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はちすの雨  作者: 新々
2/10

02

 結局、ポプリの雨浴あめあびはお風呂の準備ができたと同時に終了し、ポプリの身体を洗うついでにわたしも一緒に入ることにした。といっても別々に入浴したことなんて今まで一度もないのだけど。

 小さな湯船の中にふたりして身体を沈ませる。


「エルは雨、すき?」

「そうだね、好きでも嫌いでもないかな」

「なんで?」

「さあ、なんでだろうね」

 お風呂場に反響する声にじって、雨音が耳へと届く。

「ポプリは雨が好きなの?」

「すきー」

 小さな手でお湯をすくい、指の隙間から滝のようにそれを落とす。

「いいにおいがするの」

「においが好きなの?」


 小さく頷いてポプリはわたしに向き直った。

 視線が間近でそろう。


「雨、きもちいいよ?」

「わたしはお風呂のほうが気持ちいいよ」

 ものごころついた頃からお風呂は好きだった。他にもたくさん好きなことはあったけど、錬金術師となってからはほとんどのことが、ウソみたいに関心がなくなってしまった。でも、お風呂だけは例外的に好きなままでいた。


「さあ、身体を洗っちゃおうか」

 洗い場に移動して、まずはポプリの髪を洗う。髪用石鹸を手に取り、頭全体になじませるようにして優しく泡立てる。かけ湯で泡を流した後は、固体石鹸で同じように身体も洗う。タオルやヘチマの感触は肌に合わないらしく、洗うのはもっぱらわたしの手だ。

 首から腕、胸、お腹、背中にお尻、足と順番に洗っていく。

 こうして見てみると、我ながらよくできていると思う。


 はじめは女の子にする予定はなかった。そもそも性別は決めていなかったし、もっといえばできるとも思っていなかった。とある人にそそのかされて、なんとなく手をつけてみただけだった。

 まあ、契機きっかけなんてそんなもの。

 でもどこかで期待してたのだと、実際にポプリを目にして思った。

 もちろん、実験が成功することではなく──。

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