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はちすの雨  作者: 新々
8/10

08

 雨がどうして降るのか、それはわたしにもわからなかった。雲があっても降らないこともあれば、晴れているのに降ることだってある。わたしがこれまで読んできた本の中には、それらしい説明が書かれていたものもあったけど。

 雨はまだ騒がしく降っている。


「ポプリは、なにか聞いてないの?」

「きく?」

「雨の中にいる時、なにかいってない? 声は聞こえない?」

「こえ?」

 をぱちぱちとさせながら、小首をかしげるポプリ。

 少し、いじわるなことを訊いたかな。


 そう思った時だった。


「えっとね、ただいまっていってたよ」

「ただいま?」

「そう。ただいま、ただいまーって。雨のおうちってどこにあるの?」

「どこだろうね」


 たくさんの雨。

 ただいま、か。


「ポプリ、外に出てみる?」

「ううん、いい」

「どうして?」

「風ふいてるから。ねんどもこねこねしたい」

「粘土は好き?」

「すき。エルもいっしょにつくろ。エルはこっちのおうちね」

 ハチの巣と一緒に、油粘土もひとかけら渡される。これを作れということだろうか。でも巣は真似して作るのに、なかなかどうして難しそうな形をしている。劣化の影響か、ほとんどの穴は向こうまで貫通している。


 雨。油粘土。

 ハチの巣。ただいま。


「自然の声を聴け、か」

 生きてる時は雨の声なんて、ひと言だって教えてくれなかったのに。

 まったく、師匠せんせいはどこまでもわたしの師匠らしい。

 ハチの巣に開いた穴を見つめて、ふとひらめいた。


「ねえポプリ、わたし作りたいものがあるんだけど、手伝ってくれない? できあがったら、一緒にお風呂入ろっか」

「なにつくるの?」

「それはね……」

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