27, スコフィールド注釈付聖書 ―― SHA-256に浮かび上がる刻印の最下層に存在
わたしは……重い決断を迫られていた。
だって……フィーに、事の真相を聞かなければならないから。
「ねえ……フィー。これから聞くことには、正直に答えて。もちろん、それがどんな答えだったとしても……フィーは、フィーよ。あなたが大精霊としての役割を全うするために、民のためにやったことなんでしょう? 全部、受け入れると約束するわ。だから、お願い……。」
「……、……、……。わかったのです。でも……。」
「それでね、これだけは言っておくわ。嫌いになんか、絶対にならない。だって、今までずっと……。」
――そこで、言葉が詰まる。
だって……だって……だって……だって……。
……だって!
「……。わたしは、ネゲートが……最も輝いていた女神だと思っているのです。」
「えっ? ちょっと……。ちょっと! こんなにもダメな女神だったわたしが、輝いていたって……?」
な、なによもう……。
こんな状況で、お世辞や皮肉なんて……やめて欲しいわ……。
「いいえ、なのです。誰にも縛られず、自由奔放だった女神ネゲート――それこそが、最も輝いていたのです。たしかに……途中、色々とありました。でも、女神ネゲートの神託は……見事に成就したのです。どこにも縛られずに神託を成就させるなんて、本来はあり得ないこと。そのおかげで、今があるのです。それなのに、なぜ否定するのですか。あの『秩序の再構築』は……。その神託のおかげで、みんな……助かったのです。」
「えっ……? ちょっと、そんなこと……急に……。」
わたしは……。案外、ダメな女神ではなかった……?
……ううん。
こんなときにまで、そんな甘さが出てくるなんて……。ダメ……ダメよ。
「ところが、わたしは……見ての通りです。結局は……『傀儡』とでも言うべきなのでしょう。」
「傀儡って……、何を言い出しているのよ……。やめて、そんなこと……。」
……。そして――。
フィーは、書庫の奥へと歩いていく。
やがて、奥深くに眠っていたと思われる一冊の書物を取り出し、戻ってきた。……震えが止まらない。
こういう待ち時間は……本当に苦手。
そして――。
その書物が、わたしの手に渡された。そのときのフィーの表情といったら……もう……。
……。
その表紙に刻まれた文字を見て――。わたしは、息を呑んだ。それは……。
『スコフィールド注釈付聖書 ―― SHA-256に浮かび上がる刻印の最下層に存在』
「……。フィー……、どういうこと……これは……?」
聞き慣れない――「スコフィールド注釈付聖書」。……でも、問題はそこじゃない。
その後ろよ。
「SHA-256に浮かび上がる刻印の最下層に存在」って……なによ、それ。
この書物が書かれた時点で、すでに――SHA-256刻印の存在を知っていたってことよね?
……ううん。違う。
知っていた、なんてものじゃない。
この書物の年代から考えて、これは――。
そうよ。
SHA-256に、刻印を――仕掛けた側。
つまり、SHA-256に「スコフィールド注釈付聖書」を刻み込んだ、その勢力側の書物だわ……。




