04
「こっちからする」
そういって駆け出していく。後を追ってみると、空き部屋の天井から雨が滴り落ちていた。それもいくつも。
「雨、いっぱい」
「おっと、浴びちゃダメ」
飛び込もうとしたポプリを慌てて引きとめる。
「どうしておへやに雨ふってるの?」
「隙間が開いて、漏れてるの」
「すきま?」
「えっとね」
漏れている雨を両手で受け止め、しばらく溜める。
「こうやってぴったりしてたら水は漏れてこないけど」
そこで少しだけ指を開く。
「こんなふうに穴が開いてたら、ね? 落ちちゃうでしょ。これと同じ」
「おうち、穴だらけなの?」
「ここだけ……じゃないのかな」
ポプリの鼻を頼りに調べてみたら、はたして他にもいくつか漏れていた。応急処置で器やらお風呂場の桶やらを床に並べたけど、もちろん根本的な解決には到っていない。
「困ったね」
「こまったね」
ポプリがわたしの口調を真似する。気のせいか楽しそうだった。
気楽でいいね、なんて特にうらやましく感じることはなかったけど、かといってわたしはこの状況に、ことさら困っていたわけでもなかった。雨漏りしている部屋は使わなければいいだけの話だし、なにより雨が止んでしまえば自然と納まるだろう。雨が降るたびに漏れることにはなるだろうけど、でも問題はそこじゃない。
「こら、ダメっていったでしょ」
再び浴びにいこうとしたポプリを引きとめる。
そんなに好きか、雨。
「しかたない。埋めるか」
「うめちゃうの?」
今度は少し悲しそうだった。