記憶を失った奴
〜街中〜
「すいません、ちょっといいですか?」
「はい?どうしました?」
「僕は誰ですか?」
「…いや、あなた何言ってるんですか。そんなの僕が知ってる訳ないじゃないですか。」
「そんなこと言わずに、僕は誰なのか教えて下さい!」
「どういうことですか。あなたはあなたでしょう。」
「本当にわからないんです。自分が何なのか、何のためにここにいるのか、何のために生きているのか。」
「いや意味分かりませんよ……あれ、もしかしてあなた、記憶を失ってます?」
「そうなんです。僕記憶を失ってるみたいなんです。」
「なるほど、そういうことでしたか。いきなり訳の分かんない事を言い始めたのでビックリしてしまいました。」
「すいません突然訳の分からない事を言ってしまって。それで、僕は誰なのか分かりますか?」
「いやー分かんないですね。ちなみに記憶を失ってるってどのあたりまで失ってるんでしょう?」
「それがよくわかってないんですよね…気がついたらここに立ってたんです。」
「うーん、家とかも分かんないですよね…まいったな。」
「そもそも家を購入していたかも分からないし、家族がいるのかも分からないですね。」
「んー、ちょっと僕じゃ対処難しいので交番に行きましょうか。僕が案内するので付いてきて下さい。」
「あ、分かりました。親切にどうも。」
「いえいえ、困ってる人を見かけたら助けないといけませんからね。」
そう言って2人は歩き出した。
〜20分後〜
「あれ、おかしいな。どこの角を曲がるんだっけ。」
「ずいぶん歩きますね。汗かいてきちゃいました。」
「あー、ごめんなさい。ちょっと交番の場所どこだったかなーって。多分もうすぐだと思います。」
「そうですか。………あ!」
「どうしました?」
「今何かを思い出せそうになりました!目の前に誰かが…誰かが立ってるのが一瞬見えました!」
「本当ですか!?それは誰ですか!?もしかしたらそいつに記憶を…?」
「…うーん、ダメです。まだ完全には思い出せそうにないです。」
「あー、そうですか。でもこうして歩いていたらまた何か思い出すかもしれませんね。さあ交番はもうすぐだと思うので行きましょう!」
そう言って2人は再び歩き出した。
〜さらに10分後〜
「あれー、おかしいな。交番ってどこだっけな。というかここはどこだっけ?」
「ちょっと、しっかりして下さい!大丈夫ですか?」
「うん?あなた誰ですか?僕の知り合いの人ですか?」
「いや何言って……あれ!?僕は……そうだ!僕はこの近くに住んでいる大学生でこれからバイトがあって…」
「あなた何言ってるんですか?ここはどこなんですか!」
「思い出したぞ!さっき一瞬目の前に出てきたのはバイトの先輩で…ああ、しまった!早めに行って先輩から話を聞く約束をしていたんだった!こんなことしてる場合じゃない!さようなら!」
そういうと青年は走って行った
「うん?あの人は何者なんでしょう?というかここは本当にどこなんでしょう?そして僕は誰なんでしょう?」
「あ、あそこにちょうど暇そうな人がいるからちょっと聞いてみましょうか。」
タッタッタッ
「すいません、ちょっといいですか?」