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この世の朝は未だ遠く 〜Zwischen Traum und Erwachen〜  作者: レンリ
一章 三千大異世界

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十三話 ヒロインx

ブックマーク2人に増えてた。嬉しい。

 昨日は色々あった。蒼が一緒にひと狩りいこうって言ってきて、引き裂かれて……。案外なかったね。

 そして、現在進行形で筋肉痛になっている。


「一成、昨日の傷大丈夫? 」


「大丈夫だ。出来れば、ヒールをかけて欲しいが。後はパーティに魔術師が欲しい。」


「そんなこと言っても……。魔法使い……わかった。ギルドに行って、パーティに入ってくれる人が居ないか探してくる。」


 蒼は部屋から飛び出して行く。


 今日は忠犬の日かな?


 暇なので、髪でもとかしたり、ほんをよんだりして、しばらく待っていると、コンコンと二度ノックされる。


 いや、誰? 蒼はノックなんてしないし……。もしかして部屋を間違えられた?


 そんな事を考えているうちに扉が開き、天使が入ってくる。


「初めまして。クジョウさんに誘われて、パーティに入ることにしました。」


 腰まで伸びたサラリとしたパステルカラーの緑の髪に、それと奥深い宝石のような緑色の瞳。そして、何よりは女子としての凹凸が蒼と比べてしっかりと出ている。身長は俺より低めに見える。


 待って、やばい。可愛い。何これ? 二次元から飛び出してきたの? そんな技術│異世界ここにあるの?


 その天使は右足を半歩引いて、スカートの裾を軽く掴んでカーテシーをする。

 俺もしなければ失礼だと思い、立ち上がって、名前は分からないが、右足を半歩引いて、右手を胸に、左手を水平に伸ばしてお辞儀する。


 よよ、よし、天使扱いも酷いだろうから、愛着を込めてヒロインxって考えよう。なんだろうこの他にもたくさん居そうな名前は……。


「待って、一成なにしてるの? ! 」


 聞きなれた声が聞こえて安心する。


 ふぅ、良かった。蒼が居なきゃ、多分まともに会話できないと思うもん。


「カピュア・フェルト・ゴットフリートです。よろしくお願いします。好きなように呼んでください。」


 待って、名前がこんなに可愛いなんて反則では?


「え、あ、まぁ、初めまして。俺は朝霧 一成だ。珍しいとは思うが、一成が名前で朝霧が名字だな。」


「あぁ、クジョウさんと同じですね。」


 フリートさんが一人頷く。


 やばい。こんな()と同じパーティになっていつまで理性が保てるかな?


「なんと呼べば良いですか? 」


「好きなように呼んでもらって結構だが、蒼と同じように名字にさん付けでいいな。」


「じゃあ、アサギリさんですね。」


 なんとか顔を下に逸らしそうになるのを我慢する。


 やばい。破壊力がやばい。可愛いさもやばい。やばい。語彙力がやばいになってる時点でやばい。

 こんなの絶対一番の推しになる。でも俺の推しって全員不遇なんだよね。

 一番の推しだった人はあざと可愛い系の後輩に登場回数を減らされて、しかもその後輩の方がグッズが多い。

 ゲームのとある推しは、生前好きな人に裏切られて、思い込みだけで龍になって焼き殺した。ついでにそこまで強くない。

 他のゲームの推しは弱キャラの種類出身。

 他の作品の推しは脇役中の脇役。

 他の推しも絶対結ばれない。


 とまぁ、俺に関わったものは絶対不幸になるという運命があるんですよ。


 俺が黙っていると、会話が弾む訳もなく、蒼が救いの手を差し伸べてくれる。


「いや、会話しなさ過ぎ! ほら、好きな物の話とか」


「あ、そうなのか。初対面の人とあんまり会話しないからな。」


 俺はここまで言って一つの心配点を思いつく。


「……俺みたいな陰キャオタクと趣味合うのか? 」


 これを聞いて、フリートさんは驚き喜び尊敬の交ざったような表情をする。


 なんで? オタクって御神体かなにかなの?


「アサギリさんは陰キャでオタクなんですか? 」


「あぁ、まぁそうだな。」


「陰キャと言えば、 『確固たる自分を持つ』や 『無駄なことはしない』っていうあの陰キャで合ってますか? 」


 フリートさんが早口で生き生きと聞いてくる。あまりの豹変に蒼が軽く引いてる。


 いや、俺は可愛いと思う!


「考え方の違いだとは思うが、俺はそんな感じだな。」


 あ、そう言えば、初対面なのにものすごくタメ口で話してる。・・・あ、これ距離近いって感じで引かれてそう。けど、もう口調変えられないし……。

 モテないのは分かってるけど、こんな子と付き合うとか無理だろうなぁ。もしこの子の好きな子が出来たら精一杯応援しよう。


「じゃあ、もしかしてオタクっていうのも、 『好きな物を極める』や 『精一杯愛する』のオタクですか? 」


「まぁ、それもそうだな。ていうか、その語録みたいなのはどこから来てるんだ。」


「あ、ごめんなさい。つい。この言葉は学校の図書館にあって、確か 『エッノシー』さんの言葉だったと思います。」


 フリートさんは少し俯きながら答える。


 ていうか、なに? その人は陰キャでオタクだったの? この世界は陰キャとオタクに優しい世界なの?


「それはそんなに有名なのか? 」


「いえ、かなり奥の方にあったので、読んでいる人は少ないと思います。」


 この世界には学校があると。そしてフリートさんは読書家と。待って、趣味合うかもしれない! 可能性ある!


「本好きなのか? 」


「はい! アサギリさんも本読まれるんですか? 」


 フリートさんが数歩近づいて聞いてくる。


 距離が近い近い。なんか、甘い香りがしてきたし。肌もかなり白くて、見た目でも柔らかそうって思えるし。


「あ、あぁ。まぁ大抵は読みたいものがないからラノベ読んでるんだけどな。好きなのは異世界系のなろう系じゃないやつだな。」


 読みたいものは、国語の試験や教科書、ワークとかで面白そうって思うやつがあれば、買うようにしてる。


「異世界ものおもしろいですよね! ファンタジーも良いですけど、やっぱりSFの異世界がいいですよね。」


 ん? 異世界系でSF? あ、そっか。この世界だと現実でのハイファンタジーの立ち位置にスペースファンタジー (サイエンスフィクション)があるんだもんね。


「あーでも俺らの地元だと、異世界系はハイファンタジーが多かったな。」


 フリートさんの表情が俺にも分かるように沈む。


 やばい。会話は繋げないと!


「あー、でも神話とか伝説も好きで、こっちに来てからもちょっとは読んだな。」


「なら、三偉人は知ってますか? ! 」


 なんだろう。だんだんフリートさんが生き生きしてきる。水を得た魚ならぬ、話相手を得た二次元好き?


「最近読んだな。確か 『始まりの英雄』と 『史上最強の妖術師』と 『確定必中、一撃必殺の弓使い』だよな。」


「はいそうです! その中で誰が好きとかありますか? 」


「やっぱり弓使いだな。遠距離からの高火力ってのがかっこいいしな。フリートさんは何か好きな英雄とかいないのか? 」


「私の好きな英雄ですか……。やっぱり 『オワリの勇者』様ですね。勇者様は、自分の名前以外の記憶がなかったのに、それでも剣の才は秀でていて、みんなを護るために魔族と戦った。自分のことを顧みずにみんなのために戦うなんて、かっこいいですよね。」


「あぁ、そうだな。英雄はそういうもんだよな。」


 元の世界の英雄ではクズみたいなのが居たけどね。

 王妃と浮気した挙句、騎士団の分裂の一因になったヤツとか。

 神なのにめっちゃ浮気しまくる最高神さんとか。

 めちゃくちゃしてた神がいたから、引きこもった太陽神さん、そいつを外に出すためにほぼ一糸まとわぬ状態で踊った露出狂の神とか。

 三分の二が神だけど、伝説だからいいか。


「……あの、話が盛り上がってるところ悪いんだけど、みんなでモンスターを倒しに行かないの? 」


 言いずらそうに蒼が話しかけてくる。


 凄いね。こっちの世界に来てから、存在が空気になることが多いね。そろそろ、俺と同じようにシステム外スキルの 『隠密(ハイド)』を覚えられるんじゃない? なんだろう。悲しくなってきた。


「倒しに行くにしても、パーティリーダーはどうするんだ? 蒼がするのか? それともフリートさんか? 」


「そんなの――」


 二人は顔を見合わせて、


「一成に決まってるじゃん。」

「アサギリさんに決まってるじゃないですか。」


 と息ピッタリで話す。


 息ピッタリにするならセリフを揃えて欲しかったなぁ。なんか、微妙に合わせに来た感が漂っていてなんか残念な感じになってる。

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