知 っ て た
「ひょっとしてシータ、前世の記憶があるのか?」
父の前に連れてこられて言われたセリフがそれだった。確かに赤ちゃんが魔法を使うというのはおかしな話ではあるが、いきなりそんな前世の記憶があるとか突拍子もない発想になるのか?だが、バレてしまった以上仕方がない。俺は発声がまだ出来ないため、遠くに伝えるための魔法を行使する。<|Telepathy≪テレパシー≫>
(そうなんだ。俺には前世の記憶がある。せっかくの息子なのに悪い)
「まさか自分の息子がそうだとは思わなくて驚いたけど、責める気持ちはないよ。前世の記憶があろうがなかろが自分の息子であることに変わりはないさ」
(そういってもらうと助かる。前世の記憶がある人は他にもいるのか?噂には聞いていたけど、といったニュアンスだったが)
驚いた様子で父は言う。
「転生魔法を使ったんじゃないの?昔は転生する魔法があったからそれを使ったって人しか聞かないけど....」
(転生魔法はあのあと広まったんだな。ああ、俺も転生魔法で来たよ)
「そうかそうか」
納得した表情で父はうなずいた。さっき昔はって言ってたからやっぱり魔法衰退しているのでは!?俺のそんな思いは父の言葉と行動により打ち砕かれた。
「俺も転生魔法が規制されていなければ使いたいからな~~まあ納得した。シータには父さんの方が凄いってことを教えてやる」
そう言うと喜々として父はブレスレットに魔力を通し始めた。
「ExcuteFunction Restraint(Analyze.m)」
意味の分からない文字の羅列を父は述べる。ブレスレットに込めていた魔力が拡散していたように見えたが、何が起きたんだ?
父は俺の不思議そうにしている態度を見てニヤニヤしながら言った。
「それは何が起きたかわかってないようだな。父さんに話しかけようとしてみればわかるよ」
(わかった)
と、言いたいのだが魔力が効力を発揮する前に雲散霧消してしまう。まさか今のは魔法に介入して魔法を使わせない魔法か!?なんだそれは。俺の時代にそんなものはなかったぞ。
それにいくら完全無詠唱とはいえ俺の魔法を無詠唱で解除できるとはどんな腕の持ち主なんだ。俺の父凄すぎ。
俺がそう驚いていると父は自慢げな表情を見せながら言う。
「はっはっは、驚いたか。これでも父さんは高校の実践魔術学の教師なんだぞ。学校で一番上手いとまではいかないけどね。これくらいならもちろん出来るよ」
「あ、Break」
(凄いな。今の時代はこんなことが出来るやつがそこそこ居るのか)
「ああ、これが時代の進歩ってやつだよ」
魔法の進歩ってすげぇぇ....全然衰退してないじゃん。薄々気づいてはいたけどさ。