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ハイデンハイムのローレライ  作者: 樹本 茂
第一章 ハイデンハイムのローレライ
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会敵4 南部連合傭兵団

「戦果確認を頼む」


俺とミアはその足で俺たちが所属する傭兵団の司令部に向かい戦果確認のための映像メモリーを提出している。


傭兵団などと言っても個人事業主みたいなもので、それぞれが自分がやりたいオーダーをこなしているだけで、まとまって何かするような事は無い。金の出どころは、周辺の自治集合体政府が出しているのだが、一応、存在する統合政府もいくらか出資している。


政府系の正規軍の損耗を避けたい奴らの狙いと、俺達みたいなより多くの報酬を望む奴らの利害が一致して、いいバランスで成り立っている。


司令部と言っても紹介所のようなもんだ、フロアの正面にはカウンターが4つほどあって登記、登録、金の出入りをそこにいる嬢に口頭で伝えればあとは上手いことやってくれる。


「レオン、今日は7人かまあまあだな」


坊主頭の薄黒く日焼けした全体に胡散臭い男が声を掛けてくる。太い首に手、足。濃緑ベースの迷彩服を着たロートルだ。しかし、敬意は払う。


「団長。久しぶりですね。まだ、生きてましたか?」


俺が笑みを浮かべて右手を差し出す。


「ああ、まだ俺の順番にならんようだ。お前、そういえば1000万くらいになったんじゃないのか?」


俺の事情を知っている団長が金がさについて聞きながら、握手をしたまま話しこむ。


「いえ、まだ800ちょいですね」


「そうか……それじゃ、お前にとっておきのオーダーがあるんだがどうする?150だぞ。違約金50、1週間以内、至急扱いだが」


「150ってずいぶんな金額ですよ。どんな内容です?」


何やら不敵な笑みを浮かべている団長だが、今はとんと見かけない汎用軍事車両の破壊よりも高額な報酬を提示している。この、守銭奴どもがそんなに気前がいいとは思えない。


それに、俺達は基本的にでかい仕事は請け負わない。命を懸けているのだから、値段の高低はそのままリスクの高低でもあり、だから、今まで地道に少額で数をこなして稼いできたのだ。


「荷物を運ぶだけだ」


「団長、やめて下さいよ。そんなうまい話に乗るほど俺は阿保じゃありませんよ」


俺が呆れ半分で返すと、


「まぁ、そう言われるとは思っていたけどな。無くなり次第、終了だ。やるなら早めに頼むぞランカー」


どの程度、本気だったのか窺い知れる様な物言いで返してきた。


ランカーとは賞金金額、成功率共に月間トップ1%以内に1年以上居続けることで得られる称号であり、賞金金額の割り増しやエクストラメリットの恩恵などが得られる。因みに俺たちのエクストラメリットは賞金金額を一人分として得られるトップランカーにのみ与えられるものだ。通常はチームで賞金は分け合わなければならないところなのだが……


「それよりローレライ姫はどうした?」


「団長、もう手、良いですか?」


ジワリりと滲むおじさまの手汗に降参した俺は重い口を開く。


「お、すまないな。離すタイミングを無くしてな。それで姫は?」


「ミアならあそこに」


清算部門の窓口で受付嬢と何やら談笑しているミアを指さす。


「お、いたいた。相変わらずベッピンさんだなぁ。俺も話がしたいから呼んで? な?」


おっさんが可愛く俺におねだりしているのがとても不気味なのだが、


「ミア!」


俺が一呼びするとこちらに向き直り”何?”と手振りで返してくる。


俺が”こいつ、お話ししたい”とハンドサインで送ると

”イヤ”と笑顔で返し、手を振っている。


「振られましたね」


「難しいなぁ。うちの娘にも嫌われているから慣れてるけど……仕方がないな」


太い大男が肩を落として事務所へと消えていった。

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