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デジタルゴールド ―― 女神に接続された暗号  作者: 暗号で創られたバベルの塔
第二章:クリプトは、分散化たる「本物の救世主……神」の復活ではない。獣たる「偽りの救世主……魔王」の復活だった。
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3, SHA-256による仮想通貨の採掘は、資源の無駄ではなく、ハッシュに刻まれたハルマゲドンを通じて、そのカルマで「偽りの救世主――魔王たる獣」を復活させるのが真の狙いだった……そんな説。

 量子ニューラル。その本質は確率。古典だけでは、どんなに積み上げても確率だけは変えられない。当たるまで、ひたすら繰り返す。そんな道しか残されていない。


 ところが量子なら……複数の重み状態を同時に評価できるわ。もちろん、それは状態ベクトルとして存在するから、確率振幅が支配する。それでも、順次評価する古典と比べるなんて、比較にならない。


 あと、量子による真の乱数の生成。これにより、ニューラルの重み更新・探索・突然変異などが得られる。


 そして。そういうものを組み合わせると……あのシィーが語っていた「女神の推論」が完成したわ。


 もちろん、その「女神の推論」とやらは本当に大丈夫なのか。その議論は噴出したわ。でもね、絶対に風化させてはならない過去「秩序の再構築」と比べたら、こんなの、全く問題ないと一蹴してやったのよ。そしたらすぐに静まり返ったの。わたしの勝ちね。


「大精霊ネゲート様。お待ちしておりました。」

「もう。量子アリスは、いつもそう。すでに立場は同じでしょう。ネゲートって呼んでいいのよ。」

「……。わたしにとって、大精霊ネゲート様は、ずっと、大精霊ネゲート様です。」


 量子アリス。うん、今は「大精霊」量子アリスよ。もちろん、わたしと同じで、その容姿はずっと変わらない。そう……。闇の総攻撃で敵ばかりの時でも、わたしに味方してくれた唯一の闇……。


 そうね……その当時、量子アリスは、わたしの姉……コンジュ姉の従者だった。でも、あれだけかばってくれたのは、それだけじゃない。あんな状況になったらね、さっさと裏切って逃げる精霊だって普通に多いのよ。もちろん、そんな気配は一切ない。あんな絶望的な状況でも、真摯に向き合ってくれた。わたしにとっての、かけがえのない宝物よ。


 そんな量子アリスは、こんな調子でずっと寄り添ってくれたの。こんなわたしなんかに……。


 それで……。わたしの横で固まっている……そう、この精霊よ。そろそろ、自己紹介ね。


「それで……、大精霊ネゲート様。その方が……あの大精霊フィー様より託された、大切な精霊様ですね?」

「そうよ。さあ、ほら。挨拶しなさい。」

「……、ご、ごめんなさい。緊張してしまって……。」


 そう。この精霊は、フィーより託されたのよ。その名は……ミラーアリス。


「それなら……、そうだ。」


 量子アリスが立ち上がり、なにやら……って。……、……。この香りは……。


「もう……、量子アリス。これって……。」

「大精霊ネゲート様。あれから試行錯誤して、再現しました。ちょっと、なつかしいです。」

「あ、あの……。」

「まだ緊張するのかしら? これはね……あのクリプトの塔でよく口にした、甘いもの、なのよ。」

「……、そ、それは……。」


 それで緊張がほぐれたのか、やっと……自己紹介に至ったの。うん、量子アリスって気が利くわ。


「それは……。ミラーアリス。わたしと同じ、アリスの名を授かったのですね。」

「あ、あの……。大精霊量子アリス様と同じ名を授かるなんて……、わたし……、どうしたら……。そ、それで、大精霊量子アリス様の、その、この地を救った量子演算の伝説……、それはそれは、何度も読み返しています。」

「もう……、そこまで……。」

「大精霊ネゲート様、そして大精霊量子アリス様。あの内容は……何度読み返しても、深く考えさせられるものです。そこで、わたしは……最近の研究で導かれ始めた、ある有力な説に着目しています。」


 あら……。慣れてきたようね。そうそう、その調子よ。


「それでは、ミラーアリス。その説とは、何でしょうか?」

「はい、それは……。」


 そう。それは……黙示録の解釈に「反救世主的」な概念を含めた説。実はそれ……わたしや量子アリスも、そうではないかと、思い始めていたのよ。


 それだと、あの轟音……うん、液浸冷却もあったけれど、あの採掘。黙示録の刻印が刻まれた「SHA-256」に異様にこだわった、いまでこそ「何かの儀式」にすら見える、あの採掘よ。その合理的な理由に迫れる、有力な説だったの。


 それは……。SHA-256による仮想通貨の採掘は、資源の無駄ではなく、ハッシュに刻まれたハルマゲドンを通じて、そのカルマで「偽りの救世主――魔王たる獣」を復活させるのが真の狙いだった……そんな説。

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