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ハイデンハイムのローレライ  作者: 樹本 茂
第二章 Besucher -訪問者-
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会敵9 夜半の行軍

”広場の一番奥に敵影発見、広場の中心から教会12時で10時方向距離300”


ミアからの報告を受け、俺も銃口を向けスコープ越しに視認したところだ。敵影は昼夜兼用スコープに、はっきりと捉えられている。時間は既に夜中の0時をまわっていた。


だが、様子がおかしい……


今、俺達は、南部国境を接しているチューリッヒ・リヒテンシュタイン連合の国内に50km越境し山間の谷間にある廃村に仕掛けをして敵が来るのを待ち伏せしているところだ。ミアは街道沿いを西側から見渡せる1700m離れた側面の崖の上で、俺は広場を南から見渡せる1500m離れた高台に陣取って、ミアと交代で廃村の監視をして既に8時間くらいになる。


そいつらは、俺がミアの無線越しのエンドレスおしゃべりをBGM代わりに聞きながら、眠りについた頃に現れた。


「ジレーネ。攻撃を待て」


俺は夜半でもはっきりと映る昼夜兼用スコープの中で動く敵の動作に違和感があり発砲の待機をミアに命じた。


それは、このオートリア陸軍の敗残兵が主力のチューリッヒ・リヒテンシュタイン連合軍に俺のような玄人がみて納得の挙動が出来る連中がいるとは驚きであったし、一番は奴らの装備が想定を超えていたからだ。


今や兵士一人の価値を優に超える暗視装置(ナイトスコープ)を装備し、頭から足元まで黒のコーティネイトで統一して顔までご丁寧に隠し、俺も良く使っていた全長が短く、折りたたみ式のストックを付け装弾数の多いマガジンを装着できる自国製のアサルトライフル(自動小銃)を構えている。このチューリッヒ・リヒテンシュタイン連合軍の一般兵がそんなものを装備して抜かりなく移動する様は俺にとって不可思議であり、違和感の塊でもあった。


「ジレーネ、撃つな。友軍だ。もっと言えば俺の古巣の連中だ」


俺はそいつらがさらに藪の中かから出てきて7人になった時点で答えを出した。


一体あいつら、こんな敵地の奥で何をしているんだ……

……既に目視で確認出来なくなった特殊部隊一個小隊の作戦内容に思いを巡らせながら、無線上で寝息を立てるミアをどうしてくれようかと併せて考えていた。

月~金 17時過ぎ更新です。

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