七話 まさしく幼なじみキャラ
危なかった。呪いが発動するところだった
晩御飯を食べ終わり、片付けも終わったことで違和感がなかった照明 (多分魔法、魔法って便利)を消して、ベッドに入る。
お風呂に入りたかったが、今日は早めに休もうというのと、一度働いてみてから今後どうするかを考えようということで今日は我慢することになった。
はぁ。これだから異世界は…。確かに異世界自体は楽しそうなんだけど、日本に慣れてしまってる俺たちはどうしても高望みしてしまうからなぁ。これでも異世界の方では生活のレベルが高い方だとは思うけど、どうしてもっていうのが…。
にしても、蒼がお風呂入りたいは分かるけど、俺が入りたいとか女子かな? (自虐ネタ)ほんと、救急絆持ち歩く男子が俺以外にいるのかな?
俺はそんなことを考えながら、冒険者の服で眠りにつく。
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「一成、起きて。早く! 」
なんだこのテンプレギャルゲー主人公みたいな展開は。
まぶたを閉じたまま、寝起きのぼんやりとした頭で昨日を思い出してみる。
えーと、暗い密室のなか蒼と二人きり……。
なにもないわけもあり、つまり何かある訳もなく (結果的に何も無かった)目を覚ました時に女子の声がすると。つまり、この人はていうかこの声は蒼ってことか。
目を開けて声のする方を向くと、赤目の金髪女子と目が合う。
もう一度まぶたを閉じて、布団を掴んだ後に金髪女子から離れるように寝返りを打つ。
「待って、今完全に目があったよね。」
「それはきっと気のせいだ。」
「めっちゃ喋ってるし。」
「うぅ、あと三分…。」
「それ起きないやつだから! 」
完全に俺のペースに持ち込んだところで今思いついたことでふざける。
「うぅ、あと三ヶ月…。」
「え、クマ? 冬眠! ? 」
したいことができた事だし、体を起こして目を覚ます。
「で、何の用だ。」
「ご飯作って欲しいんだけど。」
「はてな、はてな、はてな、はてな、はてな」
急にご飯作ってと言われましても……。
「いや、だから朝ごはん! 」
「いやいや、知らん。パンあっただろ。それでも食べたらどうだ? 」
「他になんか欲しいの。」
「しらん! 買ってこなかった蒼が悪い。」
正直、スキルを使ってもいいんだけど、スキルには全部弱点あるとか言ってたからなぁ。
「一成のスキル使えばいいじゃんか。なんでも出せるんだし。」
「そもそもスキルの弱点ですら分かってない状態でか? なんでそんな危ない橋を渡らなきゃいけないんだよ。弱点は回数制限、徐々に交換に必要なものが増える、なにかの状態異常がつく、とかだったらもう使えなくなるぞ。」
あ。筋力スキル使いっぱなしだった。まぁいいか。使えなくなったら神に文句言うだけだし。
「しょうがない。はぁぁ。でも、一成にはいつも迷惑かけてるし、今回ぐらいは許してあげる。」
蒼は分かりやすく大きなため息をついて、なんか許してくれる。
迷惑かけてる自覚あったんだね。朝条修好通商条約のアレで仕方なくついていってるからね。
俺たちはパンと昨日の瓶の水を飲んで、朝ごはんを終える。
「よし、ギルド行くぞ。」
「いや、急じゃない? ! もっと落ち着こうよ。」
「いや、ほっといてたらなに買うか分かったもんじゃないからな。」
「一成の中での私のイメージってどんなの? ! 」
「いや、女子のイメージが映えるものかなんか知らんけど、そんなものを爆買いしてるんだよな。偏見だがな。」
女子はほんと、怖い。普通に友達として接しているのに、裏では嫌いって思ってるとか。俺だったらそんな人にはまず関わらないから大丈夫だね!
「一成の中の女子のイメージは置いておいて、分かった。ギルドに行こう。」
なんか蒼が異世界慣れしてる気がする。なんでだろう。
とりあえず、ギルドに行ってクエストをこなすことにした。
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「Gランクですと、今はこちらの採集クエストが受けられます。」
採集と聞いて俺は嫌な予想をする。
頭のおかしい (真の天才の素質とも言う)数少ない友達が見た夢みたいに動物が植物みたいになることやその逆が起きてないといいなぁ。
ダイコンに手足が生えて、動き回るとか (実話)。夢の中でダイコン軍団とクラーケンが戦うと、ダイコン軍団の圧勝だったらしい…… (実話)。
それか、牛が植物みたいに地面に埋まって生活するとか (実話)。子牛の時は普通に地上で育つけど、大人になると急に地面に穴を掘って、植物みたいになる。そして、子供を産む時はしっぽの先から胚珠みたいなのを飛ばして産むらしい…… (実話)。
まぁ、うん。こんなことは普通の異世界では起きないよね。それこそギャグに極振りしたようなものじゃないと。大丈夫なはず!いや、包丁でダークマター作れる世界だからもしかするとあるかもしれない。ていうか絶対ある。
俺は絶望的観測をしているなか、受付さんは話を続ける。
「この回復薬の材料となるリストロ草を集めて来てください。集めて頂いた量によって買い取り金額が変わります。似たような草がありますが、見分け方は草に白いハートのマークがあるのがリストロ草。ちなみに、草にスペードのようなマークがあるのがヴェレノ草で、毒があるので注意してください。」
俺たちはリストロ草とかいうものを集める為に街の近くの森に向かうことにした。
いや、展開早くない?
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森まで歩いて、気持ち三十分で着いた。
蒼は一つのピストルをマシンガンに変えてリュックに予備のマガジンも入れて、完全武装で挑んでいる。
なんか、銃を持ってこんな銃にしたい! って願ったら変わるらしい。これが神クオリティ (物理)なんだね。それにしては俺の武器は全くもって使えないんだけどね。
俺は、まぁうん。使えない武器持ってても仕方ないよねって話で安定の荷物持ちをしている。
そろそろ荷物持ちとしての職業レベルがカンストして上級職になれそうなんだけど、いつになったらなれるんだろう。
「蒼。魔物が出たときは任せたぞ。」
「はぁぁ。なんで私、男子を守ってるんだろう。」
「そりゃあ、クラスで腕相撲がいちばん弱い女子に負けたことあるからな。」
あの時はほんと、『俺の筋力! 低すぎ! 』ってなったね。
「さすがにそれは嘘だよね。」
「実際にあったぞ。それ以外にも、女子に 『腕細! 』って言われたこともあったな。」
他にも 『手が綺麗』とか言われたことがあったはず。たしか、手をみてると落ち着くだっけな? なかり謎なんだけど、なんだったんだろうアレ。
「一成の女子具合がここまで来ていたとは……。確かに虫嫌いだし、力弱いし、優しいし、なんていうか子供っぽいし、自分で決めたこととか絶対破ってないし、植物とか好きだし、それにその、かっこいいし……。」
蒼が俺の特徴を言う。最後に少し頬が朱に染まっていた気がするがきっと、気のせいだろう。
「おい。なんか変なの混じってるぞ。」
「やっぱり怒るよね。謝るから――」
「かっこいいとか心にもないことを言うんじゃない。俺以外だと勘違いされて、面倒なことになるぞ。」
ほんと、辞めて欲しい。もし、仮に蒼が俺の事好きだったとしても (絶対に有り得ないけど)俺には推しっていう彼女がいるんだ! 推しと蒼に 『私たちのどっちを選ぶの! 』って言われたら間違いなく推しって答えるもん。確かに綺麗な方だとは思うけど、この異世界は基本的に水準が高いから蒼よりちょっと下 (主観)ぐらいの人なら大勢いたからね。
まぁ、主人公と結ばれないのが幼なじみキャラですし。
「なんだろう、この来ると思って覚悟してたのにそれが来なくて不意を付かれた感覚は。」
肩透かしだね、それ。肩透かしを食らったってことはなにか構えてたんだよね。何を身構えてだろう。優しいとか植物好きの否定かな?
「それは肩透かしを食らったって言うぞ。」
そんな雑談をしながら、リストロ草を集める。
これ、葉っぱの所だけでいいんだよね? 雑草みたいだからまず花とかないけど、根とか集めなくていいよね?
不安に感じながら、手の届く範囲のリストロ草を取り尽くし、集まっている場所に移動し始める。
——突然、横から衝撃が来る。
俺はそのまま身体が左の方に傾き、顔から倒れ込む。
だが、日頃からよく転んでいる俺は咄嗟に足を捻り、丸めた背中から倒れる。
「一成、危ない! 」
そのまま、蒼が俺の胸に倒れてくる。
俺は一瞬で脳を切り替え、状況を把握する。
にしてもちょっと蒼さん、顔が近いんじゃないですか? 息と息がぶつかる距離なんですけど。それに蒼から甘いようないい匂いがするんだけど。やっぱり蒼は女子だったんだなぁ。それにしては、俺に親しすぎるような気がするけど。男慣れし過ぎだと思うんですけど。まるで女同士の友達みたいな雰囲気がするんだよね。それに、ラブコメとかなら普通当たる部分が当たってない (気持ち的には楽だから嬉しい)し。
「蒼さん。流石に、こんな外で積極的過ぎません? 」
「違うから! それよりもは——」
「早く銃を構えて、敵への牽制。相手を傷つけないように数発なら撃ってよし。魔物ならできるだけ足を狙え。」
蒼をどかしながら冗談に六割、指令に七分、蒼に一割三分ぐらいの割合で考える。
そして、続いて指令を出す。
「今後の為にもレベルは上げておきたいが、だからと言ってこんなところで大怪我したら大損だからな。勝てると本当に思った時だけ交戦しろ。」
「分かったけど、なんでそんなに的確に指示できるの。」
蒼はマシンガンのセーフティを外し、左を向いて地面に向かって弾幕をはる。
プギューーといった甲高いイノシシのような豚のような鳴き声が聞こえる。
動きが止まったのか、蒼が思いっきり引き金を引いて更に弾をばらまく。
地面に薬莢がパラパラと落ちる。
残弾が切れたのか、魔物が倒れたのか、蒼は引き金から手を離す。
「倒したか? 」
「多分。」
ていうか、なんで一番下のランクのクエストで魔物に襲われたんだよ。いや、一番下だからかな?
「あー、はいはい。なるほどな。だから冒険者っていう職業があるのか。」
「え? どゆこと? 」
「普通にこんなところに来たら、さっきみたいに魔物に襲われるだろ。」
「うん。」
「だから、その代わりに命を張れる冒険者っていう役職を作ってんだ。しかも、冒険者の怪我とかは完全自己責任ってことにすると、持ってきた対象物の値段で危険な仕事を任せられるって事だな。まぁ、魔物討伐とかなら、多少は怪我保険とか効くかもだけどな。」
「えっ! 何それ酷! 」
「まぁ、魔物とかいる世界でなんとかやっていく工夫なんだし、別に冒険者しなきゃいけないって訳じゃないんだ。——あー、だから基本的に安いのが冒険者になる人を増やそうとしてることになるのか。」
「確かにそうだけど、やっぱりなんて言うか…。」
蒼が歯切れの悪い返答をする。
国の姑息な知恵がダメで、自分が動物に乱射するのはいいんですね。
「蒼もさっきの魔物に対して、銃乱射してたろ。まぁ、どうしても嫌だって言うなら俺だけで冒険者するが、ろくに使えない大剣一つで、まともに戦えると思うか? 」
「それは無理。あれだけ弱いのに、使えない武器持って戦えるわけない。一成だけを危険な目に合わせるぐらいなら私も行くよ。」
なんか、この世界に来てから蒼が少しずつデレてるような気がするけど、自意識過剰とかバカにされるだろうし気にしないようにしようかな。
「それが正解だな。」
ここで、後ろの方から草と草が擦れる音がする。
「あー、蒼。また任せた。今度は後ろからだ。音的に二匹以上いるかもしれない。」
「毎回思うけど、一成の指示が的確なのはなんでなの。」
さっきの鳴き声に引き寄せられたのか、銃声か。はたまた縄張りを荒らしていたと思われたかな? けど、文明の利器がある蒼に勝てると思うなよ!
蒼は草から飛び出してきた三つの影に、弾丸をプレゼントする。
よく見ると、一匹に集中して撃つのではなく、それぞれの足を狙って撃っている。そして、足の怪我で動きが鈍ったところに、残弾を撃ち切りリロード。残った二匹も落ち着いて撃たれて動かなくなる。
蒼さん、少し、それどころかだいぶ戦い慣れてません? どこでそんな知識蓄えたんだろう。陽キャ特有のネット? いや、陽キャはもっと外出てるよね。ならほんとどこ?
「一成、銃弾も少なくなってきたし今日はもう帰ろ。」
「了解」
俺たちは採ったリストロ草を袋に入れて、町へと帰る。
うーん。この稼ぎによってどうなるか変わってくるからなぁ。出来るならあんまりしない方がいいんだけど。
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