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ハイデンハイムのローレライ  作者: 樹本 茂
第二章 Besucher -訪問者-
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会敵23 償い

「ミカド、随分なことをしてくれたじゃないか」


俺がミカドの前で秘匿にしていた作戦について抗議している。もちろん、奴の部下に見えないところでだ。


「すまない。俺にも上官がいる。そのあたり、お前なら汲んでくれるだろう? 本当に済まなかった」


「ああ、これがおまえでなかったら、あの一個中隊か大隊かしらんが全員、俺とミアに天国に送られていたぞ」


「本当に済まなかった。こういうのお前は一番嫌いだって俺は知っていてやっていた。俺を殴ってくれ、戦友を裏切った償いをしたい」


なんか、お約束の、感じ悪い気がしたので、


「ミア! ミカドの頭の上に、このリンゴを載せるからお前、目を閉じて撃て」


「ちょ、それは……」


ミカドの薄ら笑いが消えて、本当にやばい奴を見る目に変わっている。


「お前、ミアに送ってもらえるんだぞ。ありがたく頂戴しろ」


しばらく腕を組んでいたミカドは、何を思ったのだろう。俺を見返し笑顔で、


「……OK、親友を欺いた報いだ。それに、マリアはハイデンハイムのローレライなんだろう。それならば外すわけがない。やってくれ」


爽やかに言ってきた。


街道を背にして棒立ちになるミカドの頭に拳程度の青いリンゴを乗せて俺がミアに指示を出した。

16kgの重量級システムを膝立ちで構えるミアに殺気を感じるので、俺が不審に思い、


「ミア、当てちゃダメ。わかってる?」


そっと耳元で呟くと、俺を驚いた表情で見つめ返し、


「当てちゃダメなの?」


聞いて来た。


「ごめん、頭にあてちゃダメね。リンゴに当てて」


「あ、あぁ。リンゴ……目に入らなかったよ」


こいつやる気だった。間違いなく、頭をやる気だった。


「歌う?」


俺にミアが小首をかしげて聞いてくる。


「ミカド、歌要るかって!」


俺が良い顔をして目を瞑り人生の思い出を走馬灯再生中のミカドに聞いた。


「ウチは死ぬときは仏教だから、オプションでお経あるか?」


軽口を煽る余裕があるようだ。心配して損したよ。


「ミア、二脚(バイボット)使ってくれ」


いくら何でもそんな姿勢で撃たれたんではさすがに……そもそも、前提がリンゴに当たっておーってなるシナリオだからな。ミアわかってるよな?


「いくよ~」


ボールでも投げそうな軽い感じでスコープを除く金髪が、トリガを何のためらいもなく引き、腹に来る重低音と共に奴の頭のリンゴを跡かたなく粉砕していた。


「凄いでしょ」


既にミカドの傍で頭のリンゴの残骸を手で払っている。ミアは嬉しそうに笑顔でミカドに褒め称えろと迫っていた。


さぁ片付けだ。この音で大勢集まってくる前に。いくら何でも隊長の頭を狙ったとなればタダで済むわけがない

月~金 17時過ぎ更新です。

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