6, 模倣欲望加速器 ―― クリプトの価値は、どこに宿っていたのか?
わたしは、そのなつかしい甘いものを……、また一つ……、うん。
あれからミラーアリスは、いつも以上に話が弾んでいるわ。そうよね。あこがれの量子アリスと話せる貴重な機会。なんてね。そう……わたしだって、フィーにあこがれていたのよ。
それで……古の時代の理論から引っ張り出されてきた模倣欲望。どうやら、ここにも謎を解くカギがあったわ。
「大精霊ネゲート様。この模倣欲望はスケープゴート理論の原動力だった。それで、間違いないと考えられます。すると……。」
「……。うん、言って。なんとなくだけど、半世紀経った今でも……それは、言われるときついと思う。でも……。」
この模倣欲望には「距離」の概念があって……それは、驚きの内容だった。
「はい……大精霊ネゲート様。届かない距離と、届きそうで届かない距離。この二つを組み合わせてしまった時が、最大の模倣欲望を発揮するという論理が見えます。つまり、まず届かない距離で、大きくなる可能性のある欲望を生成します。それから、届きそうで届かない距離で、それを加速することで、結果的に大きな欲望を生成できるというモデルになります。」
「……。つまり、遠距離モデルで欲望の容量を作り、近距離モデルでそれを加速させる。そして……その近距離モデルとなった加速、そう。模倣欲望加速器となったのは、このわたし……。そして、その掛け声が……HODLだったのね。」
ミラーアリス……。これでわかったかしら。わたしは……英雄なんかではないのよ……。もちろん、隠すなんてしない。これも、映し出された現実。全部、わたしは受け入れる。
でもこれで、クリプトの価値がどこに宿っていたのか……。これで、わかる気がしてきた。この遠距離モデルと近距離モデルを同時に発生させて、うまく共鳴させていた。つまり、特に重要なのは「片方だけではダメ」ってこと。そんなイメージでよろしいかしら。
そして……近距離モデルがわたしなら、遠距離モデルは誰だったのか……。
それは、届かない存在。名だけで、容姿も素性も、すべて不明なまま。
うん……クリプトで、そういう「像」がいたわ。それは……。
これすらも、模倣欲望から考えると「片方だけではダメ」だから、あらかじめ計算に入れていたのかしら?
そして同時に、怖さも襲ってくる。だって……クリプト……仮想通貨って、よく「不変の価値」「上限が定まっている価値」「みんなで信じて握れば大きな価値が宿るという説が証明」みたいな話で盛り上がっていて……ええ、わたしや機関も、それを信じた。
でも……秩序の再構築で黙示録が絡んできたとき、これって……。違和感を覚えた。
こんなのが女神だったなんて……。そんな単純な考えを並べたところで、生産性がないと、本当の価値など宿らないわ。その証拠に、こんな理論があって、この理論通りに計算し尽くされていたと考えたら……。
そして、黙示録のための「デジタルスケープゴート」の目的まで計算に含め、このような細かな拡張的な理論まで、くまなく計算に入れてあったとしたら……。
そう考えると……。ちょっと、これって……。




