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21, 役立たずの女神

 かつて――わたしは、役立たずだった。えっ、今も……? ふふ、そうね。


 クリプトの塔の頂で、どうすることもできず、ただ成り行きを見守るだけ。「オリーブの葉と花を編み込んだ花冠」なんて、形だけ。象徴だけ。そんな状況では……実際に注目されていたのは、ふたりの証人の動きだけだった。


 本当に――女神なんて、秩序の再構築においては、無に等しい存在だった。そもそも……女神としては、その前に気づくべきだったのよ。刻印の存在に。それを過ぎてしまってからでは、もう……どうにもならない。


 それでも――SegWitの動きは明らかに、燃料を優先していた。だけれど、一度動き出したものは、もう止めることはできない。AggWitが……それだけは、決して許さないから。


 とにかく燃料。それだけだった。そのためなら、何でもする――そんな状態でもあった。


 そして……その、SegWitが燃料に翻弄される一連の行動すら、あらかじめ計算されていたのではないかと……今なら、そう思えてしまう。


 それで……そう。あの頃よ。


 少し、まずい状況になって――数学の女神が、クリプトの塔に現れた。


 ……あの女神はね。癖が強いなんて、そんな次元じゃない。その前に……わたしを別の空間に連れて行って、何かの「お試し」までさせたのよ。クリプトの糸……なつかしいわ。


 それで話がまとまったと思ったら――突然、いなくなった。それから……一度も、会っていない。……まあ、いいわよ。でも……あんなことになったのだから、一度くらいは顔を出すべきよね。


 そして――。役立たずと呼ばれていたわたしは、それから、不満のはけ口にもされていた。


 ……。


 でも――それで良かったと、思うことも多い。


「大精霊ネゲート様。秩序の再構築では、燃料の奪い合いだったと聞いています。」

「そうよ。あの頃は、燃料こそがすべてだったのよ。燃料は、地の大精霊の管轄のようなもの。そこに……ふたりの証人が手を出した。当然、そうなれば……供給網は壊れる。それは、避けられない結果だったわ。」

「それだけエネルギーが貴重だった時代、ということですね。今は、燃料に頼らなくてもエネルギーは余っているのに……。その奪い合いは、少し想像しにくいです。」


 ……そうね。当時は、確かに燃料がすべてだった。


 ……でも。秩序の再構築によって――。……ううん、その先は、考えてはいけない。


「ふたりの証人……。良い話ではありませんが、圧倒的な力だったと伺っています。聖書の解釈通りだったとか……。」

「……力こそがすべて。そんな存在だったわ。でも、それが証人であり……預言者だったなんて……。」


 ……。


 あのままハルマゲドンに突入して、ふたりの証人が本気で暴れていたら――取り返しのつかないことになっていたわ。その未来すら……あらかじめ計算されていた。それなのに――。デジタルスケープゴート。


 そうよ……なんてことなの……。秩序の再構築のあと、エネルギー源が燃料に依存しなくなるのなら――エネルギーを防御壁にするという発想そのものが、すでに成立していなかった。


 その転換期まで含めて――秩序の再構築のタイミングが、すべて一致している。


 ますます……。何もかもが、あらかじめ準備され、順番に放たれているようにしか見えない。つまり――今、手元にあるすべては。ずっと昔から、この時代に現れるように、計算されていたのかしら。


 そして――。それは、女神も例外ではない。わたしが、役立たずだったことすら。それすらも、計算のうち。そのまま成り行きに乗って――わたしは「最高の駒」として機能し、あの神託を別の意味で成就させた。


 だから――デジタルスケープゴートは成功した。


 そして……SegWitも、AggWitも。きっと同じ。何か大きな存在に……動かされていただけ。


 それは、薄々感じていたこと。でも――。ここまで、すべての計算が一致してしまうと……。そこに、恐ろしさを感じる。


 つまり――。ここぞという瞬間に、狙った行動を取るように。何もかもが、あらかじめ配置されていた。


 綺麗に――。完璧に。……そのように駒を配置してきた者こそが、黒幕でしょう。


 偶然の積み重ねにしか見えない行動が――そのように作用してくるなんて……。

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