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序章 ある子爵の苦悩

 前作を削除してから次回作の執筆に取り掛かるという話でしたが、「普通じゃない」以下略を削除しようとしたところ、注意書きに特殊な事情に該当しない限りはサイトのシステムに異常が発生するおそれがあるため、極力削除しないようにとの記載がありました。そのため前作品を削除できずにいましたが、きりがないために、構わずに執筆していこうと思います。大変申し訳ありませんが、今回は不定期更新です。

 ‐病める帝国事件 フレンダン子爵の考察から ‐


 このルテティアという大陸のほぼ中原に位置し、古来より太陽の神々が賛歌を響かせたと言われるうるわしの帝都ソルデリンは、今なお危機に立たされている。


 簡潔に言えば食糧不足である。


 貴族たちはこうした現状をなんとか隠して利権を保とうとしていたが、それだけでは我が国家を救うという意味で十分ではない。


 そう、この帝国はそうして重鎮たちが足踏みをしている間に、確実に病んでいるのである。


 事件の発端は貧農と呼ばれる底辺の身分の人々が暴動を起こしたことである。


 帝国は元来、こうした身分絡みの騒動を、「とるに足らないこと」として処理してきた。


 しかし、そうした行動はかえって帝国の首を自ら絞めることに発展しかねないことは、誰かしら予想していた、出来ていたのではないかと思えてならないのだ。


 今も街のあちこちで、穀物や野菜の値の上昇が止まらないのは、やつらのせいだといううわさが立っている。


 すでにうわさは広範囲に浸透しており、先日の夜、屋敷に忍び込んだ暴徒がミッテルスベルク伯爵を絞殺した。


 殺された彼は、うわさを単なる庶民の妄想と揶揄やゆしていたことで有名になったが、暴徒にとっては彼が悪漢の中枢の立場にいることを意味していた。


 しかし、それ以上に、今回の貴族たちにも真の黒幕は登場しなかった。


 彼らの誰ひとりとして、野菜値の高騰の原因を知らなかったのである。


 これを受け、ようやく帝国の議会は何らかの策を打ち出すことを検討し始めた。


 やはり今回も、有事の際には決まってダルナゴン騎士団なる者たちに、帝国の高官たちからの吐きためられたつばが一気に寄せられた。


 高官たちは無論、ごたごたを嫌う気質なのは明らかだが、忠誠という文字が重くのしかかる騎士たちにはこれをやり過ごす勇気がなかった。


 そのためかは不明だが、都合のよい文句としてこれらの状況を処理するのには、何かあったら力で抑えてしまったほうが早い、という言葉が騎士たちにとっては最も適切だったのだろう。


 何はともあれ、騎士たちはいつものように首を縦に振るしかなく、野菜値の高騰の原因を突き止めるために出発したのだ。


 実は私自身、迷っている。


 最近になってこのような論文を書いていることを、どうやら使用人の女中に知られてしまったらしく、庶民たちがお前はどっちの味方なんだと家越しにたずねてくるようになったのだ。


 帝国議会長のヤチェノク氏は絶対的な権力をふるっている貴族派なだけに、衝突は避けたいのだが、私自身の良心に問うた結果がこの論文という形で現れたのなら、もうすでに答えは出ている。


 後は私自身に起こる危険に立ち向かう覚悟が整うのを待つだけだ。


 いずれにしろ、帝国はこのままでは病んでいくのだろう。


 あの騎士隊長がうまくやってくれるだろうという確実な保証はどこにもないのだ。


 ― 愛しのヴィクトリーヌへ。 こんな形になってすまない。 私はじきに庶民たちから称賛を、貴族たちから弾劾だんがいを受けるだろう。 逃げたくなったら、あんな人と私は関係ありませんと、堂々と言ってくれたまえ。 私もそのときは、君を全力で否定しよう。 どうか泣かないで。―



 


  

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