0-3 新白衆の給与
「そういえばリーズ提督。 一度お聞きしたいことがあったのですが」
車児仙は、海軍省に帰ろうとするリーズを捕まえて聞いてきた。
「提督は新白衆を雇っておられますが、まさか無償で働かせているなんてことはありませんよね?」
「当たり前です……。 そんなことできるわけがない」
「私が常々疑問に思っていた事はそこなんですよ。 個人が諜報機関を維持することは難しいことです。 かといってリーズ提督は海軍予算から新白衆に払うべき給与を請求していない。 誰もが思う疑問だと思いますが?」
「海軍予算から請求できるわけないでしょう。 ボク個人の私兵をまさか予算からとったらそれはもはや着服です。 そんなことが公になったら、貴族どもが黙っていないでしょう」
「私兵と言い切りましたね?」
「突っ込むところはそこですか?」
「まあ、つまりは、新白衆はあえてウェンデス旗下には置かない……。 そういうことで?」
「その通りです」
「なぜ?」
「なぜって……」
「新白衆はもはや海軍の正式な諜報機関であると内外に認められております。 ですので、海軍予算から請求したところでだれも咎めませんよ?」
「車児仙殿、あなたも意地が悪い。 私があえてウェンデス旗下に置かない理由……、なんとなく気付いているでしょうに」
「国の制約に縛られず動ける諜報機関、というわけですか」
「それに、ウェンデスには諜報部という、ウェンデス国家独自に機関もあります。 一国に二つの諜報機関の存在を議会が許すと思いますか?」
「まあ、そうでしょうね。 実力、実績を考えれば新白衆に劣る諜報部は即時無用の存在として消えてしまうでしょうね」
「そんなことになったら余計、戦乱の火種を生むものです。 ただでさえ、存在意義を問われている諜報部が、新白衆のせいで潰されたら、諜報部はだれを恨むと思いますか?」
「まあ、新白衆を連れてきたリーズ提督でしょう」
「連れてきたってかなり語弊がありますね。 ボクより先に新白衆はウェンデスにいたはずですが」
「世間の目はそうなっております」
「まあ、ボクに矛先が向くのも勘弁してもらいたいね……。 かといって多恵に向くのもどうかと思うし」
「余計な争いは好まずですか?」
「そういう事です」
「では、話を戻しますと……、新白衆の給与。 どうやって捻出しているのです?」
「…………」
「リーズ提督?」
「車児仙殿、あなたは監査ですか?」
「まさか、そんなのは財務省の小役人がする仕事です。 私の場合はただの知的好奇心というわけですよ」
「知的、好奇心ねぇ……」
リーズはその場を去ろうとする。
「まあ、まあ、リーズ提督。 私は読者様の代弁をしているだけですよ? その読者様の疑問を解決させるため、私が一肌脱いだわけです」
車児仙はニヤリと笑う。
リーズは車児仙のこの妙な駆け引きがやや苦手であった。
車児仙も、読者様が知りたいという大義名分のもと、強くリーズに解答を迫っていた。
「わかりました、わかりました……。 答えはボクの私財より出しています」
「私財? まさか提督給金なんて微々たるもの。 そこから捻出しているなんて苦しい言い訳、私には通じませんよ?」
車児仙は、一枚の紙切れを出して、リーズにつきつけた。
「……これは?」
「一人辺りが一ヶ月食べるに困らない金額と、作中にでてくる新白衆の里の規模を考察した計算表に、リーズ提督が月々国から頂いているお給料の比較をした図です!」
「そんなもの用意していたのか……。 なんとも暇な」
「そんなことはどうでもいいんです。 これをよく見て下さい。 提督給金と里の維持代、どう考えても里の維持代の方が桁違いに差があります。 さあ、だれもが納得の行くご解答を!」
「まあ、ファラスにボクが経営している金鉱があるわけで、そこから経費をうかしているんだけど」
「はあ? 何その取って付けたような言い訳は! そんな急造臭い言い訳、誰が信じると思っているんですか?」
「いや、事実なんだって。 そもそもファラスは金鉱地帯であることは、作中で述べられているよね? で、陛下から客将としてウェンデスに仕官するとき、領地安堵の名目で一つの鉱山を承ったんだよ」
「そんな現実離れした話で、私をケムに巻こうなんて100年早いです。 さあ、真相を!」
「これが正真正銘の真相だって。 そもそも当時は貴族の連中もいたからウェンデスの目立つ位置で所領安堵されるわけには行かないだろ? ボクは俗に言う外様ですよ」
「そもそもウェンデスに所領安堵がある事事態、初耳です。 そんな表記作中に登場していないはずですが?」
「筆者のふじぱんは、あんまり物語に関係ない文章は省略する癖があるじゃないですか。 この辺りもまさに該当するわけですよ」
でなきゃ外伝なんか書きません。 (※筆者談)
「全く、取って付けた設定臭いですね」
「すでに話数だけはいっちょ前に進行していますからね、本編。 そう思われても致し方ないかと」
「で、それが最終解答で?」
「この期に及んで何を隠す必要性がありますか?」
「そうですか……。 なんとなく、取って付けた感が否めないのも、話数が進行しすぎて今更説明しても嘘臭く聞こえるせいであると主張するわけですね?」
「そうです」
「納得するとでも?」
「納得してください」
「だがしかし、提督という多忙な職務を行いながら、金鉱の経営なんてやっていられないのでは?」
「所有者はボクですが、きちんと管理している人がいるんですよ」
「どういった間柄で?」
「陛下からの紹介だよ」
「……は?」
「当然、ファラスでも異端だったボクにそんな簡単に管理を任せる事が出来る知人がいるわけない。 困っていたボクに今の管理者を紹介してもらったんだ」
「ははあ、相変わらずとって付けた言い訳っぽいですね」
「…………否定しないよ。 というか、いまさらじゃ何がどういう設定でもとって付けた感があるんでは?」
作中でもとって付けた感が拭えないとか散々ほざきまわっていますが、一応設定はしとりました。
いつか本編で書こうとか思っておりましたが、もはや時遅し……。
第一章、倭国動乱の模倣編が始まったんで書く機会がなくなりましたので、ここに……。
物書きとしては失格ですね