チョコレートボックス・3
老女は語る。
「あなたたちのお祖父さんはね、みんなの大好きなチョコレートのもとを作っているのよ」
遠い昔話。彼女がまだ娘と呼ばれていたころに、夫は移民として異国へ発った。
カカオを作っているもだと便りがあったは別れて五年。最後の葉書には彼の地で家庭をもうけた旨が書かれていた。
彼女は嘆き、病み、そして忘れた。
「さあ、お祖父さんから手紙が届きましたよ」
机に板チョコレートを並べる。子どもたちは受け取るためにうなずき、銀紙に爪をかけた。
老女は色あせた唇で笑う。
「あなたたちのお祖父さんはね…」