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「ありがとう、だって」
「ありがとう?」
「そう、ありがとう」
なぜか、そんな言葉を感じた。
それとも、あれはわたしの声だったのかもしれない。
わたしはもう人ではないし、ポプリも普通の女の子とは少し違う。でもどちらも自然から作られた、生きものだ。
それならわたしたちも、自然と同じ。
『自然の声を聴きなさい』
ポプリ、生まれてきてくれてありがとう。
「エルも雨、すきになった?」
「好きになったよ」
抱きしめたポプリの身体からは。
バラのような、とてもいいにおいがした。 了