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はちすの雨  作者: 新々
4/10

04

「こっちからする」

 そういって駆け出していく。後を追ってみると、空き部屋の天井から雨が滴り落ちていた。それもいくつも。

「雨、いっぱい」

「おっと、浴びちゃダメ」

 飛び込もうとしたポプリを慌てて引きとめる。

「どうしておへやに雨ふってるの?」

「隙間が開いて、漏れてるの」

「すきま?」

「えっとね」


 漏れている雨を両手で受け止め、しばらく溜める。


「こうやってぴったりしてたら水は漏れてこないけど」

 そこで少しだけ指を開く。

「こんなふうに穴が開いてたら、ね? 落ちちゃうでしょ。これと同じ」

「おうち、穴だらけなの?」

「ここだけ……じゃないのかな」


 ポプリの鼻を頼りに調べてみたら、はたして他にもいくつか漏れていた。応急処置で器やらお風呂場のおけやらを床に並べたけど、もちろん根本的な解決には到っていない。

「困ったね」

「こまったね」

 ポプリがわたしの口調を真似する。気のせいか楽しそうだった。


 気楽でいいね、なんて特にうらやましく感じることはなかったけど、かといってわたしはこの状況に、ことさら困っていたわけでもなかった。雨漏りしている部屋は使わなければいいだけの話だし、なにより雨が止んでしまえば自然と納まるだろう。雨が降るたびに漏れることにはなるだろうけど、でも問題はそこじゃない。


「こら、ダメっていったでしょ」

 再び浴びにいこうとしたポプリを引きとめる。

 そんなに好きか、雨。

「しかたない。埋めるか」

「うめちゃうの?」

 今度は少し悲しそうだった。

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