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ハイデンハイムのローレライ  作者: 樹本 茂
第二章 Besucher -訪問者-
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会敵00-1 シュバルツバルト撤退戦 10

 マジかよ。お前。射線が見えるのか?そんなはずねえよな。


「隊長、逃げられました」


「はあ? おめえら、ふざけんな。もう一回いけ!」


俺はこの目の前のムームーちゃんに命を助けられてしまった。まずは、お礼だ。


「ムームーちゃん。命を助けてくれたんだね。ありがとう」


俺は俺の上にいるムームーちゃんにお礼を言うと


「ムームー」


何か言ってきた。


「ムームーちゃん、ちょっとどいてね」


俺は丁寧にムームーちゃんの頭をどけて、立ち上がった。

刹那---闇の中から、音もなく、俺の前に、間合いに、男が現れ、突きを入れる動作が見えた。俺は、反射的に身体をかわし襲ってきた腕を右手で掴み、そのまま、左わきと腕で男の右手をホールドし、足払いをかけ、崩れた重心を利用して体重を預け引き倒してやった。奴の左手は俺の右ひざが奴の腕の骨の真上に乗って、開いた俺の右手はそいつの首を絞めた。


男は、俺の下でやがて苦悶の表情を浮かべおとなしく、全身の筋肉を弛緩させていった。


あぶねぇ。突き用のナイフもってやがった。俺がそいつのナイフをシゲシゲと見ていると、


「隊長、ご無事ですか?」


必要な時に席を外していた、指揮官付ががやってきて、聞いてくる。


「なあ、お前、遠目に俺が襲われているの見て無かった?」


「いいえ」


当然の返事をしてきた。


「まあいい。こいつ、どこの奴だ?」


俺の下で泡を吹いている男を検分していると、


「外見ではおそらく、民兵だと思いますが、動きを見る限り、特殊に訓練を積んでいる者たちと推測されます」


何処の奴らだ?


「ムームー」


ああ、ムームーちゃん忘れていたよ。

俺は心を通わせていると思いたい、地面に横たわるムームーちゃんを抱き起し、猿轡を取ってやった。


「ムームーちゃん、俺達は敵じゃない。言葉分かるか?」


「わかるよ。ありがとう。あなたの倒したこいつは私の昔の仲間。私を売ったんだ。売られて運ばれている途中で運んでいたそいつらは新フランスに襲われて、私は新フランスに連れていかれるところを昔の仲間が奪い返そうとしていたところよ」


何か知らんが、


「お前、モテモテなんだな」


「え? ははは、モテモテって、バッカじゃないの? あははは」


透き通る声の女が俺をみて豪快に笑っている。


「なあ、お前のそのお仲間って奴はあと何人いるんだ?」


「2人か……な、3人か……?」


「そうか。俺達は、お前も連れて行きたいと思うんだが、どうする?」


「それって、選択肢はあるの?」


「いや……ない」


「ふ~ん、そうなのね。それじゃご一緒する。わ。」


「悪いが、ボディチェックをさせてもらう。指揮官付き頼む」


ボディチェックを受けるムームーちゃんは華奢な体つきや声の具合と言い10代後半くらいだと思う。


「隊長、包帯はどうしますか?」


「お前、何で包帯まいてんだ?」


「暴れて、顔打ったのよ。売り物の顔に傷が残ったら大変だって手当てしていたわ」


こいつ、売春宿にでも売られるところだったのか……金だけの問題か?それにしちゃ……一個小隊を相手にしてまで奪い返したかったのか?この女を……


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