世界一への憧れを来世に託す男()
他の作品を待ってる読者いたらごめんなさい。だって、面白い設定思いついてしまったんだもの(殴
「クソっ!やっぱりアイツには勝てねぇ.....」
俺は今、アイツが記した最新の論文を読んでいた。『杖と術者間の魔力伝導率の向上』というタイトルである。明細な中身は省くがこれは俺が研究していたテーマと全く同じ内容であったことは間違いない。
奇妙なことに俺が研究している内容はいつもアイツに研究され、先を越されるのである。もちろん、研究する内容だけではない。
実際の魔法の腕もいつもアイツが上なのだ。魔道学校でも、魔法学院でも、ダンジョン探索でも.....俺が炎魔怒(第八階梯)を行使してミノタウロスを一撃で狩ってもアイツは火竜の息吹(第七階梯)でミノタウロスを一撃で狩る。
思い出して来たら憂鬱になってきた......本でも読むか。俺が最近ハマっている本は賢者が転生したら魔法技術が衰退してしまっていたという物語の本である。
コンプレックス丸出しなのは否めないが、許してくれ。物語の中だけでも俺は一番になりたいのだ。空想の中くらいでは....ん?待てよ。実際に転生魔法を作り出せれば一番になれるのでは?そういえば、アイツ転生魔法を研究するとか言っていた気がする。
嫉妬で関わりを断つとか怒るというのはなおさらのこと自分が惨めになるのでしていないから、案外アイツとの関係は良好だったりする。
ひょっとしたら教えてくれるかもしれない。気が進まないがアイツの家に行ってみるか。羊皮紙を忍ばせ、俺の家から徒歩で数分の所にあるアイツの家にすぐに着いた。
コンコン、俺はノックをしてアイツが出るのを待つ。
「はーい!ってフォースじゃん!?」
「いきなり押しかけて悪い。転生魔法について聞きに来た」
「なるほど。とりあえず入りなよ」
こちらはライバルだと思っているのでフレンドリーな所がムカつくのだが、今日ばかりは良かったと思いながら家に入る。家に入ると魔術書で溢れているといったことはなく、きっちりと整理整頓され高貴な来客が来ても大丈夫なような応接間があった。
俺は上品なソファーに腰を掛け目の間に置いてある花の美しさに見ほれながらアイツを待つ。この花なんていうんだっけな。マンドラゴラじゃないだろうしな.....
「待たせたね。お茶と自家製クッキーどうぞ。不味くても不味いって言わないでね!!」
「ご丁寧にありがとう。いただくよ」
俺は差し出されたクッキーを一口食べる。サクッと小気味のいい音を立てたクッキーは甘過ぎない、ほど良い甘さを口の中で広げた。これ、自家製なのか。アイツ女子力たけぇな!俺もわざわざご飯に町に繰り出さなくて済むような女子力ほしいわ。
「どうかな?」
上目遣いで言われて少しドキッとしたが何でもない風を装い俺は答えた。
「普通に美味い。俺もこんな風に料理できれば研究時間に注げるのにな」
「ふふっ、そうだね」
くーーームカつく。今の何が面白いんだ。こっちにとっては切実な問題だっつーの!これが一位の余裕というやつか。俺は地団駄を踏みたくなる衝動にかられたが、そんなことはおくびにも出さない。自制心に関しては世界一位かもしれない。笑えねぇ。
「転生魔法の話だよね。ちょっと取り出すから待ってて」
アイツが何も言葉を発さずコール&アポートの魔法を使う。なんか魔力の量に違和感を感じたような。ダブルスペル?まあ、戦闘中でもないしそんなわけないか。
疑念を頭から追いやってアイツが渡してきた詠唱文を読んだ。ほとんど、いや、完成しているようにみえる。流石にまんまを見せていいのか?お人好しにも程があるだろ。
「実はこの魔法発動しないんだ」
「発動しない?」
「完成したと思って発動するか確認するために発動しようと思ったんだけど魔力が消費されなかったんだよね」
「なんで、発動しようと思ったんだよ」
「あ、すぐに転生するわけじゃないんだ。発動した後、十分以内に死ぬと効力が発生して転生するの」
「なるほどな」
確かにすぐに転生したら発動確認とか出来ないもんな。当たり前な話だがこれ実際に確認することはできないな。転移なら体が消えた!!とかあるだろうが転生は傍目からみたら死んだようにしかみえないはずである。これはイチかバチかの賭けになるということだ。
ちょっと真剣にヤバイのではと考えてしまったがよく考えてみればどうせ俺は一位にこのままじゃなれないんだからそのまま死んでも変わらないわ。
「悪い、ちょっと手持ちの紙に写させてもらおうぞ。<Copy><Haste>」
「ちょ、ちょっと!!」
俺は念のため無詠唱で精度を上げ隠し持っていた紙にそのまま写し、自分に素早さをあげるバフをかけると一目散に部屋を飛び出した。後ろを見ると唖然としたアイツの顔が見える。
ふふふ、してやったり。いくらお人好しでも写させてもらったりはできないだろうと目星をつけていたので俺はあらかじめ紙を忍ばせてこういう算段をつけておいたのだ。
俺は数分かかる所を一分程度で帰るとソファーに比べると硬い椅子に座る。深呼吸して気持ちを落ち着かせ、写した詠唱文を読んだ。
『転生魔法
ああ、偉大なる闇の支配者サタンよ。我らにその大いなる闇の力を貸してくれ、その偉大さを我らに貸し与えてくれ。我は生を拒むものなり、我は生を憎むものなり。我の願いは転生。生へ反逆し、死すらへも反逆する。なんと素晴らしきことだろう。人間は死に抗い、人間は生にしがみつき、人間は生き永らえた。我は諦めない。生を欲し、生命の輝きを求める。我の願いは転生。生の極致、死の極致。世界を書き換え、魂を書き換える。我の死への望みは幾ばくかの猶予。我の生への大いなる望みは永遠の猶予。我は愚かな人間、死してもなお生きようとする。<Re:Write> 申請者Alex』
いや、なげぇわクソ野郎!!しかもこれなんだよ。闇魔法の宣言をしてから途中で光魔法の宣言してるじゃねぇか!無茶苦茶だ。そりゃあこんなの動くわけないわな。今確認されてる魔法は最高位が十階梯であるが、これは単純計算すれば十六階梯ということになる。
確かに部分部分はマイナーな詠唱句も混じっているが確認されている詠唱句である。だからといって闇魔法と光魔法を混ぜて使おうだなんて無茶苦茶だ。舐めているとしかいえない。俺は特に最後の「我は愚かな人間、死してもなお生きようとする」という文が気になっていた。
こんな詠唱句は聞いたことない。いや、もう一つ聞いたことのない句はあるのだがそれは橋渡しをしていると考えれば辻褄が合うのである。ただ最後の句はなんの働きをしているかさっぱりわからない。最後のまとめか?でも、魔法を調べ、使い続けてきた俺には最後の文に意味があるようには思えなかった。
これを消せば動くんじゃないか。俺はそういう結論に達した。きっちと効果時間は時間句で指定されているし失敗しても大丈夫だろうと考えた俺は<Re:Write>を最後の句を除き唱える。
「ああ、偉大なる闇の支配者サタンよ。我らにその大いなる闇の力を貸してくれ、その偉大さを我らに貸し与えてくれ。我は生を拒むものなり、我は生を憎むものなり。我の願いは転生。生へ反逆し、死すらへも反逆する。なんと素晴らしきことだろう。人間は死に抗い、人間は生にしがみつき、人間は生き永らえた。我は諦めない。生を欲し、生命の輝きを求める。我の願いは転生。生の極致、死の極致。世界を書き換え、魂を書き換える。我の死への望みは幾ばくかの猶予。我の生への大いなる望みは永遠の猶予。<Re:Write> 」
激しい脱力感を感じる。十階梯の二倍は魔力を持ってかれただろうか。もう一度行使することは確実に無理と俺の体が悲鳴を上げていた。普段だったら詠唱文に不具合があったせいで魔力が不当に持っていかれたと考えるが俺は成功を確信していた。
魔法使いは常時バフをかけていないと堅牢性を維持できない。今の俺は普通の人間と同じように短剣で自殺することが可能だった。腰にかかっている護身用の短剣を手に取る。ライバルの完成させた画期的でなおかつオシャレな魔法名の魔法で転生するなんて恥ずかしいけど、もうこれでそんな屈辱感も終わりだ。
じゃあな、クソったれな世界。
グサッ俺は短剣を胸に刺した。急速に意識が遠のいていくのがわかる。扉を開け放ったアイツが泣いているのが朧気ながらにも見えた。悪いなAlex。じゃあな唯一無二の友人......
クリスマス?知らんな(彼女に振られた男)
※ここから先設定バレ注意。設定を考察?したいという方はこのまま上にスクロールして次に進んでください。ネタバレではないので上記以外の方は見ても問題ないかと思います。
転生魔法の解説
「ああ、偉大なる闇の支配者サタンよ。我らにその大いなる闇の力を貸してくれ、その偉大さを我らに貸し与えてくれ。我は生を拒むものなり、我は生を憎むものなり。我の願いは転生。生へ反逆し、死すらへも反逆する。なんと素晴らしきことだろう。人間は死に抗い、人間は生にしがみつき、人間は生き永らえた。我は諦めない。生を欲し、生命の輝きを求める。我の願いは転生。生の極致、死の極致。世界を書き換え、魂を書き換える。我の死への望みは幾ばくかの猶予。我の生への大いなる望みは永遠の猶予。<Re:Write> 」
という一文(!?)ですがこれには全てしっかり意味があるので解説していきたいと思います。
まず冒頭。ああ偉大なる闇の支配者サタンよ。
これは闇魔法を使います!という宣言です。主人公が驚いているのは普通はこれを言えば闇魔法なので光魔法関係の言葉《詠唱句》は出てこないからです。
次 我らにその大いなる闇の力を貸してくれ、その偉大さを我らに貸し与えてくれ。我は生を拒むものなり、我は生を憎むものなり。
これは簡単言えば数式になります。
2+3+2+2 それぞれの言葉には二段階の威力指定と魔力規模の指定があります。3の部分は装飾句の中でも特殊句という設定があるのですが置いておいて次行きましょう
我の願いは転生。 単純です。目的を述べてます。ちなみにここに置かないとダメという決まりがある設定です。
次、生へ反逆し、死すらへも反逆する。
これは闇魔法の中でもアンデット系統の魔法を使うよ!という宣言です。
なんと素晴らしきことだろう。人間は死に抗い、人間は生にしがみつき、人間は生き永らえた。我は諦めない。生を欲し、生命の輝きを求める。
光魔法は6階梯にするのに6つ使います。1+1+1+1+1+1といった感じです。光魔法はまだ最高位が六階梯の魔法です。1しかないので装飾句を合計10句使わないと十階梯になりません。大変だな(他人事)
我の願いは転生。また目的を言ってます。複合魔法は目的二回言わないとダメです。その代わり、副属性の魔法はさらに指定する必要がないのでマシな方か
生の極致、死の極致。世界を書き換え、魂を書き換える。
これが繋ぎの句です。主人公大正解()ちなみに生の極致、死の極致。までは共通ですがそれ以降目的に応じた句を述べないと光と闇の複合魔法は発動しません。厄介すぎる。
我の死への望みは幾ばくかの猶予。我の生への大いなる望みは永遠の猶予。
これは効果時間指定の時間句です。最後に持っていきます。永遠とはいっていも永遠にはもちろん続かないので注意です。
まあ、設定厨初心者なのでこんなもんです。あらすじで察している方いるかもしれませんが、今後この詠唱魔法の知識役に立ちません。私と呼んでるあなた乙。ネタバレにはならないから話したわけですしね。色々と伏線を入れましたが気付いている方いらっしゃるでしょうか。わかってても言わないでください。以上です。よかったらブクマ感想等お願いします!