06
手始めに再び仕事場へと向かい、雨が滴っている天井に直接油粘土を塗りつける。
脇から流れ出てこないよう充分に引き伸ばして。
「雨、とまったね」
「いけそうね」
その調子で他の場所も塗りつけていく。屋根裏の狭いところはポプリにも手伝ってもらいながら、ふたりで家のあちこちを補修する。
「ポプリ、まだ雨のにおいする?」
すんすんと鼻を利かせた後で、ゆっくり首を振る。
「じゃあこれで全部かな。後は濡れた床の掃除だけか」
「エル、あれなに?」
その声に、振り返る。
今わたしたちは二階の屋根裏部屋にいた。ポプリの指す暗闇の奥に目を向けると、たしかになにか塊のようなものが見えた。ネズミにしては大きいし、動いている気配も感じられない。耳をすませても、屋根を打つ雨を除いてわずかな音もしなかった。
なんだろう。
ポプリを背中に隠しつつ、警戒しながらランプを近づけてみる。と、それはすぐに明らかになった。特徴的な穴が無数に並んでいるこれは。
「ハチの巣、みたいね」
板状の巣が、氷柱のようにぶらさがりながら何枚か並んでいる。まわりにハチの姿は見えなかったけど、代わりにハチの亡骸と思われる塊がその下にいくつか確認できた。見たところ死んでからずいぶん経っているらしい。巣ももう使われていないようだ。もしかしたらまだ蜜があるかもしれない、けど。
「とりあえず、いったん下に降りましょ。お昼ごはんの準備もしないといけないし、それに汚れた床も掃除しなきゃ」
諸々を終えてようやく取り出したハチの巣は、思っていたよりもずいぶん古く、蜜らしいものも残っていなかった。
「ハチさんのおうち、穴だらけだね」
「そうね。でもこの穴で子供を育てるのよ」
巣をしげしげと眺めるポプリ。どうやら気に入ったらしい。
気に入ったといえば油粘土もそうで、暖炉の前であまった塊をこねくり回し、いろいろな形をつくってはひとりで遊んでいた。
その姿を見ながら、ぼんやりと昔のことを思い出す。