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ハイデンハイムのローレライ  作者: 樹本 茂
第二章 Besucher -訪問者-
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会敵00-1 シュバルツバルト撤退戦 4

1733時


声……歌?……歌声が聞こえる。何処からだ……


俺は崖の上に伏せ、何処からか聞こえてくる歌声に意識を集中していた。


俺が声の方を見ていた視界に入る橋、新フランスの奴らが構築していた防御陣地で動きが出た。

それは、まず、重機関銃の射手が背後の土嚢に仰向けになったのをカワキリに隣の重機関銃の射手へと伝播し、その陣地の周囲に立っていた歩兵5名が次々と崩れ落ちて行った。


「敵襲だ……狙撃か……」


俺はナイトビジョン機能付きデジタル双眼鏡で奴らが血しぶきを上げて倒れていく様を見ていた。


それを見ながら、


「指揮官付き、ここで展開している味方はいるか?」


いつの間にか、俺の隣で同じように伏せながら、双眼鏡で状況を確認していた指揮官付きが、


「11時方向、距離2,000、仰角4°、3人、ボルトアクション、12.7mm。付近にオンステージする部隊は無し」


こいつは、この指揮官付きは時々、こういう芸当をやる。要は、どこで狙撃して、どんな銃を使って、何人いるかを答えたのだ。やられている新フランスの奴らを見て。


「指揮官付き、歌が聞こえたような気がしたんだが? お前は聞いたか?」


「ローレライが出ました」


不思議な事を言ってきた。


「お前? そう言うの好きなのか? 伝説とか」


俺が普段、取り付く島の無いこのクールビューティーに、やっと見つけた人間性を嬉しく思い、問いただせば、


「そう言うことではありません。歌声を聞いたものは次の瞬間、死体になるしかない。この辺りの戦線ではメジャーなレジェンドです。射程1500mで正確に打ち抜いている事と攻撃の前に微かながら歌声を確認していますので特徴が合致します。故に、これはラインのローレライが出たと考えるのが合理的と上申します」


背中までのブラウンヘアを、艶やかに輝して、華奢な肢体を崖の上で腹這いにし、俺を見つめる竜騎士(ドラッヘ・リッター)唯一の女性隊員にして、随一の 分析能力を有する指揮官付き分析担当専任補佐官 は、俺を“ゴミ”と心で呟くのと同じように、ありふれた事象の一つだとでも言いたげに、はっきりと伝説を肯定した。

会敵00シリーズは不定期更新


本編 月~金 17時過ぎ更新です。

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