十五話 恋に燃える男
「凄いですね。二回目でそんな明確に思い浮かべるのは珍しいですよ。」
そんなこと言ってもあんなに長い詠唱で戦闘中に使えるかって言われると微妙なことに……。
「アサギリさん、今日はあと一回にして帰りましょう。」
「なんでだ? 」
振り向いて質問をする。
「魔力はあまりにも少なくなると、体が不調になるんです。初めての魔法はロスが多くて、あと一回程にしておいた方がいいんですよ。」
フリートさんは非常に名残惜しいといった表情を浮かべる。
「いや、でも――」
「でもじゃありません。本当に見に危険があるんです! 」
「前、測ったときは2000近くあったが……。」
「なら、まだまだしましょう! 」
一気に表情が明るくなり、 「はやく、ほら早くしましょう」と急かしてくる。
なんだろう。気のせいかもしれないけど、さっきより強く背中に当たってる気がする。それと、フリートさん可愛い。うん。無心無心。
「次は私はあまり手助けしませんので、自分で魔力を操って見てください。」
「把握」
俺は先程のEを胸から腕に押し出して、手のひらまで届かせるイメージでやってみる。
「永遠なる焔よ、我はこれより汝を従える。我に従い、我に託し、我に委ね、我に協え。そして――」
なんか、さっきは手のひらだけにEが集まっていた感覚だったけど、今回は腕全体にEが集まっている感覚がある。
「――赫灼の炎をもって、全てを焼き尽くせ! 火属性初級魔法 『火炎玉』」
俺の腕がまるで燃えているかのように熱くなる。いや、実際に燃えている。
思わず腕が曲げてしまうが、腕自体が燃えているので効果はない。
いや、熱い熱い熱い熱い熱い。
「え? えっ! アサギリさん! 」
「ちょ、待って、一成? ! 」
慌てた口調でフリートさんと蒼が俺の名前を呼ぶ。
「ウォ 『ウォーター』」
水が消火して、なんとか酷いことにはなっていない。
にしても熱かった。それに、服がそれこそ使い物にならなくなったし、魔法って恐ろしい。
「『ヒール』」
少し火傷になっていた腕を、暖かく、優しい光が包み込み、昨日の怪我ごと癒されていく。
これがフリートさんの可愛さの力? !
最近の異世界は可愛ければ、傷が癒えるんですね。それか、単純にフリートさんが女神かなにかか。とりあえず、フリートさんの可愛さは凄い。
フリートさんは火傷が残っていないか腕を優しく触って確認している。
そっと触れられるだけでかなり幸せ。触るだけで人を幸福にできるスキルでも持ってない? それに、雪のように白い綺麗な肌。可愛いが具現化したものだったりする?
「とりあえず、回復魔法はかけましたが、痛くなったら言ってくださいね。またヒールしますので。」
でも、痛いだけでヒールはもったいないような気がするけどなぁ。
「あぁ、ありがとうな。でもあんまり、魔力の無駄遣いはしない方がいいんじゃないのか? 」
「仲間に回復魔法をかけることのどこが無駄遣いなんですか! 」
フリートさんが真剣に、そして少し怒りながら言う。
「軽い怪我なら勝手に直るからな。だから要らないと思ったんだが……。」
俺の考えを言うが、それでも真剣な眼差しで
「軽い怪我でもダメです! 毒をもつ魔物も居るんですから。」
「わ、分かった。」
あまりの気迫に思わず頷いてしまう。
けど、心配してくれているからここまで言ってくれるんだろうなぁ。フリートさんに心配されているという事実だけで幸福感が湧いてくる。
「今日はもうやめときましょう。」
「なんでだ? 」
「さっきみたいに燃えだしたら大変です。それに、痛いのは嫌ですよね? 」
痛いのは嫌です。だから……このネタはやめとこう。
「分かったが、最後に一回だけいいか? 」
「仕方ないですね。これで最後ですよ。」
フリートさんは 「本当に最後ですよ。」と言いながら、安定の体勢に移動する。
「さっきのはおそらく、魔力が手のひらではなく腕に集まってしまったので腕が燃えたのでしょう。ですから、手のひらに集めて下さい。そして、それを飛ばすイメージです。」
押し出さずに集めるってどうすれば……。
液体を動かす……高低差? 液体以外で押し出す? 関係ないけど流動層って空気を送ると液体みたいになる特性だからもしかして魔力もこんなのだったりしない? それか衝撃を加えると固くなるダイラタンシーか。
動かす方法……イメージ……。とろみのある液体じゃなくて、命令を下せる生物。なおかつ量を調節できるもの。
……! スライムってイメージでいけるかな。スライムが動いて手のひらまで行って、そこから飛んでいくイメージ。
「カークス、ヘーパイストス、プロメーテウス、カカ、ヘスティアー、ウェスタ。アドラヌス、ウゥルカーヌス、スタタ・マテル。――」
「待って、急によくわかんない言葉になったんだけど? ! 」
今回はEが塊で移動している感覚がある。
やったか? !
「――アシャ・ワヒシュタ、アータル。ロギ、ロキ。カグツチ、カマドガミ、ミカハヤヒノカミ! ! 」
スライムのようなEは手のひらまで移動していたが、外に飛び出すことなく、内側で爆発する。
結果、手が燃えて二人が慌てて消化をする。
俺はフラグ回収の神なことを忘れてた。はぁぁ。前にバトロワゲームで友達としてる時に、「スナイパーなんて、そうそう当たらないって。」って言った途端にスナに当てられた時を思い出したよ。
そうさそうさ、つまり僕はそんなやつだったんだよ。
「アサギリさん、大丈夫ですか! 」
「一成、また燃えてるし。」
今度は少しずらして言ってくれる。
そう。それがありがたい。まぁ、蒼のセリフは無視して大丈夫かな。
「少し手が燃えただけだ。にしても、どうやって魔力を外に打つんだ? 」
癒しているのか手のひらを触っているフリートさんに魔力のコントロール方法を聞いてみる。
「そんなことより本当に大丈夫ですか? 内側が痛むとかありませんか? 」
「今のところはないな。」
「なら良かったです。今のは完全に魔力暴走の暴発だったので。」
魔力暴走? なにそれ。
消失? 物凄く早い別れの歌?
「つまり? 」
「火属性が暴発したので、手の内側で爆発が起きている可能性だってあるんです。」
え? 怖い怖い。
「えぇ、怖すぎないか? 」
「だから、言ってるんですよ。今のは魔法式に魔力を込めすぎたんだと思います。」
「あー、さすがに神話の火神の盛り合わせでは威力が高すぎたのか。」
「なんですか、その料理みたいな言い方は! 」
「火神のつかみ取りの方がよかったか? 」
「どっちでもダメです! 神様にはちゃんと敬意を払って下さい。」
「でもな、俺は無神教だしな。いや神はいるな。いちばんの推しは神と同等かそれ以上の存在だな。」
ほんと、フリートさんは 《神》。いや、もはや 《神》超えて 《》まである。もう人間では理解できない存在。
「ちなみに、その推しは誰ですか? 」
無邪気に、そして残酷な質問をしてくる。
これは、答えるべき? いや、でも、うーん。これで 「気持ち悪いです。」なんて言われたらもう立ち直れないし。いや、この清き口と聖なる声でそんなことを言うはずがないね。
一応ぼかして言うことにしよう。それが一番。
「えーと、まずはとても顔立ちが綺麗で。仕草一つ一つが可愛くて。心も汚れなく純粋だな。」
「それで、他にはなにかありますか? 」
フリートさんが随分と食い気味に聞いてくる。
「他には、ちょっと天然っぽい感じがするな。」
「誰なんですか? ! 」
「私も気になるかも。」
質問責めにあっているなかに、蒼も参加する。
「本当は女子にこんな話したら面倒なことになるから言いたくないんだ。特徴言っただけマシだと思ってくれ。」
「一成、前にも言ったと思うけど、女子たちが好きな人を言うのは、これ私のものだから横取りしたら許さないよ。ニコッ。っていうことだからね? それに、言ってくれれば私だって手伝うし。」
「いや、私のモノってまだっていうか、その人の所有権らその人本人にあるだろ。あと、ニコッって圧かけるな。それに、手伝うって言われてもな……。」
俺がおもわずフリートさんの方に目線を向けると、それを心配だと思ったのかフリートさんが
「何を言ってるんですか。私だって手伝いますよ。」
とかなり的外れなことを言う。
まぁ、そんな所も可愛いけど。可愛いけど!
手伝うってことは付き合ってくれたりするんですか?
「手伝ってくれると言ってくれるのは嬉しいんだが、今回は絶対言わないぞ。」
「そうですか。」
「まぁ、手伝って欲しくなったらいつでも手伝うよ。」
フリートさんは落ち込み、蒼は前向きにとそれぞれ違う反応をする。
そして、これ以上は魔法は危ないと言うことで現地解散になって宿に戻った。
あぁ、もっと一緒に居たかった。
……あれ? 二人で協力して倒した場合ってカード表記どうなるの?
恋に燃える(物理)




