十話 蒼の心
蒼side書くのたのちい
うー、ねむい。さすがに毎日モンスターを倒すのはつらいよ。けど、一成も頑張ってるんだから私も頑張らなきゃ!
私は気合いを入れて、のそのそと布団から出る。
横を見ると一成の寝顔が見える。
なんでこんなになんていうんだろう。うーん。綺麗じゃないし、かっこいいでもないし……。えーと、無防備なギャップ? とりあえず癒される!
いやいやいや、一成は友達友達! 友達の寝顔を見て癒されるのはおかしい! ボールは友達!
なんだか一成に似た考え方をし始めた気もするが、気にせずにクエストの準備をする。
銃弾はマシンガン以外も用意した方がいいかな。やっぱり近距離しか戦えないのは実際にやってみると結構辛いし。
スナイパーは絶対当たらないし、アサルトライフルとかにしとこ。
私は銃弾を作って、クエストに行く準備はしとく。
あとは一成を起こすだけだけど、どうやって起こそうかな。やっぱり上に乗ったりしてみようかな。ふふ、一成がドギマギしたら面白いなぁ。でも、一成も男だから押し倒されたり? その後に進んだり? そうなったら責任とってねって言って付き合ったりできるかも。やってみよ。
私はどうやって起こすかを決めて、早速とりかかる。
一成の上にまたがって、身体を揺らす。
「ほら、一成早く起きて。」
少しの間揺れていると、一成が何か喋る。
「……うぅ、おもい。」
「女子に向かって重いは酷いって! 」
何度か揺すってみるが、一成は目を開けることなくのいてくれと言うだけだ。
こうなったら意地でもドキッとさせる!
上に乗った状態のまま、一成に抱きついて耳元でささやく。
「(ほら、はやく起きないともっとしちゃうよ。)」
「こ、こいつ! 脳内に直接話しかけて……。」
「どう考えたらそうなるの? ! 」
ダメだ。一成のペースに持ち込まれてる。仕方ないから諦めよう。
一成から降りる。すると、やっと目を開けて起きる。私と目が合って一成が慌てて目線を逸らす。
ふふっ。なんとか作戦成功した。どうやったかと言うと、降りた後に顔をかなり一成に近づけておいたからね。流石の一成もこれにはドキッとしたかな?
「で、今日はなにがしたかったんだ。」
やば、まさか押し倒されたり、ドキッとさせたかったなんて言えないし……。朝起こすとか彼女っぽいからそれっぽく言っておこう。
「ほら、彼女っぽいことをしたかったから。」
「蒼は彼女じゃないだろ。」
「その時のための練習。」
「例外中の例外の俺で練習するな。」
一成で練習しなきゃ意味がないって言いたかったけど、これはさすがにバレるかな。
一成を惚れさすにはやっぱりあの方法かな。でもアレ使うとどうしてもその後の関係が保ちにくいんだよね。上手くいかないと関係を作り直さなきゃ行けなくなるから、嫌なんだよね。他にも方法はあるけど、あんまり一成には使えないだろうし。
「ところでなんで唐突に彼女っぽいことをする練習を始めたんだ? 好きな人でもできたのか? 」
「……じ、実は……。」
こう言えば恋愛相談をして、意識させることはできるかな?
「ごめん。そんな気軽に聞いていいものじゃなかった。悪いな。」
「恋愛相談される前に断った? ! 」
「恋愛相談とかされても、具体的な解決法とか教えられないし、そもそも二次元と三次元では恋愛までの道のりが違うからな。」
そういえば一成は二次元が好きなんだった。ツンデレ? とかヤンデレ? とかだと落とせるのかな?
「一成はもうちょっと現実に興味を持とうよ。」
「現実に興味を持ったところでなにかと得する訳でもないしな。最近の若モンの言葉は難しくてよく分からんのう。」
「ほら、もう損し始めてる。一成が分かる言葉言葉……。あっ、リアタイとかなら分かるんじゃない? 」
「リアタイ? │リ《・》ニ│ア《・》モーターカー│怠惰? 」
「使いにくすぎるでしょ! 」
「じゃあ│理科好きな│アタイ《・・・》? 」
「それも使いどころがないんだって。」
このままじゃ絶対正解しないよ。
「ヒントはリアから始まるよ。」
「リアから……ハーフエルフじゃないだろうし、リアルタイムで│怠惰中? 」
「惜しい! ていうか怠惰好きすぎるでしょ! 」
「そりゃああんなにキャラ濃い怠惰が居たらその言葉が気に入るに決まってるだろ。人気投票三位だぞ! 」
一成のことだし、どうせまたアニメキャラとかなんだろうなぁ。
「なんのキャラか知らないけど、怠惰はつかないから。」
「じゃあリアルでタイマン? 」
「それどういう状況? なに? 喧嘩でもするの? 」
一成はヤンキーじゃないし、そんなことないと思うけど物騒だなぁ。
「タイマンは怠惰の怠と傲慢の慢だからな? 意味としては怠けて仕事や義務を怠ることだな。」
「なにその言葉! 」
「その三位が一度使った言葉だな。油断怠慢って。」
とりあえずものすごく真面目そうなキャラなのは分かったけど、詳しくはどんなキャラなんだろ? 一成を落とす時のヒントになるといいんだけど。
「それはどんなキャラなの? 」
「簡潔に言えば、怠惰が嫌いな無用の働き者の狂人。」
きょうじんって聞こえたんだけどまさか狂人じゃないよね。そんなキャラが人気投票で三位になるわけないよね。
「ちなみに狂人ってのはどんな風に? 」
「なにかの拍子でスイッチが入ると、急に叫んだり全身を使って大きく表現したり、自分の指を噛み潰したり、石の壁に頭を何度もぶつけたり、急に冷静になったりする。」
「本物のやばい人じゃん! 」
「だから言っただろ。狂人だって。ちなみにその人気投票の一位はサブヒロインだったぞ。さすがに二位にメインヒロインは入ったが。」
なんでメインヒロインって一番人気出るんじゃないの? なんでそんなやばい人が三位に入ってるの?
私は思わず頭を抑える。
「その人気投票いろいろとおかしくない? 」
「いや、さすがに狂人が入ることは珍しいが、サブヒロインが一位に入るのは珍しいことではないな。主人公よりも他の方が人気なんてよくあるしな。」
「そうなの? ! 」
一成と居ると退屈しないね。……これは、友達にも思うことだから! 恋人にしか思うとかないから!
心の中で否定していると、私は自分が朝起きてから何も食べてないことに気付く。
「それより、お腹空いたんだけど。早く食べよ。」
「俺が起きるの待たずに先に食べれば良かったんじゃないか? 」
「嫌! 二人いるんだから、二人で食べるの! 」
私は言い切ってからハッとする。
こ、これはバレたかな……。いやいや、 「好きなのか? 」聞いてきたら 「一成は私の事どう思ってるの? 」って言えばいいんだ! いやいやいや、おかしい! なんで告白するときみたいなシュチュエーションになってるの! そうじゃないの! 一成に告白させるの!
「蒼、まさかお前……」
なにかに勘づいたような一成が言いづらそうにこっちに顔を向けてくる。
ヤバいヤバいヤバい。バレたバレた。
なんだか身体が少し熱くなってきた気がする。それに、心臓だって早く動いてる気がするし。
とりあえず、落ち着こう。顔を赤くしたり、動揺しなきゃバレないバレない。
私の心の準備が整う前に一成が口を開く。
あぁ、もう! バレたら意地でも付き合ってやる!
「親の愛を知らずに育ったのか? 」
熱くなっていた身体が急に氷水に浸かったかのように、落ち着いて考えることができるようになる。
なんか、さっきのが嘘みたい。身体も熱くないし、心臓だっていつも通り動いている。
本当に勘違いだったのかな?
私が黙っていると、勘違いしたままの一成が
「……え、あ、かなり言いにくいことなら、言わなくていいんだが……。」
一成は小声で 「いつもはこんなに勘が冴えてないのに、なんで今日はこんなに冴えてんだ? 」って言っているけど、どっちも一成の思ってるのとは違うんだけど。
「普通にせっかく二人で暮らしてるんだから、一緒に食べようってだけ! 」
「あ、そうだったのか。良かった。虐待にでもあってるのかと。」
「一成は深読みし過ぎだから。もっと気軽に考えて。」
でも、その深読みが優しくて嬉しいんだけどね。
「なら、早く食べて頑張ってこいよ。」
一成はご飯の準備をしながら、応援をしてくれる。
この一成のために頑張ってるんだ。いまは好きって気持ちを隠さなくていいや。どうせ一成は気付かないし勘違いするんだから。




