六話 第一次ご飯論争
ラノベで家庭科の勉強できそう。
俺たちは宿に戻ったが晩御飯のために、蒼は買い出しに行っている。
なんだろう。ものすごく嫌な予感がする。非常食入れるような人がまともなものを買って来るわけないでしょ。まともなものを買ってこなかった時のためにパンだけでも交換できるように準備しておこうかな〜。
俺がかなり不安な思考をしていると、ドアの向こうから足音が聞こえてくる。
いったいどんなゲテモノを買ってきたのかな (諦め)。
ドアが開き、蒼が帰ってくる。
「ただいまー。」
「いったいどんな食べられないものを買ってきたんだ? 」
「食べられないこと前提? ! そんな、おかしなものは買ってきてないよ。ほら」
蒼は靴を脱ぎ、買い出しのときに買ったと思われる袋の中身を見せるために俺に渡す。
中身はきゅうり・にんじん・レタスの野菜と主食の平たいパンが四つ、土器のようなものに木の栓がされたものが二瓶。
あれ? 案外まともなものしか入っていないんだけど。これは明日、空から槍か魚かカエル辺りが降ってきそう。
というか、なんでこの人こんなに慣れてるの?
「これで、晩御飯作って。」
蒼は、料理を俺に任せる。
きっと理由を聞いたら、苦手なことをはぐらかして買ってきたからとか言うんだろうね。
俺が料理できなきゃどうするつもりだったんだろう。
俺は袋から野菜を取り出し、備え付けのまな板 (何故あるの? )の上に置く。
そして、備え付けの包丁を手に取る。
―左手に電流がはしったような感覚に襲われ、思わず包丁をまな板の上に落とす。
あっぶないなぁ。神様、包丁ぐらいいいじゃないですか。それとも、俺がヤンデレラになるのを防いでるんですかね。
ルールを破ったからか、脳内に声が響く。
『あっ、ごめん。ボク、うっかりしてた。ごめんね。でも、包丁って武器になるからいいよね? ボクからのお願いだから、ね。』
なんだろう。会話が成立した気がする。このボクっ娘さんはきっとあの神様の遣いかなにかかな?
「ダメだ。俺、包丁使えない。」
「一成、一人暮らしなのに使えないの! ? 」
「いやー、異世界にきてからというもの物理的には使えるものが精神的に使えないようになってる。」
「また、なんか言ってるし。」
「ということで、斬るのは任せた! 」
「先に言っておくけど、私ほとんど料理出来ないから。」
「それが、女子特有の謙遜だと信じてるぞ。」
蒼がいやいやといった感じで包丁を握り、野菜を切り始める。
あの、神様。なんで蒼は包丁使えるんですかね。
『さっきは本当にごめん。ボクも反省してるから、蒼だけでも包丁を使えるようにしておいたからね。これで許してくれるかな? お願い。』
脳内にボクっ娘の声が響き、最後の部分で上目遣いを幻視する。
ほんと会話成立してるよね。そして、蒼がメシマズ属性じゃないことを祈ろう。
俺は自分のベッドに戻り、本を開き、適当に時間を潰す。
『其ノ弐:天使
天使は神の遣いとされていて、滅多に人前に現れることがない。』
やばい。蒼が心配になってきた。
俺は読書を中断し、蒼の料理状況を見に行く。
蒼の手元には真っ黒な暗黒物質が…。
ひとつの聞いていい? どうやったら包丁だけでそんな炭の塊みたいなのを作れるの? 包丁の摩擦?
「蒼さん。どうやったらそんなものを作れるんですか? 」
俺の質問に蒼は恥ずかしいのか頬を染めて、大声で捲し立てる。
「だから、言ったじゃん! 私、料理ほとんど出来ないって! 」
「いや、それは料理が下手のレベルじゃない気が…。」
「料理が下手なの! 」
蒼が俺の話を聞いてくれないので、俺も少し、嫌がることを言って差し上げる。
「体に切る時に使う道具付いてるのに、切れないとかあるんだな。」
「そうなの! 体にまな板が付いていても、切れないものは無理なの! 私なんて、どうせ料理できない生きてる価値のない人間なの! 」
やばい。どんどん蒼が卑屈になってきてる。卑屈なキャラなんて俺だけで充分なんですけど。なんていうか罪悪感が沸いてきた。
仕方がない。卑屈キャラの先輩として、俺が反面教師になる。
「そんなこと言ったって、料理はまだ出来なくても生きていけるだろ。コミュ障で、オタクで、新体力テストの判定Eの俺の方が社会に必要ないだろ。俺なんかがなにかした所でなんにも変わらないんだ。ま、なにも変わらないと考えた方が好き勝手にできるから楽なんだけどな。」
「待って、ネガティブなのかポジティブなのかわかんないんだけど。」
ふぅ、蒼さんをなんとかいつもの調子に戻すことができた。
それより、二人とも包丁使えないとなるとどうしようかな。
「にしてもどうするんだ。このままじゃそのまま焼いた野菜を食べることになるが。」
「そりゃあ、一成がなんとかするしかないじゃん。」
「人任せかよ。まぁ、その他力本願の姿勢は嫌いじゃないが。」
俺はもう一度包丁を握る。
本日三度目の電流が流れる。
分かっていれば耐えられないことはないんだけどさ、それでも痛いんだよ。神様、俺の分も免除してくれてもいいと思います。
電流の強さは徐々に強くなり、次第に耐えられなくなる。
「よし、スキルを使おう。」
俺は諦めて包丁を元あった場所に戻し、野菜と魔力を使ってスライスされた野菜を交換準備する。魔力消費は50程。
これも、神の気遣いだと思って後で文句を言おう。50も使わせるなって。それと、スキル便利だね。ありがとうって。
ダウンロードが終了して、切られた野菜が蒼じゃない方のまな板の上に落ちる。
料理をする上でほぼ絶対必要なあれがないんだけど。蒼が持っているのかな。
と希望的観測をして、蒼に聞く。
「油は買ってきてるか? 」
「え? そんなの買ってきてないよ。要るの? 」
「当たり前だ。油は熱を均一に伝える役割やフライパンに付きにくくする役割、あとは風味やコクをつける役割があるんだ。これで要らないと思う方がおかしいだろ。」
「分かった。明日買ってくるからそれでいいでしょ。」
俺は油を魔力103、さいばしを魔力45で交換 (以下略)してフライパンの中に入れる。
コンロの取っ手のようなものを捻り、温かくなったことを確認してまな板の野菜をフライパンに入れる。
フライパンは使えるんですね。よし、あの神に次会ったらフライパンで殴ろう。
あとは適度にかき混ぜて、焦げ目が付かないようにする簡単なお仕事だから、余裕だね。
「蒼、お皿の準備をしといてくれ。」
「どこにあるの? 」
「知ってるわけないだろ。可能性があるのは棚の中とかじゃないか? 」
「分かった。」
蒼がお皿を探し、見つけたところを確認して、瓶詰め塩コショウを魔力207で以下略する。
いい感じに焼けたところで火を弱め、最後に塩コショウを振って、全体に付くように混ぜて火を止める。
蒼が出したお皿に均等に分けて、使ったフライパンをシンクで水に浸して仕事を終える。
あとはお箸を二つ、見分けられるように赤と青を合計376で以下略する。
袋からパンを取り出して、野菜炒めと一緒に二人で仲良く食べたあとはフライパンを備え付けのスポンジで洗い、片付けをしっかりとする。
ここまでして思ったけど、なんていうか、神が狙って蒼だけ包丁使えるようにしてるような気がしてきた。
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