悪魔のようにニヤリと笑う。
青だからあおい! いやこれは既にいるから……青……空は青いから……スカイ?
「そんなことは……。ないとも言えないですけど……。」
「……ほら……。……やっぱり好きなんでしょ……? 」
なんだろう。俺を置き去りにして会話が進んでる気がする。
それに、フリートさんがデレた? 気の所為だね。そんなことあるわけないし (絶望)。
「ま、これ以上いて邪魔になったらいけないし、アタシたちはいなくなるよ。行くよ、ソラ。」
「……分かった。……もう少し居たかったけど……姉さん、なにかあったら念話を飛ばして……。」
「分かりました。アサギリさんの次に頼りにしてます。」
そう言って、二人は離れていった。
なんか、夕立みたいな二人だったなぁ。荒らすだけ荒らして、後始末せずに帰るんだもん。
「おい待て。そんなに頼られても応えられないんだが? 」
「なら、頼りになるぐらい頑張ってください。」
「他力本願過ぎる……が、まぁ俺の座右の銘が他力本願だから文句は言えないか。」
俺たちは買い物を済まして、宿に戻るまでに歩き出す。
「そういえば、前買いに来た時に白っぽい髪に、白っぽい目……まさかな……。って言われたんだが、なんでか分かるか? 」
「あぁそれは、魔皇と呼ばれる魔の長がいて、その魔皇が白髪に白目の女性なんですよ。ある程度学のある人ならその事を知ってますから気にすることはありませんよ。」
「そうなんだな。」
どこぞのハーフエルフみたいに類似してなくて良かったね。
「やぁ、カピュアちゃん。こんなところに居たんだね。」
今度は正面からフリートさんの知り合いにエンカウントしたみたいだね。
エンカウントした人は、黄色に髪に黒目といった容姿をした俺と同じくらいの年齢の男だ。
さっきの二人と協力したら信号機できそう (小並感)。
レベリングの途中でもないから、帰ってもらっていいよ。
「スメイトさん。久しぶりですね。」
「そうだね。学園以来かな。」
蚊帳の外感がとてつもなくする定期。
「ところで、その男は誰かな? 学園では見たことない顔だし、新人の冒険者かな。そんなにわかごときがカピュアちゃんと同じパーティなんておこがましいね。」
新人でまとめてるし、初対面なのにごときって言葉とか使ってるし、タメ口で言い返しても問題ないね。
「バカみたいに偏見するんだな、お前。」
「初対面の相手に向かってタメ口とか礼儀がなってないね。これだから、新参はダメだね。」
「初対面の相手におこがましいとか言ってるやつが何言ってんだか。」
俺は注意の意味を込めて発言する。
「ほら、おこがましいとか言ってさ。小さい頃に習わなかった? これだから、出自の悪い物は。」
あー。会話通じてないねこれ。
「出自なんて関係ないだろ。」
「ねぇ、君。話聞いてた? 家柄が悪いから、教育を受けられないに決まってるよね? それとも、ろくに教育も受けてないからこんなことも理解出来ない? 」
凄い。ここまでブーメラン発言できるとか、もはや天才だと思うね。
「いや、教育受けているのに人の話を聞かないやつもいるけどな。それに、俺は脈絡を掴めないことを自覚してるだけマシだな。」
「はぁぁ。自分のことを他より優れてると勘違いする人こそ、一番ダメだね。」
一つ大きなため息をつかれる。
いや、だからマシって言ったよ?
「いや、俺は優れてるなんて言ってないんだが。」
「ほら、自分の行動に自覚がなくて、覚えてない。こういう人が社会をダメにしていくんだね。」
凄すぎない? 伏線全部回収してるよ。自分で言ったことが全部ブーメランとして戻ってくるって、どんな気持ちなんだろうね。
普通の人ならストレス溜まるんだろうけど、こっちは面白くてたまらないんだけど。楽しすぎる。
突然、後ろから火の玉がスメイト? の顔を目掛けて飛んでいく。
「あー、わりぃわりぃ。アンタが余りにもウザかったんで、思わず手が滑った。」
飛んできた方向をみると、先程の二人が居た。
「なんで、居るんだ? 」
「そりゃあ、ちょっとばかし出来の悪い姉に助けを求められて来ねぇわけにはいかねぇだろ。」
「……けど幻滅しないであげて……。……そこも姉さんのチャームポイント……。」
二人の息のあったコンビで、経緯の説明とフリートさんを擁護する。
「出来の悪いなんて言わないでくださいよ。」
「……それは事実だから……。」
「あーそうだな。ま、だからアタイが活躍できんだけどな。」
仲睦まじく会話しているところに、怒りの籠った声が聞こえてくる。
「僕は喋ってただけなのにいきなり魔法を打つなんて酷いね。君も家柄が良くないのかな。」
「あ? なんだ。魔法の無効化か。いや、弱体化の方があってんな。残念ながら、アタイらの方が上だわ。」
「……それに、私たちは姉さんの妹……。家柄は同じ……。」
「スメイトさんの言うようにいきなり魔法を打つのはダメですよ、セイカ。」
フリートさん。俺が言える立場じゃないけど、空気を読もう。きっとラノベみたいに面白いことが書いてあるから。
「ったく、しゃぁねぇな。ウザくねぇやつにはしねぇよ。」
「はぁぁ? 君たちのような人がカピュアちゃんの妹? バレないと思って嘘ついても無駄だね。カピュアちゃんには妹なんて居ないからね。」
「あぁ? 妹っつったら妹なんだよ。」
いやいやいやいやいや、会話が混沌としてる。おかしいおかしい。
「そんなわけないね。過去に一人っ子って言ってたんだ。カピュアちゃんが嘘をつくわけないからね。」
ちょっと前から思ってたけど、フリートさんへの信頼が半端なくない? なに? フリートさんは信仰対象なの? それは非常に共感できるけど。
「あの、スメイトさん。言いづらいんですけど、妹が出来たんです。」
フリートさんが顔を伏せて言うと、スメイトは困惑する。
「は? いやカピュアちゃんが言うからにはそうなんだろうけど。だとしたら、この二人は何歳になる? 」
「なにつってんのかわかんねぇが、ボコられたくなきゃ、さっさと逃げな。さっきフェル姉に注意されたばっかだしな。」
「はぁ? 人のことをすぐに決めつけるなんて、どうかしてるね。やっぱ妹ってのは嘘で、カピュアちゃんが洗脳でもされてるね。」
「……悪いことは言わない……。……逃げた方がいい……。……セイカと姉さんがいると誰も勝てない……。」
「カピュアちゃんが強いのは認めるけど、そこのセイカとか言うやつが強いのは嘘だね。僕に勝てるのはカピュアちゃんだけだからね。」
俺に勝てるのは俺だけだー。の方が面白かったのに……。
というか、かなり俺の出番がない案件。
「喧嘩はダメですけど、決闘なら飛ばしますよ。どうするんですか? 」
「アタイはもちろんするに決まってんだろ。そこのガキはちょっと痛い目にあいたいみてぇだしな。」
「その自信はどこからくるのか聞きたいね。僕に勝てるのはカピュアちゃんだけだって言ってるのに。」
「アンタこそ、どっから自信くんだよ。」
「飛ばしますね。アサギリさんは私に掴まっててください。」
なんで俺だけ? まぁいいや。
俺は疑問に思いながらも、フリートさんに掴まる。
空間が歪み、俺たちは転移させられた。




