表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世の朝は未だ遠く 〜Zwischen Traum und Erwachen〜  作者: レンリ
一章 三千大異世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/101

十八話 デンジャラスフード

「ほら、早速苦情が来たぞ。」


 ノックされたことで蒼は静かになったけど、根本的な解決にはなってないんだよなぁ。

 蒼がうるさかったのが問題なんだし。


「すみません。開けてもいいですか? 」


 隣を見ると、蒼がかなり焦ってる。

 なにをそんなに焦ってるんだか。そんな焦る必要ないのになぁ。


「あぁ、入ってきて貰って大丈夫です。」


 俺は少し声を大きくして、扉の先の人物に呼びかける。


「(ちょっと一成、なに部屋に入れてるの! ここままじゃ私が怒られるじゃん。)」


「いや、何故小声なんだ? それに、今回は怒られないから安心しろ。」


「(なんでそれが分かるの! いい加減なこと――)」


 扉が開いて、蒼は口を閉じる。


 ほら、やっぱりフリートさんだった。なんで蒼は声でわかんないのかなぁ。


「フェルじゃん。なんで来たの? 」


「来ない方が良かったですか? 」


 フリートさんがなかり不安そうな表情をする。


 まずい! フリートさんを不快にさせることだけは、それだけは避けなければ……。


「いやいや、そんなこと全然ないが、部屋まで来たことを謎に思ってな。」


「それは、クジョウさんは毎日ギルドに行っているのに、今日は来てなかったので、何かあったのかなと思いまして……。」


 人が居ないことに気づける洞察力、気づいたら心配して部屋まで来てくれる優しさ……。この子完璧では?


「それは慧眼(けいがん)だな。」


 褒めたつもりだったが、フリートさんは


「そんなに眼光が鋭かったですか? 」


 と不安げな表情をする。


 あー。同音の炯眼と間違えたんだね。可愛い。

 というか、不安になりすぎでは? 自分に自信がないタイプかな?


「火に同じの炯眼(けいがん)じゃなくて、慧眼(えげん)の方の洞察力が凄い慧眼(けいがん)だな。」


「そうなんですか。私、てっきり炯る(ひかる)かと思いました。」


「なんでこの二人が話していると、こんなに会話に入りにくい空気になるんだろ。それに、話もよく分からないし。」


 蒼が二人の空気をぶち壊してくる。


 まぁ、今の俺はフリートさんの幸せオーラに包まれているからぜんっぜん心が動かない。

 このオーラを全世界に巻き散らせば、戦争なんて起きないのでは?


「慧眼ぐらい覚えておけ。そんなんじゃ知的なキャラの言葉を全くもって理解できないぞ。」


「待って、知的なキャラってけいがん? とか使うの? ! 」


「そうですよ! 頭の良いキャラは小難しい言葉ばっかり使うんですから! 」


 フリートさん、それは偏見だと思う。


「いや、知的なキャラでも……というか、かなり出来るキャラは人に合わせて言葉を変えると思うんだが……。」


「あっ、確かによく言葉を変えるキャラもいますね。」


 やばい。俺の言葉を納得してくれたという事実だけで三日生きられる。で、三日後になると、 「会いたい会いたい」ってなってまだまだ生きられる。

 あれ? これもう何があっても無敵では?


「ところで昼ごはんはどうするんだ。今から買い物に行くか? それか――」


「だから急なの! もっと頑張って繋いで! 」


 蒼が文句を言う。そして、俺の台詞に反応したフリートさんが驚いた顔をする。


「えっ? まだ、食べてなかったんですか? 」


「ちょっとあってな。具体的には蒼の作った危険物を無理矢理食べさせられて、ちょっと前まで俺一人が気絶してたからな。」


 ほんと、あの黒いやつは危険物取扱資格がいると思う。


「クジョウさん、それはその危険物とはなんですか? 」


 かなり真剣な眼差しでじっと蒼を見つめながら、フリートさんが言う。


「いやいや、待って! なんか、私が悪いみたいになってるけど、違うから! 」


「なにも違わないだろ。あんな料理は危険物か兵器かどっちかだ。」


 今度は目を少し見開いて俺の方に向いてくる。


「アサギリさん、料理を危険物か兵器扱いはさすがにダメですよ。」


 フリートさんは優しく諭すように言う。


 凄い。優しい。可愛い。推せる。

 だけど、これはさすがに反論しないといけないなぁ。


「確かに普通なら料理をこんな扱いはダメだな。だが、聞いて欲しいんだ。あれはダメだ。料理扱いするべきじゃない。食べて貰うのが一番なんだが、正直それすらもして欲しくない程だ。」


「いや、だから酷いって! 」


 俺と蒼の言葉で覚悟を決めたのか


「分かりました。その料理はどこですか? 」


 と言って辺りを見渡す。


「俺の言葉を聞いてたか? 」


「はい、聞きましたよ。だからこそです。アサギリさんが味わった苦しみは、私だって味わいます! 」


「分かった。その覚悟は認める。だが、最後に聞く。本当にいいんだな? 」


 できることなら、食べて欲しくない。好きだからこそ傷ついて欲しくない。


「はい。いくら言われても、もう私の心は揺らぎません! 」


 ここで、引き止めるのも本人の覚悟を疑うようなものだね。やめておこう。


「私の料理で大袈裟なんだって! 」


 蒼が的外れなことを言う。


「そんなことを言うなら蒼も食べてみればいいだろ。」


「別に食べても死ぬわけじゃないんだし、いいよ食べるよ。」


 蒼も地獄の食事に参加することになった。


「なら、気絶したときは俺が見ておくぞ。」


「ところで、その料理はどこですか? 」


 まさか、蒼のやつ! 全部捨てたの? !


 と思って慌てて台所の方を向くが、そこにはしっかりと漆黒之最恐王(蒼の料理)があった。


「その、真っ黒なのが蒼の手作りだ。」


「えっ? 本当にこれですか? 」


 驚くのも無理はないね。見た目で判断できる人は、絶対に居ないし (言い切り)。


「うん。それで合ってるよ。」


 蒼は恥ずかしげもなく平然と答える。


 虚ろな記憶の中で「これは大丈夫な黒さだから」とか言ってたし、自信があるのかな?




 ん? あれで? 気絶で自信あるの? 自信がない時は何が起きるの? 食べたら爆発でもするの?


「じゃあ、食べますよ。」


 気付けば、二人は黒を食べるところまで進んでいる。


「行儀は悪いが念の為に布団の上で食べたらどうだ? 」


「そうですね。」


 そう言ってフリートさんは靴を脱いで、上がる。


 待って? 今まで玄関でずっと立ってたの?

 でも、なんか嫌な予感がする。もう少し玄関の近くに居た方がいいような。そんな気がする。なんでだろ?


 とりあえず直感に従って玄関の近くまで移動していると、フリートさんが段差につまづいて、体勢を崩している。


「え? フェル? 一成? 」


 いやいや、なんでこのタイミングで?

 違う! そうじゃない! 支えなきゃ!


 俺は駆け寄って、フリートさんを支える。


「あ、ありがとうございます。段差が見えませんでした。」


「そうか。とりあえず、怪我しなくて良かったな。」


 良かった。謎の直感が発動して良かった。怪我しなくて良かった。


「なんで、一成は転ぶ前から近寄ってたの? ! 」


「俺の直感スキルはB+だからな。時々あるんだ。嫌な予感っていうか、急な使命感ってのがな。さすがに未来予知程は出来ないが。」


 多分、俺が意識して認識できていない程の微かな変化を本能が気づいて、それが違和感とか予感として現れてくれているだけだと思うけど。今回は足が上がっていなかったとか、体の軸が少しズレてたとかかな?


「それかなり凄くない? ! 」


「アサギリさんのスキルは直感なんですね。」


「いや、スキル自体は他にあって、システム外スキルみたいな感じだな。」


「えっ? かなり凄いじゃないですか。」


「好きなように予感ができるわけではないけどな。」


 そんなことを言いながら、蒼のベッドまでエスコートする。


「気絶したあとは見張ってるから安心して食べてくれ。」


「なんで、気絶するって決まってるの! 」


「ほら、早く食べろ。」


 二人は小さくちぎったダークオブダーク(真なる黒き物)を口に入れる。


 二人のうちの二人……つまり、この食べ物を食べた人は全員気絶した。


 あの、蒼さん。自信があったんですよね? これ何かに利用出来ないかな? 持ち歩いてて、いざとなったら魔物に食べさせるとかで使えるかな? 自信の無いものとか使えそうだし。


 そんなことを考えていても暇なので、フリートさんの顔を眺めて癒されておく。


 安らかとは言えないけど、ここまで可愛いと、喜怒哀楽の全ての表情が可愛いと思えてくるからね。


 かといって、ずっと寝顔を見続けるのは客観的に見て気持ち悪いし、伝説 (笑)のラノベでも読んで待とうかな。


 しばらく読んでいると、フリートさんが意識を取り戻す。


 え〜と、今が新キャラの植物族が出てきたところで、だいたい230ページぐらいだから、二時間ぐらいかな。


「ごめんなさい、アサギリさん。アサギリさんの言う通りでした。」


 フリートさんがベッドから降りながら、謝ってくる。


「あぁ。だから食べて欲しくなかったんだ。」


「あれは食べ物って言わない方がいいです。」


 なにか怖いものを見たかのように怯えている。


「まぁ、中途半端に美味しくないよりかは武器になるだけマシじゃないか? 」


「ふふっ。そうですね。これを持っていたら、大きな魔物に食べられずに済みますね。」


 微笑み、軽口を返してくれる。


「でも、そうならないように守ってくれるのを、期待してますよ。アサギリさん。」


 しっかりと俺の目を見て、笑顔で言ってくる。


 かわいい。これって告白? いやいや、かわいい。これで俺のことかわいい。好きなのかな? って思うのは、消しゴム拾っかわいい。てくれたとか筆記用具貸しかわいい。てくれたとかで好きなのかな? って思うぐらいかわいい。痛い人の考えだから。平常心平常心かわいい。


「あぁ、自信はないが任せろ。その為にも出来の悪い生徒だが、魔法を教えてくれよな。」


「はい。喜んで教えますよ。優しく教えますから、安心して下さいね。」


「てことは、フリートさんはこれから先生か。

 ……せんせ〜。バナナはおやつに入りますか?」


「そうですね。おやつに入りま〜〜せん! 」


 笑いながら、ふざけて答えてくれる。


 なんだろう。事件があってからかなり距離感が近くなったような気がするなぁ。蒼、ありがとう。……! そういう事だったんだね。二人が仲良くなるように手伝ってあげるってこの事件を起こすってことだったってことだったのね。


 蒼が起きるまでそんなこんなで雑談しながら待った。蒼はフリートさんが起きてから起きるまでに一時間以上かかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ