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この世の朝は未だ遠く 〜Zwischen Traum und Erwachen〜  作者: レンリ
一章 三千大異世界

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十四話 マジカルミラクル火炎玉

 女子率が高いパーティで女子二人に指名された俺は拒否する権利もなく、成り行きでリーダーになってしまった。


 人権ってどこにいったの? 僕の権利は? 侵害された?


 蒼いわく、 「一成は初めてモンスター倒した時、凄いしっかり指示出しできてたから。」というのが理由らしい。


 フリートさん、蒼に脅されて仕方なく俺を選んだとかない?


 そして、今はフリートさんの実力を見るということになっている。


「分かってるとは思うが、あんまり魔力を使い過ぎるなよ。」


「はい。気をつけます。」


 頭を何度も縦に振って、分かったということを表現する。


 うん。可愛い。


 俺たちを見つけて突撃 (そういう習性? )してくるイノシシにフリートさんは手のひらを突き出すと、一筋の光がイノシシを襲う。

 イノシシは痺れたのか、突然うずくまってピクピクと動く。


 これって電気なんだったら心臓に当たると止まるのかな?


「トドメはお願いします。」


「把握」


 俺は大剣を交換して、慣性を味わいながらイノシシにトドメを指す。しばらく慣性のままに動いた後に、ゆっくりと停止する。


 慣性の法則ってすごい。でも、一人でする時はこの後隙をなくさなきゃただの的に成り上がってしまうからね。

 的で成り上がるとは一体。


「そういう魔法って俺でも出来たりするのか? 」


「はい。やってみますか? 」


 俺は首を縦に振り、肯定する。


「ちなみに魔法を使ったことは? 」


「ないな」


「分かりました。」


 そう言ってフリートさんは俺の後ろについて、両腕を掴んでくる。その力はそっと触れる程度でくすぐったい。そして、抱きつくように身体を近づける。


 やばいやばいやばいやばいやばい。ほんとにやばい。何がとは言わないけど、背中に当たってる当たってる柔らかいです。理性がやばい。

 そうだ! こういう時は素数を数えればいいんだ。

 2.5.7.11.13.17.19……。

 ここまでは暗記してるから意味ないんだけど。


「アサギリさん、大丈夫ですか? 痛かったりしたら言って下さい。」


 フリートさんが心配した声色で聞いてくる。


 歯医者さんかな? そんなことを考えてないと恥ずかしさ、罪悪感で死にそうなぐらいやばい。嬉しさよりも申し訳なさが勝ってる。

 蒼の視線が気になるんだけど。気のせいかもしれないけど、俺の背中に視線が届いてるような気がするんだけど。ていうか、ガッツリ見てるんだけど。


「では、始めますね。」


「分かった。」


 身体の中で存在しない筋肉を使うような、どこが痒いのか分からないような、そんな不思議な感覚に襲われる。


「アサギリさんは【空間】【無】【闇】に適性がありますね。それと、 【火】【氷】に少しだけ適性があります。どの属性にしますか? 」


「じゃあ、火魔法の練習で」


「では、右腕を伸ばして手のひらを突き出して下さい。」


 俺は命令に従う。


「いきますよ。」


 右腕になんともいえない感覚がする。


 なんだろう。痛みではないし……。一番近いのは、少しくすぐったいかな? いや、くすぐったいのと痒いのがどこか分からないって感じかな。


火炎玉(フレイムボール)って言ってみてください。」


「Flame ball.」


「発音良過ぎません? 」


 発音よく言ってふざけるのが精一杯なんです。でもふざけてないと、理性が持たないんです。


 しかし、発音が良すぎたのかいくら待っても火球が現れることがない。

 後ろを振り向いて見ると、顔を伏せて、目を合わせないようにしている。


「アサギリさん……非常に言いづらいのですが、魔力制御器官の働きが少々弱いです。」


 フリートさんは気遣って、弱々しく教えてくれる。


「つまりどういうことだ? 」


「魔力をコントロールしにくいんです。」


「じゃあ、俺は魔法が使えないのか? 」


 せっかく無駄に余り余ってる魔力を交換以外で活かせると思ったのに。


「いえいえ、そんなことありません。ですが、詠唱に時間がかかるといったぐらいです。」


「そうか、詠唱は威力を高める以外にそんな効果もあったな。」


 良かった。三日前にあの黒い本の知識は読破しておいたからなんとか、ついていけている。


「火属性のフレイムボールを使うための長めの詠唱を考えて下さい。」


「あぁ、任せろ。文の詠唱を考えるのは得意だ。」


 アニメを観まくって、厨二っぽい技名を考えるのが気づいたら特技の一つになってたからね。他にはほとんど生活に使えない知識を溜め込むのも特技。

 え〜と、火系統なら文にめらめらは入れられる。あとはかっこいい言葉遣いを選べばいけるか。


「思いついた。」


「じゃあ、もう一度いきますから詠唱して下さい。」


「めらめらと(さか)(ほむら)の力を、我は望む。(かたち)を持たず、物の貌を変え、者の貌を留めるその力を欲す。天まで焦がすその火を、(われ)神火(しんか)として、扱ってみせよう。されば、その力を貸し出せ。火属性初級魔法 『火炎玉(Flame ball)』! ! 」


 無駄に長い詠唱が上手くいったのか、見事手のひらから火球が飛び出し、狭い範囲の草を軽く焦がす。


「アサギリさん、上手く行きましたね。」


「いや、黙って聞いてたけど、今の完全に大魔法の詠唱だったじゃん! 」


 フリートさんの笑顔と褒め、蒼の困惑とツッコミが一斉にくる。


「俺は厩戸皇子(うまやどのみこ)じゃないぞ。」


「なにそれ? 」


 え? 厩戸皇子を知らないの? 本当に日本人?


「聖徳太子の別の呼び方だ。それぐらい日本人の基本常識だろ。」


「いや、都道府県名を四十個言えない人にに日本の常識を言われたくないんだけど。」


 都道府県……知らない子ですね。


「あれは、覚えにくいのが悪い。それと方向音痴に地図を覚えろは辛すぎる。」


「え? アサギリさんは方向音痴なんですか? 」


「うん、そうなんだよ。この前なんて買い物に行って宿に帰るまでで迷ってたんだから。」


「ちょっと可愛いですね。」


「あっ、他にもご飯をメシって言わなくてね――」


 蒼とフリートさんの井戸端女子会が始まったところで居心地が悪くなり、周りの警戒を始める。


 女子に自分のことを話題にされてるのが一番辛いかもしれない。だって陰キャのことを話す時って蔑み貶し (じ)辱めの三銃士じゃん。……惨めの語源ってこれだったりしない?


 周りを眺めながら、剣を地面に突き刺す。


 ふぅ、自分の背丈よりも大きな剣を突き刺すのは厳しかった。けど、これで英雄の伝説の剣として語り継がれることだろうね。


「アサギリさん、もう一度やってみますか? 」


 井戸端女子会が終わったのか話しかけてくる。


「あぁ、もちろんだ。」


 フリートさんはまたあの体勢になる。


 あの、柔らかいものが当たってる自覚あるんですか? そろそろ心臓が破裂しそうなんだけど。


「次は魔力の流れに集中して下さい。体の中にとろっとした液体ある感じです。それが詠唱している間にゆっくりと動く様子を感じ取ってください。」


「分かった。」


 俺は背中ではなく、右腕に全神経を集中……嘘だ。ほとんどの神経を集中させて、感じ取る準備をする。


「火・炎・焱・焔・焰、分子(ちいさきもの)を動かし、出来る者よ。汝、その力を我に與えよ。(いにしえ)より受け継がれし人の情熱を――」


 じんわりと熱を持った何か (以降これをE(エネルギー)とする)が胸の辺りから腕に向かって流れていくような感覚がある。そのEは段々と手のひらに集まる。


「待って、さっきと詠唱違わない? ! 」


 なんか蒼が言っているが気にせずに続ける。


「――醜く儚き感情を、顕す(あらわす)者よ。我が忠実なる犬となりて、この世に現れよ! 火属性初級魔法 『火炎玉(ふれいむぼおる)』」


 手のひらのEがなくなる感覚と共に、先程と同じような火球が飛び出し、変わらず草を焦がす。


 うん。発音はあんまり関係ないんだね。それと、詠唱もそれを表していればかもだけど、関係は今のところなさそう。


「どうですか? 分かりましたか? 」


「あーまぁ、なんかとろみのある液体では分からなかったけど、E(熱を持った何か)が胸から腕、手のひらと伝って、放つ瞬間に消えたのは分かった。」


「凄いですね。二回目でそんな明確に思い浮かべるのは珍しいですよ。」

なろう系なのかなろう系じゃないのかよくわかんない。


※作者になろう系にする意図はない。

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