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この世の朝は未だ遠く 〜Zwischen Traum und Erwachen〜  作者: レンリ
一章 三千大異世界

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十六話 第二次ご飯論争

 今回は無事に宿に着いた。蒼が居るって素晴らしいね。


 そんな俺は今、蒼に質問責めにされている。


 なんで?


「じゃあ、一成の好きな人の髪型は? 」


「だから、なんでそれを教えなきゃ行けないんだ。俺の好きな人を言ったところで俺にも蒼にも利益がないだろ。せいぜい俺が損するだけで。」


「そんなことないって。恋バナ聞くと私は楽しいし、一成は好きな人と仲良くなるように手伝って貰えるし。」


 よし、計算をしよう。

 まずは蒼が手伝ってくれることの利益を10としよう。

 そして、俺がフリートさんが好きと知られることの損を∞とする。

 10-∞=-∞

 つまりこれはした方が損する! (ドヤ顔)


「で? 一成はいつフェルに告白するの? 」


「は? 」


 蒼の突飛な発言に思わずマジトーンで反応していまう。


「だって、それ以外に居ないじゃん。

 一成は二次元の好きな人はどれだけ好きでも推しって言うけど、今は聞いているうちに好きな人って言ったじゃん。それで天然って感じがするってことはまだ分かってないってことだから、最近会ったってことかなってなって、最近会った人で一成が好きになりそうなのはフェルだけだから。」


 なんだろう。詰め将棋してる気分。詰め将棋苦手なんだよね。オセロより択が多いし、何より自分の駒が相手に仕えてるの見ると、裏切られてる気分になるし。


「そんなことに頭使うぐらいなら、勉強に使え。」


「どう? 当たってるでしょ。長い間幼なじみしてるんだから。」


 蒼が身を乗り出して聞いてくる。


 幼なじみするってなに?


「もしそうだとして、どうするつもりだ。」


「どうするも何もないよ。本当は嫌だけど、一成の応援をするだけだって。」


「おい待て、本当は嫌ってどういうことだ? フェルトのことが好きとかか? 」


「そんなことないって。なんで目の付け所はいいのに間違えるかな。」


 ?????

 目の付け所はいいと言われたけど、どゆことマーク。


「よく分からないが、とにかく手伝わなくて結構だ。そもそも、蒼に手伝ってもらっても付き合えるわけないしな。」


 蒼は意外といった顔をして、


「意外と脈アリだと思うけど。」


 とよく分からないことを言う。


「まぁいい。これでこの話は終わりだ。晩ご飯食べて早く寝るぞ。」


 俺は買ってきた食材をいつもの方法で切って、焼く。


 なんか、最近焼いてしかないような気が……。でもまぁ、フライパンしかないから仕方ない仕方ない。あと水は貴重だし。


 そして、食べて寝る。


 なんか、ものすごく適当な気が……。






 □□□□□□□□□□□□□□□□□


 目が覚めて、少ししてからあることに気付く。


 あっ、剣回収してない。

 重いからわざわざ持っていこうという人は居ないだろうけど、あれがないと剣ないよになるんけど。戦闘スタイルだって投影して飛ばすっていうカッコイイ戦い方しか出来なくなるし。

 早く取りに行かなきゃ。


 そんなことを考えているうちに、今日も蒼の恒例行事が始まる。


 今日はなにかな?

 なんだろう。これを心待ちにしている自分がいる。まぁ奇想天外なところとか面白いしね。


 しかし、いくら待っても足音が近づいてくることはない。


 おかしい。布と布が擦れる音はしてるのに。

 まさか!

 ・

 ・

 ・

 やっとまともになってくれたの? じゃあもう寝たフリも意味ないし、起きよ。

 今日は回収した後は掃除でもしようかな。


 そんなことを考えながら、身体を起こし、変なことが起きてないか蒼の方を見る。

 そこには下着姿の蒼が……。


 とりあえず顔を逸らして、怒られることのないようにする。


「なんでここで着替えてんだ。」


「ちょっと、なんでこんな時だけ起こさなくても起きるの! 」


「そんなの俺の自由だろ。ていうか、起きる時間は自分でも決められないだろ。」


 判断材料が声だけだが、怒っているのと、恥ずかしく思っているのが、手に取るようにわかる。


 あの、人の感情を読み取るのが苦手な俺でさえ分かるって、どれだけ怒ってるの?


「まぁ、ごめん。」


「いいって言うまでそのまま居てよ。」


 声は先程と比べて小さくなったが、その分しっかり威圧が込められている。


 布と布が擦れる音が耳に入りながら、ぼんやりと窓の外を眺める。


 魔法使いたいなぁ。あんな自滅型の魔法じゃなくて。

 ん? でも魔法をアルコールなどの燃えやすいものだとすると、それを他の物に移すとかで使えそう?

 昨日の最後は、飛ばずに暴発したから燃えたんだよね? 飛ばず方法と魔力調節の方法を考えた方が良さそう?


「もういいよ。」


 お声がかけられる。


「把握。だが、なんでここで着替えてたんだ? 」


 おr……(わたくし)には烏滸(おこ)がましい愚問だと分かっていながらも、質問をする。


「いや、面倒じゃん。」


 私が予想していた答えの斜め下の回答をしてくださる。


 流石蒼様、私めには思いもよらない考えをしてらっしゃる。

 いや、それだけ? もう飽きたからこれ以上執事みたいな言葉遣いはしないけどさ。


「なら、文句言うな。」


「でも、一成だって、起きる時にいまから起きるよーって言わないのも悪いじゃん! 」


 つまり蒼は俺に 「今から起きるぞ」って言いながら起きることを要望すると。


「いやいやいやいやいや、そんなことを言って起きる人が居たら普通に怖いだろ。少なくとも俺は怖い。」


「同棲してるんだよ? それぐらいのルールは決めとかないと。」


「二箇所突っ込ませろ。同棲じゃないだろ。同居だろ。あと、それぐらいのルールって言うが、言った後にシーンとした時の虚しさがとてつもないことになるだろ。」


「同棲でも同居でもどっちでもいいじゃん。」


 蒼がとんでもないことを言う。


「いや、普通にダメなんだが? 同棲は結婚を前提にしている恋人関係にある二人が住むことだが、同居は一緒に住むことだ。まず、俺と蒼は恋人関係でも、結婚を前提にもしていないだろ。ま、定義は曖昧だがな。」


「えっ? そうだったの? ならいっその事、同棲にしちゃう? 」


 驚きながらも、かなり望外な返しが帰ってくる。


 帰ってこなくていいです。出てってください。あCジャパンは応援していますから。

  (あをローマ字変換)


「俺とフリートさんを応援しているんじゃなかったのか。」


「いや、冗談だって。」


 からかわれているだけも嫌なので、からかい返してみる。


「にしてはかなり真剣なトーンだったような気もするが。」


「そ、そそんなことないって。」


 蒼は顔が赤く染まっている。


 あれ? 思ってたより……ていうか、かなり動揺してる? からかわれると弱い系の女子?


「ほ、ほら、早く食べべて、い行くよ。」


「かなり動揺してるが、大丈夫か? 」


「いや、一成がそ、それを言う? ! 」


 動揺しながらも、ツッコミをする辺り、流石としか言えないね。伊達に長年俺の幼なじってるだけある。


「そ、そそうだ。今日は私が朝ごはん作るよ。」


 動揺していることを紛らわすためか、突拍子もないことを提案してくる。


「いや、いい。というかやめてくれ。」


「遠慮しなくていいって。」


「遠慮じゃないんだが、というか身の危険があるんだが。」


「さすがに料理で身の危険は酷くない? ! 」


 やけに自信があるんだけど。フリートさんに料理でも教わった? そんな時間なかったけど。


「そこまで言うなら任せるが、食べ物を無駄にはするなよ。」


「分かってるって。」


 蒼は鼻歌を歌いながら、料理を始める。


 あの、鼻歌を歌うぐらい余裕があるって事だと信じてるよ? 間違えても緊張をほぐすための鼻歌ではないようにしてよ?


 黒い本の最後にあるおまけだか本編だか分からない伝説や神話の小説を読みながら待つ。


 今日は 『種族人してたんですが、魔王になっちゃいました。』でも読もうかな……じゃないよ! なんでこんなラノベみたいなタイトルなんだよ!


 あらすじを読んでみると

『恋をした相手が魔族だったため、自分が魔族になることで結ばれようとしたとある男の物語。魔族になるどころか気づけば、魔族の王である魔王になってて、大変なことに……。

 そんな魔王が巻き起こすドタバタ異世界ラブコメ! 』

 と書かれている。


 だからラノベか!


 しかし、実際に読んでみると謎な部分をかなり入れていて、伏線の考察が捗る。


 これ、あれだ。タイトルとあらすじのせいで読む人が少ないタイプのやつだ。


 そんなことをしているうちに、蒼の料理が完成したようだ。こちらに歩み寄ってくる。


「ほら、一成食べて。」


 お皿には黒より黒く、闇よりも暗いかと思わせる程の黒さのものが乗っている。


 え? なに? 誰か爆裂魔法でも使った?


「真っ黒だが食べられるのか? 」


「大丈夫だって、これは大丈夫な黒さだから。」


 大丈夫な黒さ? こんな世界一黒いみたいな色をしているのに?


「いや、でもな。こんな見た目のものを食べようとは――」


 口の中にその謎物質を入れられて、俺は意識が遠のき始める。

 最後に見た光景は、何故か顔を染めて照れている蒼の姿だった。







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